悪堕ち科学者


  

 ***西暦2046年4月7日

  

 モーツァルトのオペラ『魔笛』の山場、「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」――

 熟練したソプラノの練達した歌声が、私の心を逸らせる。

 やはりこのアリアは、狂気を感じさせるほどでなければだめだ。

 私は今日も音楽に耳を傾けながら、日課として新聞や雑誌に目を通していた。

 荻野と友誼を結んでから、はや半年。

 彼は現在、デボラ記事専門のライターとなっている。

 彼の記事が好き(私を叩く内容でなければ)な私にとって、実に嬉しいことだ。

 私が色々と便宜を図ることにより、荻野はいっそう広範囲での取材も可能となった。

 彼からのメールを見る限り、毎日が大いに充実していることが推し量れる。

 また荻野は耳寄りな情報があれば、真っ先に私に知らせてくれた。

 その際には、友情の証として彼を「歓待」することも忘れない。

 友情とはギブアンドテイク、ギブを多めにするのが友情を保つ秘訣なのだ。

 また、かねてから実験を続けていた新型フェロモン凝縮薬も完成する。

 動物および兵役忌避者で何度も実験し、その効果は実証済みだ。

 さっそく私は、警備員の仲原を実験室へと呼んだ――

  

 「君の同僚で、本日勤務している警備員3人だが……彼らと昼食を取るだろう?

  その際、ティーポットにこの薬を混ぜてほしい」

 私は、小瓶に入った例の新薬を仲原に渡した。

 無色透明で臭いもない、混入しても発覚する可能性はないだろう。

 「もし万一見とがめられたら、私にもらった浄水剤と言うんだ。

  後は私が話を合わせるから、心配はいらない」

 「はい、でも……これ、まさか毒薬じゃないですよね?」

 「危険な薬ではないから、安心したまえ。これは、新型のフェロモン凝縮薬だ」

 「フェロモンって……惚れ薬でしょうか?

  博士はまさか、そちらの趣味がおありに……?」

 「妙な誤解をしないでくれ……ともかく、任せたよ。

  上手くいったら、後でディープスローターの餌やりを手伝ってもらうから」

 「はい、お任せを!」

 こうして小瓶をポケットに、仲原は意気揚々と出て行った――

  

 そして午後、仲原からメールが届く。

 文面は、「食堂に手帳の落とし物あり」というものだ。

 万事上手くいった、という合図である。

 仲原の連絡を受けた私は、「ヴェネツィアの庭師」を実験房から呼び寄せた。

 続けて、仲原を除く警備員3人を実験室に呼び出す。

 実験では確かに効果は出たが、果たして上手くいくだろうか――

  

 「急な用件とは何でしょうか、博士……?」

 「ああ、『ヴェネツィアの庭師』への餌やりを手伝ってほしいんだ。

  君達が、デボラに精液を与えてくれないか」

 「は……? 一体、何をおっしゃって……」

 三人は戸惑った様子で、強化ガラスで隔てられたデボラに視線をやる。

 うち一人の息は荒く、一人は唾をごくり……と飲み込んだ。

 私が彼らに飲ませたのは、デボラのフェロモン凝縮薬。

 男性の生殖欲を促進させ、デボラに対して欲情させる――そうした効果を備えた薬だ。

 彼らの様子を見るに、どうやら効果は出ているように見える。

 「で、でも……内規では、デボラとの接触は……」

 「デボラに対する全権を持っている私が頼んでいるのだ、何も問題はない。

  さあ、遠慮なく入りたまえ……」

 「は、はい……博士の頼みなら……」

 三人は扉を通り、言われるがままぞろぞろと中に入っていく。

 どうやら、薬の効果は確実に出ているようだ。

 隔離房に現れた三人に、「ヴェネツィアの庭師」はすかさず牙を剥いた。

 複数のツタが周囲に広がり、三人の体を拘束してしまう――

 「う……わぁっ……!」

 「あぁぁっ……!」

 ツタで体を絡め取られ、恐怖の叫びを上げる警備員達。

 しかしその声も、次第に弱々しくなっていく。

 妖女は三人に甘い快楽を与え、あっという間に籠絡してしまったのだ。

  

 薔薇のような妖花が、最も若いと思われる警備員のペニスを咥え込んだ。

 じゅぶじゅぶと妖花がうねり、そのまま肉棒をしゃぶりたてる――

 「はぅぅぅっ……!」

 妖花での吸精を受けた彼は、たちまち射精してしまった。

 すると彼の周囲に、無数の妖花が群れ寄ってくる。

 「う……あぁぁぁ〜〜!!」

 たちまち彼は、何十もの妖花から熱烈な歓迎を受けることになった。

 全身がびっしりと妖花で包まれ、じゅるじゅると舐めしゃぶられている。

 体中をくまなく愛撫され、とろけきった表情で射精を繰り返す彼――

 その頬を、「ヴェネツィアの庭師」は掌で愛おしげに撫でた。

 そういえば、妖女に熱烈に愛されている彼の顔はずいぶん整っている。

 まさか「ヴェネツィアの庭師」は、相手を顔で判断しているのか……?

  

 その一方、別の警備員も妖花でペニスを貪られていた。

 こちらは、特徴もない普通の20代といったところか。

 ことさらハンサムというわけでもなく、ありふれた顔である。

 そんな彼はツタで動きを封じられたまま、股間を妖花に貪られていた。

 「はぅぅぅぅ〜!!」

 たちまち彼は絶頂し、精液を妖花に啜られてしまう。

 しかし「ヴェネツィアの庭師」は、射精を繰り返す彼を一瞥もしていない。

  

 そして、3人目の警備員――

 彼の扱いは、他の2人と比較してもひどかった。

 ツタで無造作に全身をぐるぐる巻きにされ、背筋を強引に反らされたような体勢。

 そのままペニスに巻き付いたツタで、上下に扱き上げられている。

 ただ強引に、ぐちゅぐちゅと扱くだけの単調な動作。

 それでも相当に気持ちが良いのか、何度も射精に至らされていた――

 「う、うぐ……あぁぁっ!!」

 彼は3人の中では最も筋肉質で、まるで大岩のようにいかつい顔をしている。

 それが、どうやら「ヴェネツィアの庭師」の好みではなかったようだ――

  

 「これは新発見だな……『ヴェネツィアの庭師』は面食いだったとは」

 デボラが獲物を選ぶ基準は、想像以上に様々な要素が絡むらしい。

 これも、機会があればぜひ色々と試してみたいものだ――

 「はぅ……うぁぁ……」

 美男好みのデボラは、ハンサムな警備員を情熱的に愛し尽くしていた。

 彼は全身を無数の妖花に包まれて愛撫され、甘い悦びに浸されている。

 そこから放たれる芳香も強烈なもので、理性はとうに吹き飛んでしまったようだ。

 その唇も妖花で塞がれ、じゅるじゅるとしゃぶりたてられている。

 数十もの妖花に総動員で愛し尽くされ、彼はとろけた顔で何度も何度も精を啜られた。

 その一方で、残る2人は明らかに搾られ方が雑である。

 筋肉質な警備員など妖花も使ってもらえず、ツタでメチャクチャに搾られていた――

  

 彼が哀れになった私は、蛇仙女を実験房に招き入れてやった。

 蛇体をくねらせて現れた彼女は、がっしりした体付きの彼に目を付ける。

 やはり、デボラによって男の好みは激しいようだ。

 細身の美青年を拒む者、生命力の強いオスを好む者、贅肉の多い男を好む者――

 そして蛇仙女は、がっしりした男を好む傾向があった。

 顔の良し悪しはまったく関係なく、とにかく相手の筋肉量を重視するようだ。

 蛇仙女にとって、頑強で体格の良い警備員こそが好みであるらしい。

 彼女はツタに絡まれた警備員をその蛇体で巻き上げ、強引に奪い取った。

 一方で「ヴェネツィアの庭師」は美青年に夢中で、そちらには目もくれない。

 「あ、うぅぅ……」

 蛇仙女の蛇体に巻き上げられ、苦しそうな呻き声を上げる警備員。

 その体をみっしりと締め上げながら、ペニスを自らの女性器に迎え入れる。

 「ひぁ……あぁぁっ!!」

 蛇仙女に犯されてしまった警備員は、とぐろの中で身悶えた。

 上擦った悲鳴を上げながら、たちまち射精してしまったようだ。

 その側では、「ヴェネツィアの庭師」に精を啜られる二人の呻きも響いていた――

  

 「さて、そろそろ潮時か……」

 「ヴェネツィアの庭師」は、短期間で男の精を搾り尽くし死に至らしめる危険なデボラ。

 あまり長く精を吸わせ、また命まで落とす羽目になられては困る。

 私は電極のスイッチを押し、「ヴェネツィアの庭師」の搾精を強制的に中断した。

 蛇仙女に巻き上げられている、あの男は――

 身体は頑丈そうだし、もう少し放置しても構わないだろう。

  

 ――それから、10分後。

 警備員達は魔性の快楽を知り、その人生における価値観も一変した。

 こうなれば、あの悦びを忘れることはできないだろう。

 そして、それを提供できる唯一の人物が誰なのかも――

 こうして仲原も含め、警備員4人は私の手足となった。

 今の私の権限からすれば、さほど心強いとも言えないが――

 それでも、様々な雑事を処理してもらえるのは便利だ。

 これから先は、目的に向けてやるべきことも多くなるのだから――

  

  

  

 そして、夜の実験室。

 今夜の相手は、「ヴェネツィアの庭師」だ。

 最初の給餌において、10分程度で少年1人を搾り殺したほど危険なデボラ。

 彼女には入念に給餌の観察を重ね、その生態は知り尽くした。

 何より今日の午後、「ヴェネツィアの庭師」は警備員3名の精をじっくり啜ったのだ。

 それから8時間程度では、あまり彼女の腹も空いてはいまい――

  

 「ヴェネツィアの庭師」を、実験房へと呼び込む。

 その妖艶さと、匂い立つような色気。

 いや、彼女の放つフェロモンが実際に匂い立っているのだ。

 その甘い芳香は、脳髄まで蕩かしてしまうかのよう。

 私は誘い込まれる羽虫のように、実験房へと進んだ――

 そして、「ヴェネツィアの庭師」に近付いていく。

 途端にツタがしゅるしゅると伸び、足や腰へと巻き付いてきた。

 ツタはペニスにも絡みつき、固さを確かめるかのように這い回る――

 「う……あぁぁっ……」

 男性器を探り、「ヴェネツィアの庭師」は妖艶な笑みを浮かべた。

 そして薔薇の妖花が、しゅるしゅると股間へと伸びてくる。

 妖花の真ん中に、唇のような搾精器が備わっているのが見えた。

 あれは、男の精を吸い尽くす魔性の花。

 あの妖花で、男の命そのものを搾り尽くすところも見てきたのだ。

 それが今、私の男性器を咥え込もうとしている――

 私の興奮は、まさに頂点に達していた。

  

 「あ、あぁぁぁっ……!」

 じゅぶぶっ……と、妖花が肉棒を咥え込んでくる。

 その瞬間、私はうっとりと甘い気分に浸ってしまった。

 まるで、妖花の中でペニスが蕩かされているかのようだ。

 中が妖しく収縮し、ぬめった内壁が密着してくる――

 「あぅ……あ、あぁぁっ……!」

 ぎゅっと絞られ、ちゅうちゅう吸われ、じゅるじゅるしゃぶりたてられ――

 「はぅ……あぁぁぁぁ……」

 あえなく、妖花の中に精液を発射してしまった。

 とろけそうな放出感を味わいながら、白濁が吸い出されていく――

 咥え込まれて10秒程度しかもたなかった、まさに魔性の妖花だ。

 「あ、あぅぅぅ……」

 しかし射精した後も、執拗な吸引刺激はまったく収まらなかった。

 甘く狂おしく、妖花はペニスを吸い上げ続ける。

 男性器の脈動は収まらず、ドクドクと射精が続くのだ――

 妖花の中に延々と精液が吸い出され、さすがに危機感が頭をよぎる。

 「あぁっ……そんなに……はぅぅっ……!」

 身をよじる私だが、強引にツタで押さえ込まれてしまった。

 「ヴェネツィアの庭師」は艶めかしい笑みを浮かべ、悶える私を眺めている。

 妖花で無慈悲に精液を吸い上げ、じゅぶじゅぶと貪りながら――

 「うぁ……あぅぅっ……むぐっ!」

 悲鳴を上げる口さえ、妖花によって強引に塞がれてしまう。

 甘い味が口内に広がり、じんわりと脳を浸してきた――

 「うぅ……あ、あぁぁ……」

 「ヴェネツィアの庭師」の、妖花による甘いキス。

 たちまち体から力が抜け、あまりの気持ち良さに酔いしれる。

 脳までフェロモンにまみれ、私はうっとりと恍惚に浸っていた。

 無防備になった私の性器から、ドクドクと精液が吸われ続ける――

 「ぁ……ぅぅ……」

 意識がドロドロにとろけてしまいそうな、天国の快楽。

 体には力が入らず、精液が吸われるごとに衰弱していくのが分かる。

 こうやって、一人の青年が精を吸い尽くされたのを思い出していた。

 「ぅ……ぁ……」

 このままでは、死ぬまで搾り取られてしまう――

 だが、それでも本望だ――

 「ヴェネツィアの庭師」の艶めかしい笑みを見ながら、私は尽き果てていくのだ――

  

 ぎりぎりのところで、電極が作動した。

 電流により「ヴェネツィアの庭師」は意識を失い、私は床へと投げ出される。

 「う、うぅぅ……」

 冷たい床に沈み、ようやく私は我へと帰った。

 もう少しで、死ぬまで精を搾り尽くされるところだったのだ――

 「す、少し……休まないと……」

 本当に、今のは危なかった。

 次からは、もっと慎重にならなければ――

 そう思う一方で、あのまま搾り尽くされてみたかったと思ってしまう自分もいた。

 搾死の快感を垣間見た私は、その誘惑の手に捕らえられてしまったのである――

  

  

  

  

  

 ***西暦2046年6月15日

  

 「近頃の君は、一体何を考えているのかね……?」

 所長は眉を吊り上げ、書類を机に叩きつけた。

 「いくら何でも、納入するデボラの数が多すぎる。

  今まで君に全てを任せてきたが……まさかこれほど、放漫だとは思わなかったよ」

 「任せた……ねぇ。丸投げしてきた、の間違いでしょう?」

 「それに君は、ずいぶんと警備員達を手懐けているようだね。

  私兵のつもりなのか知らんが、正直目に余るよ」

 そう言って、所長は溜息を吐きながらコーヒーを口にする。

 その中には、例のフェロモン凝縮薬が入っているのだ――

 「所長……私の計画は、大詰めに入っています。

  そろそろ、あなたには退場してもらいましょう」

 「君は……何を言っている?」

 「ああ……もちろん、あなたにはずっとここの所長でいてもらいますよ。

  ですが、操りやすいよう骨抜きになってもらいます」

 私は、ぱちんと指を鳴らすと――

 所長室に、雨合羽を被った少女を連れた仲原が入ってきた。

 仲原は緊張した面持ちで、背後の少女をひどく気にしている――

  

 「ノックもなく、なんだ君達は! それに、なぜ子供が――」

 所長室に入ってきた少女は雨合羽を脱ぎ捨て、にやついた顔を見せた。

 その尻から、巨大な尻尾がぐにゃりと這い出す。

 「ベ、ベイビーフェイス!? デボラを外に出すなんて、君は正気か!?」

 血相を変え、椅子から立ち上がる所長。

 上等なコーヒーがこぼれ、書類を茶色く汚してしまう。

 「私が正気であったことなど、あの時から一度もありませんよ……」

 そう言って、私はベイビーフェイスに飴を渡した。

 軽く頭を撫でてやると、少女はにっこりと微笑む。

 「後は任せたぞ……ベイビーフェイス」

 ベイビーフェイスは、後ずさりする所長へと歩み寄っていく。

 にやにやと笑い、その巨大な尻尾をくねらせて――

 「や、やめろ……! 須山君! おい、須山君!?」

 「それでは……お楽しみ下さい、所長」

 ベイビーフェイスの尻尾が、所長の体を巻き上げていく――

 最後まで見届ける必要もなく、私と仲原は所長室を後にしたのだった。

  

 これ以後、所長は部屋から一歩も出て来なくなった。

 私が差し向けるデボラに溺れ、骨抜きになってしまったのだ。

 研究所の全権は、こうして私に握られたのだった――

  

  

  

 「今日の収容デボラは……『メコンの食人植物』と『化蛙』、それにハエ型デボラだな」

 「メコンの食人植物」は、東南アジアで最大の犠牲者数を出した有名なデボラ。

 その体には、ウツボカズラやハエトリグサといった食虫植物の器官が発現している。

 そして、彼女の生態はいたってシンプルだった。

 甘い匂いを放ち、男を誘い寄せる。

 そして近寄ってきた獲物を、食虫植物で消化して捕食するのである。

 もちろん捕食の過程において、その精液も搾り抜かれる。

 ミャンマーの奥地にもかかわらず、このデボラは84人の男女を餌食にした。

 18人の女はただ消化し、66人の男は精を搾り抜いた上で包み溶かして――

  

 「化蛙」は、最近国内で捕まったカエル型のデボラ。

 男性を洞窟に監禁して精を搾り、産み付けた卵に精子を与える変わったタイプである。

 捕獲時には21人の少年が洞窟から発見され、うち3人はすでに息絶えていた。

 日本のデボラで、これだけ多くの被害を出すのは珍しい。

 荻野の書いた記事で「化蛙」の存在を知った私は、深い興味を抱いていたのだ――

  

 一方でハエ型デボラは、まったくもって無名。

 二ヶ月前に捕獲されたばかりの、ハエの特質が発現したデボラだ。

 背中に羽根、消化管と腹部が蠅化し、下腹部は完全に虫状となっている。

 男性1人をさらい、廃屋で捕食していたところを駆除部隊が捕獲。

 男はすでに息絶えており、犠牲者は彼1人――

 つまり散発的に事件を起こし、速やかに捕獲されたごく普通のデボラである。

 私に必要なのは、できればハチ型デボラ、次にアリ型デボラなのだが――

 そう都合良く見つからない以上、代役を検討するしかないのだ。

  

 「さて……まずはハエ型デボラにしようか」

 コンソールを操作し、ハエ型デボラを実験房に呼び込んだ。

 上半身はやや勝ち気そうな女性だが、その背には大きな羽根。

 さらに下半身は、腹部から下がほとんどハエで、右足も節足と化している。

 たいていの人間は、蝿が入り交じったおぞましい姿と見るだろう。

 だが私は、そこに美を見出していた。

 さて、まずは捕食の観察に取りかかるとしよう――

  

  

  

 「うわぁぁっ!!」

 少年は実験房に連れて来られるなり、ハエ型デボラを前に大きな悲鳴を上げた。

 まるで、怪物でも目にしたかのような――いや、彼にとっては怪物そのものか。

 背を向けて逃げようとする少年だが、デボラの動きの方が格段に早かった。

 羽根を震わせて飛翔し、デボラは少年を床へとねじ伏せてしまう。

 「ひぃぃっ……!」

 仰向けにされ、デボラにのしかかられた少年――

 彼は恐怖でパニックになりながらも、フェロモン作用で勃起してしまっている。

 ぴくぴく震える男性器に、デボラはハエそのものの膨張した腹部を近付け――

 その先端に備わった産卵孔で、少年のペニスを咥え込んでしまった。

 「はぅ……あぅぅっ……!!」

 快感の声を上げながら、じたばたと暴れる少年。

 産卵孔はじゅぶじゅぶと収縮し、ペニスを激しく搾りたてる。

 同時にデボラは、組み敷いた少年の顔に口を寄せ――

 べっとりと、粘度の高い唾液を大量に浴びせかけた。

  

 いや――あれは、ただの唾液ではない。

 蝿は獲物に消化液を吐きかけ、その体を溶かして口から啜り上げる。

 ハエ型のデボラも同様に、獲物に消化液を垂らすのだ。

 「ひぁ……あぁぁぁ……!!」

 ここから先の展開は、ホラー映画そのものだった。

 白濁した消化液を、顔にべっとりと浴びた少年――

 その顔面が、ドロドロにとろけていく。

 同時に、産卵孔からもじゅぶじゅぶと白い粘液が溢れ出していた。

 あの中でも、ペニスを消化液で溶かしているのだ――

  

 「ううむ……」

 さすがの私も、正視するには抵抗がある。

 しかしハエ型デボラは唾液で少年を溶かしながらも、犯すのはやめなかった。

 こうして少年は大量の消化液にまみれ、ドロドロに溶かされてしまったのである。

 溶けた血肉の中に、何本もの骨が転がっている無惨な有様――

 そしてデボラは、その口でじゅるじゅるととろけた血肉を啜っていた。

 「これは……ひどいな……」

 歪んでいる自覚は十分にある私でさえ、これと同じ目に遭うのは遠慮したい。

 そもそも、このデボラを納入したのは私の楽しみのためではなかった。

 実現すべき目的のため、虫型のデボラ――できれば真社会生物が欲しかったのだ。

 ともあれ、何をするにしても消化液対策は必須となる。

 「ウェストミンスターの聖女」も含め、消化液をどうにかする対策を練らなければ――

  

  

  

 「次は……『メコンの食人植物』だな」

 こちらは完全に私の楽しみで納入したデボラだが、偶然にも消化タイプの極右のような種だ。

 このデボラの捕食を観察することで、消化対策の研究の助けとなるだろう。

 通常なら、いつものように実験房に「メコンの食人植物」を呼び込むところだ。

 しかし彼女は、獲物をウツボカズラやハエトリグサで半月以上もの時間をかけて溶かすという。

 やはり、実際にそれだけの時間をかけて溶かしていく過程を観察したいものだ。

 「デボラMM009の房に、兵役忌避者3人を運び込んでくれないか?」

 私は、警備員達にそう連絡した。

 彼らは指示に従い、3人の少年をすみやかに房へと連れていく。

 ただ惜しむらくは、デボラの隔離房には通常の監視用カメラしかついていないのだ。

 実験房のように、断層スキャンなどの最新設備までは備わっていなかった。

 だが、それも仕方ない。

 私は、「メコンの食人植物」がいる隔離房にモニターを切り替えた。

  

 デボラの房に連れ込まれた3人の少年は、当初こそ怯えた様子を見せていたが――

 次第にその表情が緩み、ふらふらと食人植物へと歩み寄っていった。

 濃厚なフェロモンにより理性を奪われ、誘い寄せられてしまったのだ。

 最初に近寄った1人は、巨大なハエトリグサに挟み込まれた。

 まるで抱き込まれるように、巨大な葉に包み込まれてしまったのだ。

 その途端、少年はうっとりした表情になった。

 どうやらハエトリグサの内膜から、男を恍惚に浸らせる成分が分泌されているようだ。

 彼は巨大な葉に挟み込まれたまま、びくびくと体を震わせ射精を繰り返している。

 あのまま、長時間をかけて体を消化されてしまうのだ――

  

 そして別の1人は、ネバネバのツタのような植物器官に絡め取られた。

 あれはモウセンゴケ、虫を粘着液で捕らえ消化してしまう食虫植物だ。

 あの少年もモウセンゴケで全身をべっとりと絡め取られ、もはや逃げようがない。

 そして股間にもモウセンゴケが絡みつき、ペニスを扱かれているのが見えた。

 粘液でネバネバにしながら、男性器を刺激し――

 そして、何度も射精させながら消化してしまうのだろう。

  

 そして最後の1人は、ウツボカズラに落とし込まれてしまった。

 頭だけを壺状の葉から出し、とろけきった表情を浮かべている。

 おそらく射精を繰り返しているのだろうが、このカメラでは確認のしようがない。

 報告によれば、ウツボカズラの消化には時間がかかるらしい。

 たっぷり半月以上の時間をかけて、恍惚のまま包み溶かしてしまうのだ――

  

 こうして3人とも巨大な食虫植物に捕らわれ、甘くとろけきっていた。

 ああして、恍惚のままに消化されてしまうのだろう――

 私は、心の底から彼らを羨んでいた。

 ともかく「メコンの食人植物」の隔離房は定期的にチェックし、消化の経過を見るとしよう。

  

  

  

 さて……最後に「化蛙」だ。

 この個体は、短期的には危険度が高くないと言える。

 大勢を監禁するという習性により少なからぬ被害を出したが、毒や牙は持っていない。

 そこで今回は、私自身が楽しませてもらうとしよう――

  

 胸を高鳴らせながら、「化蛙」を実験房へと呼び込んだ。

 その体は、まさにカエルの妖怪と言えるような姿である。

 そして実験房に入ってくると、不意に部屋の真ん中で身をかがめた。

 まさか、排尿か排便をしているのか――?

 と、その女性器からじゅるじゅると卵嚢が溢れ出る。

 なんと化蛙は、この場で産卵してしまったのだ。

 所構わず産卵する、という報告は聞いていたが――

 まさか、初めて踏み込む場所でも構わず産むとは思わなかった。

 そして化蛙は私を見据え、ゲコゲコと奇妙な声を上げる。

 その舌がベロリと伸び、ガラスにぬるぬると這った。

 間違いなく、誘っている――

 あの卵に、私の精子を搾り出そうとしているのだ。

 興奮は頂点に達し、肉棒もはち切れんばかり。

 私は誘われるがまま、実験房に足を踏み入れた――

  

 繁殖相手の姿を認めた化蛙は、一気に跳躍してきた。

 「うわぁっ……!」

 私は化蛙に飛びつかれ、床に押し倒されてしまう。

 そのまま私は、ずるずると卵の側にまで引きずられていった。

 そして化蛙は私の体を抱え込み、大きくなったペニスを掌でぎゅっと握ってくる。

 「あ、あぁぁぁっ……!」

 粘膜に包まれた、ぬめった掌の感触。

 分泌液がぬるぬるとペニスにまとわりつき、甘い快感を与えてくる。

 化蛙は肉棒の硬さを確かめるようにやわやわと握り込みながら、亀頭を卵へと近付けた。

 これで、放出した精液が卵へと直に振りかかるのだ。

 無理矢理に、繁殖の道具にされている――その状況だけでも、私は興奮してしまう。

 化蛙はゲコゲコと鳴き、そしてペニスを握った手を動かし始めた――

 「はぅ……あぅぅっ……!」

 にゅるにゅると、ぬめった掌でペニスが扱きたてられる。

 カリ首に水掻きがまとわりつき、ぞくぞくした快楽を与えてきた。

 さらに吸盤が亀頭に吸い付き、刺激を与えてくる――

 「うっ、ダメだ……あぁぁっ!」

 非常に甘美な手淫で、私はあっさりと射精に追い込まれた。

 びゅるびゅると放出された精液は、床に産み付けられた卵嚢に降りかかる。

 艶めかしい卵を、べっとりと汚す自身の精液――

 これほどまでに、興奮させられる光景があるだろうか。

  

 化蛙は、満足そうにゲコゲコと鳴く。

 しかし、私の体を抱え込んだ腕を離そうとはしなかった。

 それどころか、その舌をしゅるりと伸ばし――

 「はぅぅっ!!」

 なんとも器用に、根元から先端までペニスへと巻き付けてくる。

 私の肉棒は、化蛙の舌でぐるぐる巻きにされてしまったのだ。

 「あ、あぁぁぁ……!!」

 そのまま化蛙は舌を巧みに動かし、上下に扱きたててきた。

 じゅるじゅる、ぐちゅぐちゅと激しいピストンを舌で繰り出したのだ。

 唾液でぬめった舌の筒でペニスが何度も扱き上げられ、擦りたてられ――

 特に、舌粘膜の輪がカリ首を上下するのは腰が抜けそうなほどの快感だった。

 私は呻き声を上げながら、足をガクガクと震わせ――

 「あ、あぅぅぅっ……!!」

 そして、あっけなく二度目の射精に追い込まれた。

 卵に精液がどぷどぷと降りかかり、白濁にまみれていく――

 「あぅ、はぅぅぅっ……!」

 それでもなお、化蛙はペニスに巻き付けた舌でのピストン刺激を止めなかった。

 メリュジーヌの舌遣いは、もっとねっとりとしている。

 艶めかしくペニスに舌を絡ませ、締めたり這い回らせたりと穏やかな刺激を与えるのだ。

 それと比べ、化蛙の舌遣いはひたすらに激しい。

 絶え間なく上下のピストンを繰り出し、一気に射精させる直情型の責めだった――

 「う、あぁぁぁっ……!」

 またも精液を発射し、化蛙の卵に子種を捧げてしまう。

 床の卵は、三回分の精液にまみれていた。

 このカエル型のデボラに、完全に男性器を支配されている心地だ。

 だが、それでまったく構わない。

 彼女が求めるならば求めるだけ、卵に子種を捧げ尽くそう――

  

 それから30分、いったい何度射精させられただろうか。

 設定時間が過ぎ、電極から流れた電流で化蛙は意識を失ってしまう。

 その頃には、卵は大量の精液でドロドロになっていた。

 彼女には申し訳ないが、この卵を孵化させるわけにはいかない。

 だが、私が目的を果たした暁には――

 化蛙にいくらでも精子を提供しようと、そう誓ったのだった。

  

  

  

  

  

 ***西暦2047年3月4日

  

 モーツァルトの後期三大交響曲を流しながら、私は報告書に目を通していた。

 なお演奏者は、ヘルベルト・フォン・カラヤン。

 カラヤンはクラシック通に軽視されがちだが、私はそうは思わない。

 モーツァルトの後期三大交響曲も、このカラヤン演奏のものが存外に良い。

 すっかり主流になったピリオド奏法を嫌っているわけでもないが、やはり流麗さが好みだ。

 しかし目を通している報告書の内容は、悲しいかな流麗とは程遠い。

  

 「学生ボランティアの受け入れか、ひどい時代だな……」

 文面を目で追いながら、私は思わず嘆息してしまう。

 戦争も長期化した、このご時世――

 徴兵年齢に至っていない学生も、お国のためにボランティアを、という話が持ち上がったらしい。

 そういうわけで、この研究所も公的施設なので、多くの学生ボランティアが派遣されることとなった。

 しかし徴兵年齢も下がり続けている現在、それに至らない学生など子供も同然。

 まともな頭脳をしていれば、労働力として使い物にならないことなど分かりそうなものだが――

 「まあ、使い道はあるさ……うちでは」

 デボラの収容数も、増える一方だ。

 ボランティアとやらにも、せいぜい働いてもらわなければなるまい。

  

 次に、メールチェックをしていると――

 荻野から私宛に、メールが届いていた。

 彼は潤沢な取材費(もちろん私が送った)により、海外で直に取材することも多い。

 そんな彼が書くデボラ事件記事も、ますます真に迫るようになった。

 近く単行本化するという話もあり、まさに絶好調のようだ。

 そして今日、彼は非常に興味深い話をメールで知らせてくれた。

  

 『奈良県内で、カエル型デボラの少女が目撃されています。

  しかも証言からして、複数個体が存在するのではないかと。

  例の化蛙の娘達が存在したという可能性も十分にありえます。

  以後、しばらく取材を続けます』

  

 「化蛙に、娘が……」

 これは、聞き捨てならない話だ。

 関連部署に連絡を入れ、綿密な調査と捕獲の準備を要請する。

 また、荻野の銀行口座にも十分な取材費を振り込んでおいた。

 彼の仕事に敬意を表している私にとっては、軽い出費に過ぎない。

 また他の友人達にも、様々な形で送金することも忘れなかった。

 軍や官僚の友人達との友情も、盤石なものにしておかなければ。

 さらに、某大物政治家の孫2人の大学入学にも便宜を図っておく。

 徴兵免除措置が付く以上、戦時においての効果は絶大だ。

 彼は先日ここまで足を運び、固い友情の握手を交わしたのである。

 他にも、多くの官僚や政治家達に欲しがるもの(大部分は金だが)を与え、友情を保った。

 これも、目的のためには必要なことなのだ。

  

 さて、近く懐柔の必要があるのは厚生省のキャリア官僚。

 私と同世代でありながら、政策の企画立案や予算編成にも関わるほどの凄腕だ。

 若手が大いに台頭しやすいというのは、戦時下の良いところである。

 しかし彼がなかなか、ありきたりの贈り物では揺らがない。

 綿密に調査するも、金の収支には瑕疵さえ見当たらなかった。

 しかし非合法に入手した彼のPCの履歴を見て、閃くものがあった。

  

 頻繁にポルノ動画を見る――その程度なら、脅しのネタにもなりはしない。

 だが彼は、実に奇妙な動画を繰り返し閲覧していたのだ。

 それは、蛇の捕食動画。

 中でも、アナコンダが鹿を丸呑みにする動画がお気に入りらしい。

 動画の再生回数や時刻からして、何に使っているのは明白だ。

 まったく、どんな幼児体験があれば、蛇の補食動画で自慰をするようになるのか――

 ……まあ、私も人のことは何も言えまい。

 ともかく、荻野と友情を築いた時の手が使えそうだ。

  

 そして私は、彼の元にメールを送った。

 蛇仙女が兵役忌避者を締め上げながら、精を搾り取る一部始終の動画。

 続けて、『このような趣向のご歓待はいかがでしょうか?』というメッセージ。

 その日のうちに、彼から返信があった。

  

  

  

 「あなたのことは、よく噂で聞いていましたよ……須山博士」

 厚生省のホープ、若きキャリア――鈴岡は、自己紹介の直後に言い放った。

 「……お聞き及びとは、光栄の至りです」

 正直なところ、あまり人の噂に上るのは歓迎できることではないが――

 まあ計画も大詰め、多少強引に前押ししなければならない面もある。

 「検察の鹿島次長検事や軍需庁の藤原主任ともご懇意のようで。

  実に顔がお広い、羨ましい限りです……」

 向こうは、牽制の手を緩めない。

 それに、私のことをよく調べ上げている。

 「鈴岡さん、私は友情を重んじています。

  ある哲学者は、『友情は魂の結びつきである』と言いましたね」

 「ヴォルテール、『哲学辞典』ですね」

 「その通り……あなたはどうやら、私に不信感を抱いているようです。

  しかし過去の賢人は、こうも言いました。

  『強い友情というものは、不信と低抗から始まるのが自然だ』……とね」

 「それは、アラン……だったかな。確か、『精神と情熱とに関する八十一章』」

 「ずいぶん、哲学にお詳しいのですね。確か、ご専攻は法学だったはずでは?」

 そう尋ねると、鈴岡の顔は少しばかり緩んだ。

 「小林秀雄の大ファンなのですよ。

  彼の著作はもちろん、手掛けた訳書もだいたいは目を通しています」

 「小林秀雄か……申し訳ないが、『モオツァルトのかなしさは――』程度しか存じませんね」

 「なるほど……ときに、モーツァルトはお聞きに?」

 「研究の合間に、流すことがあります。ピアノ協奏曲第23番など、実に素晴らしい」

 「ほう……ピアノ協奏曲なら、私は断然、20番ですね。特にゼルキンの演奏が優れている」

 「比較は無粋かもしれませんが……私は、アルゲリッチの演奏に軍配を上げたいな」

 「なるほど……博士は存外、情熱的だと見える」

 やはり、知的レベルが同じ相手との話は弾む。

 ひとしきりクラシックの話題で花を咲かせ、私と鈴岡の間の緊張も解け出していた。

 互いに敵同士でないことは、会う前から分かっている。

 私は彼と友情を結ぶために会ったのだし、彼としてもそうであるはずだ。

 ただ、相手が信に足る存在かどうか見定めただけに過ぎない――お互いに。

 「では、私の研究室を見学してもらいましょう……」

 そう切り出すと、鈴岡は静かに頷いた。

 お互い、信用できる相手だと判断したということだ――

  

  

  

 「確かに魅惑的だが、どうしても恐怖心が先立ちますね――」

 強化ガラスを隔て、蛇仙女と対面する鈴岡。

 蛇仙女はこちらをじっと見据え、舌をチロチロと出し入れしている。

 明らかに、私達二人を餌として見定めているのだ――

 いくぶん、鈴岡の余裕も薄れて見える。

 「本当に、安全性の面で問題はないのですか……?」

 「蛇仙女には筋弛緩剤が投与されていますので、人間に怪我を負わせる力はありません。

  この研究所のデボラは、完全にコントロールされています。危険はありませんよ」

 「かつてデボラIT019の給餌時に、死亡事故を起こしているのに……?」

 まったく、よく調べている。

 それを知っていながら、事に及ぼうとする彼も相当に肝が太いようだ。

 「あれはデボラIT019が納入された初日であり、情報が少ない状況でした。

  蛇仙女は納入から4年が経ち、存分に飼育実績があります」

 「なるほど、信じましょう……」

 そう言いつつ、やはり不安な面持ちは消えていない。

 「万一、この『歓待』が露見したら……?

  私は、社会的信用のいっさいを失うことになってしまいかねないが」

 露見はしない、というのが実際のところだが――

 リスクマネジメントの点では、それは答えになりえない。

 「万に一つもない事態ですが、その場合は事故として処理されます。

  研究所を見学していたあなたは、デボラに襲われるという災難に見舞われたのです。

  責任を問われて私は降格、あなたはとんだとばっちりだ」

 「なるほど……」

 ようやく、納得してくれたようだ。

 しかし生物として圧倒的に上位の存在に身を委ねる不安は、やはり拭えないだろう。

 「万一のことが起きる前に、蛇仙女には電流が流れます。

  さあ、そちらの扉へどうぞ……」

 「では……」

 恐る恐る、鈴岡は実験房への扉を通り――

 そして、蛇仙女の前に身をさらした。

 次の瞬間、蛇仙女は鈴岡へと襲いかかる。

 その蛇体で彼の細身の体を巻き上げ、ぎゅぅっと締め上げた――

 「う……あぁぁっ……!」

 彼の細い悲鳴は、歓喜の声のようにも聞こえた。

 蛇仙女のとぐろに巻かれ、じわじわと締め上げられているのだ。

 まさに、彼が見ていた捕食動画の獲物のように――

 鈴岡にとって、念願が叶った瞬間だったのだろう。

  

 こうして鈴岡は蛇仙女の餌食となり、ひたすらに犯された。

 極上の快楽の中で、足腰が立たなくなるまで搾り尽くされ――

 しばらく起き上がれなくなったので、医務室に運び込まれるほどだった。

 骨折などの怪我はなかったが、流石にしばらくの休息を必要としたようだ。

 それはともかく、これで私と鈴岡の友情は確固たるものとなった。

 特に秘密の共有は、友情を盤石にするものである――

  

  

  

 そして、その日の夜――

 私は、今夜の楽しみに赴いていた。

 危険な蛇仙女だが、これまで得たノウハウで、より安全に交われる方法も確立している。

 そろそろ、私自身が体験してもよい頃だろう――

  

 私は興奮を抑えきれないまま、実験房へと蛇仙女を導く。

 この艶めかしい蛇体に巻き付かれ、精を搾られる男達の姿を何度も観察してきた。

 そしてついに今日、私もその名誉に預かれるのだ――

 私は、おずおずと実験房に足を踏み入れる。

 すると蛇仙女は、すかさず獲物に襲いかかってきた――

  

 「う、あぁぁっ……!!」

 長い蛇体が、私の体をぐるぐると巻き上げていく。

 その、みっしりとした重圧感は予想以上だ。

 適切な量の筋弛緩剤を投与しながら、この圧迫感。

 これでは、全力で締め上げられればひとたまりもないだろう――

 「うぐ、あぐぐ……」

 苦悶と悦びがない交ぜになり、私はとぐろの中で喘ぐ。

 蛇仙女は、そんな私の様子をにんまりと笑いながら眺めた。

 そして、腰の辺りをぐいっと引き寄せ――

  

 ぐぷっ……と、肉棒が熱く狭い肉壺に飲み込まれる。

 その強烈な締まりは、筆舌に尽くしがたいほどだった。

 「あ、うぅぅっ……!」

 肉筒がぎゅっと狭まり、ペニスを締め上げてきた。

 蛇仙女の膣は、筋肉のリングが取り巻く形で構成されている。

 そのリングがぎゅぅっと締まり、ペニスの各部を独自の動きで圧迫するのだ。

 亀頭がぎゅっと押し潰されたと思ったら、根元が緩み、サオが揉みしだかれ――

 こんな人外の技の前では、どんな男も耐えられるはずがない。

 私は蛇仙女のとぐろに巻かれながら、びくびくと体を震わせ――

 「う、あぁぁっ……!」

 あえなく、熱く狭い肉壺に精液を捧げていた。

 すると蛇仙女は膣内をぐいぐいと締め上げ、さらなる精液の放出を誘う。

 「ぐ……あぁぁっ!!」

 蛇体のとぐろも連動するようにぎゅっと狭まり、全身が締め上げられた。

 体と男性器、両方が同時に締め嫐られているのだ――

 苦悶と快楽を同時に与える、蛇仙女の狂おしい抱擁。

 私は美しい仙女に抱かれながら、全身を震わせて悶えた。

 「うぐ……あぅぅっ……!」

 蛇仙女は、苦悶と快楽に歪む私の顔を覗き込み――

 その舌が、べろりべろりと顔全体を舐め回してきた。

 「あ……はぅぅぅ……」

 頬から唇、鼻や眉まで徹底的に舐め尽くしてくる蛇舌。

 とろけそうな快感とともに、顔中が唾液でドロドロにされてしまう。

 蛇仙女の口や舌、そして唾液が、甘い芳香を放っている。

 私はそれをふんだんに吸い込み、頭の中がとろけそうになった――

 「うぐ……あぁぁ……」

 それでいながら蛇体と膣が連動して私の体を締め尽くし、恍惚に浸ることも許されない。

 蛇仙女に抱かれ、ひたすらに獲物として嫐られるしかないのだ。

 そして、彼女の肉壺に精液を捧げること――それだけが、私に許された全てだった。

 「ぐぁ……あぁぁぁっ……!」

 さらに大量の精が、蛇仙女の膣内へと搾り出される。

 膣内がぐちゅぐちゅと締めては緩めてを繰り返し、激しく揉みしだかれているかのよう。

 顔面は蛇仙女にくまなく舐め回され、甘い唾液でドロドロだった。

 まるで、彼女に貪り尽くされているかのような気分。

 ついに舌は口内にまで入り込み、濃厚なキスを交わしているような心地となる――

 「うぐっ……あ、あぁぁぁ……」

 とぐろの中で悶えながら、またも大量の精液を膣内へと放出した。

 全身がみしみしと悲鳴を上げ、苦痛と快楽が交差する。

 「あぅ……あ、ぐぅぅ……」

 こうして私は、ひとしきり締め上げられ――

 そして、何度も何度も膣内へと精液を搾り上げられた。

 このまま獲物として、蛇仙女に貪り尽くされたい――

 とぐろの中で体を弛緩させながら、そんな誘惑に身を任せてしまう。

 もし手動の電極作動スイッチを手に持っていたとしても、私は押さなかっただろう。

 時限式の電極装置でなければ、このまま餌食にされていたに違いない――

  

 楽しみの時間が過ぎ、電流によって蛇仙女は意識を失う。

 そして、私の体は強靱な蛇体から解放されていた。

 絶対安全な量の弛緩剤を投与しておいたのに、私の全身は悲鳴を上げている。

 弛緩剤がなければ、確実に絞め殺されていただろう――

 「う、うぅっ……」

 ふらふらと起き上がりながら、床に倒れている蛇仙女に視線をやる。

 毎度、このような時間制限で楽しみが中断されるのが残念でならない。

 全てを忘れ、心ゆくまでデボラの餌食にされてしまいたい――

 だがそれも、目的を果たすまでの我慢なのだ。

 私はこうして、決意を新たにしたのだった。

  

  

  

  

  

 ***西暦2047年6月2日

  

 本日は、軍の協力の元で重要な実験が行われた。

 それは、私の目的において非常に重要な内容でもあるのだ。

 強固な隔離房に並べられた、2体のデボラ。

 プラナリア型のデボラと、アメーバ型のデボラだ。

 本来デボラは、自分より大きな生物にしか寄生しない。

 よってプラナリアやアメーバは、寄生の対象にはなりえないのだ。

 この2体は、DNAを注入することで生み出された人造のデボラなのである。

  

 プラナリアとは、2〜4センチ程度の扁形動物。

 切っても切っても再生するその再生力は、あまりにも有名である。

 このデボラには、プラナリアの一種であるナミウズムシのDNAを注入した。

 もちろんその再生力を受け継ぎ、多少の傷など目に見える早さで再生してしまう。

 その外観は、割と普通の女性と変わらなかった。

 表皮のあちこちが粘膜と化し、どこかとぼけた顔をしている程度だ。

 余談だがプラナリアというのは、ずいぶん間の抜けた顔をしている。

 世界各地で、この間抜け顔のプラナリア達が再生実験において体を切り刻まれている――

 そう考えると、なんとなく愉快な話でもある。

  

 一方、アメーバ型のデボラは大いなる変異をきたしていた。

 全身がドロドロの粘状となり、もはや不定形に近い。

 時に女性の形を取ることもあるが、すぐにその形は崩れてしまう。

 食事の際は、その粘状の体で獲物を包んで消化してしまうのだ。

 管理も非常に大変で、この研究所でも指折りの危険デボラである。

  

 これから行われるのは、再生能力のテストだった。

 2体のデボラに対し、軍人がアサルトライフルでの射撃を浴びせる。

 アメーバ型は、そもそも不定形なので物理的衝撃に強かった。

 弾丸も粘状の体に飲み込まれ、まるで傷を負わせることができない。

 プラナリア型デボラの方は、やはり凄まじい再生能力を示した。

 銃弾が貫通した傷も、すぐに組織が埋まって再生される。

 さらに千切れ飛んだ腕からは、また新たな腕が生えてきた。

 凄まじいことに、ちぎれた方の腕さえまだ生きているのだ。

 この腕に十分な栄養を与えてやれば、本体が生えてくる――

 まさに、驚嘆すべき再生能力である。

  

 「よし……テスト終了だ」

 その凄まじい再生力に、実験に協力してくれた軍人達も驚嘆を隠せない。

 「こんなデボラが現れれば、我々はどう戦えば良いのか……」

 懇意の大尉は、そう困惑の声を漏らす。

 「その際は、必ず我々が対抗できる兵器を用意します」

 と、確約しておいた。

 それはともかく、この結果は私にとって大いに満足できるものだった。

 特にプラナリア型デボラは、私の目的に欠かせないだろう――

  

 「さて、『メコンの食人植物』の経過を観察しようか……」

 私は、食虫植物デボラの隔離房へと足を運んだ。

 以前に与えた3人の少年はとうに消化され、また別の3人を与えている。

 彼らは現在進行形で溶かされており、うち2人はまだ息があった。

 ウツボカズラに浸かった少年は、相変わらずうっとりとした表情を浮かべたまま。

 しかし、その頬もずいぶんこけたように見える。

 ときおり呻き声を漏らしながら、ウツボカズラの中に射精した様子だった。

  

 ハエトリグサに挟み込まれた少年も、もはやもがくのを止めてしまった。

 挟まれながら体を弛緩させ、ときどき体をひくひくと痙攣させている。

 あんな風に包み溶かされるのも、幸せな最期というものだろう――

  

 そしてモウセンゴケに絡まれた少年は、すでに力尽きていた。

 粘着ツルでひたすらに全身を愛撫され、何度も射精を繰り返しながら衰弱死したのだ。

 その屍はゆっくりと溶かされ、食人植物の養分となっている――

 一連の消化実験からも、色々なデータが取れるだろう。

 すでに、食人植物の消化液に含まれる数種類の消化酵素に関して研究が進んでいる。

 目処が付いたら、また新しい少年を餌として与えてやらねば。

  

 そして、「ウェストミンスターの聖女」の隔離房に目を移すと――

 かの触手聖女は、同時に4人の少年を貪っていた。

 特に気に入った1人を、その触手ローブで抱え込んでじっくりと包み溶かしている。

 時には、イソギンチャクのような性器を用いて交わることもあった。

 残る3人の体にも、ローブから伸びた触手が這い回っている。

 触手で抱き込むようにしながら全身を愛撫し、射精させ、そのまま溶かしていくのだ。

 少年たちはみな、とろけきった表情で聖女に身を委ねながら貪られていた。

 ドロドロに溶かされ、消化される最期の瞬間まで天国を味わえるのだろう――

  

 複数の少年を同時に貪る「ウェストミンスターの聖女」の捕食には、実に心惹かれる。

 あの中に混じりたい、と思ったのも一度や二度ではない。

 聖女は、どのように私を貪ってくれるのだろうか。

 触手で絡め取って、精を搾りながらじわじわと消化されるのか――

 それとも、あの触手ローブの中に優しく抱き込んでもらえるのか――

 体が溶かし尽くされるその瞬間まで、聖女に抱かれていたい。

 私は、そんな破滅的な欲求から逃れられそうになかった。

  

  

  

  

  

 ***西暦2047年12月12日

  

 冬の雨は、なんとも心が陰鬱になる。

 こんな日は、シューベルトの『冬の旅』に限る。

 もちろん歌手は、フィッシャー=ディースカウをおいて無い。

 ジェラルド・ムーアがピアノを務めた、72年の旧版が特に素晴らしい。

 女性職員が研究室のドアをノックし、報告書を持ってくる。

 「こんな雨の日に、よくこんな陰鬱な曲が聴けますね……」

 報告書を手渡し、彼女はそう言った。

 まったくもって、センスがない。

  

 その報告書は、軍からのものだった。

 奈良にて、「化蛙」の娘と思われる個体が捕獲されたという。

 しかも、なんと6体――そのいずれも、親と同じ水準まで成長しているらしい。

 なんとしても早く手に入れたかったが、デボラの移送には色々と煩雑な手続きが多いのだ。

 最低でも、一ヶ月は待たなければならない――

 なんとももどかしいが、楽しみに待っているとしよう。

  

 そしてこの日、私は以前から研究していた薬品を完成させていた。

 その名も、消化酵素サイレンシング薬――

 これこそ、消化能力の高いデボラへの対策となるのである。

 この薬の効果を説明するために、人間の体で簡単な例を挙げよう。

 人間が酒を飲んだ場合、アルコールはまずアセトアルデヒドに、そして無害な酢酸に分解される。

 このうちアセトアルデヒドを分解する酵素は、12番染色体にあるALDH2遺伝子により作られるのだ。

 ところがこのALDH2遺伝子のうちの1塩基が、GではなくAである人がいる。

 この塩基がAだと、分解酵素が働かず、アルコールの分解が上手く働かなくなってしまう。

 アジアにはこのタイプが多く、結果的に欧米人と比較して酒の弱い人が多く見られるのだ。

  

 そういうわけで、消化酵素サイレンシング薬に話を戻そう。

 私は研究を重ね、デボラが消化酵素を作り出す遺伝子3つを特定した。

 その3つを、このサイレンシング薬により制御。

 消化酵素を無力化し、消化液の酸性濃度も抑制する。

 つまりこの薬品を投与すれば、デボラの消化液は恐るるに足りないのである。

  

 だが、重大な懸念事項もあった。

 この消化酵素サイレンシング薬の効果時間は、かなり短い。

 いったん制御された遺伝子も、デボラは短期間で本来の状態に更新してしまうのだ。

 種にもよるが、効果時間は1〜2時間。

 交わる時間が長引けば、消化されるかもしれないというリスクがつきまとう。

 にもかかわらず、私は自身の欲求を抑えることができなかった。

 まずは、消化能力が限定的な個体――あのハエ型デボラで試すとしよう。

 なおこの薬は、私の最終目的とは関わりない。

 純粋に、私の楽しみのために作り出したものだった。

 だからこそ、私自身がリスク込みで試したい――

 もはや私の欲求は、止められないところまで来ていたのかもしれない。

  

  

  

 実験房には、あのハエ型デボラがいた。

 強化ガラスを挟んで、私の対面へと立つ異形の肉体。

 初日の給餌で、少年を押さえ込み、消化液で溶解した光景は目に焼き付いていた。

 その消化液は、膣からも分泌されるのだ。

 そんな危険な存在と、効果が不確かな制御薬を用いて交わるのだから――

 私の酔狂さも、我ながら相当のものだ。

  

 なおハエ型デボラは、私の楽しみのために納入されたものではない。

 最終目的のために、どうしても必要だったのだ。

 しかしどれだけ試算を重ねても、有効な結果は出なかった。

 どう変数を変えてシミュレートしても、繁殖数が駆除数を下回るのだ。

 やはり、母胎は真社会性昆虫でなければならない。

 特に、ひときわ戦闘能力の高い種類が――

 そういうわけで、私の目的におけるハエ型デボラの存在意義は消失した。

 しかし、無価値になったわけではまったくない。

 どんなデボラであっても、その交わりは私の悦びなのだから――

  

 実験房に入った私に対し、ハエ型デボラは飛び掛かってきた。

 文字通り羽根を震わせて飛翔し、強引に押さえ込んできたのだ。

 「う、くっ……!」

 仰向けに押し倒された私の上にのしかかり、デボラは膨らんだ腹部を向ける。

 先端に備わった産卵孔から、どろり……と白濁した粘液がこぼれた。

 あれは、男を交尾しながら溶かしてしまう消化液――

 しかし薬の効果で、今は消化能力を持っていないはずだ。

 ハエ型デボラは、そのままペニスに産卵孔を被せ――

 じゅぶっ……と、ぬめった感触の肉穴にペニスが咥え込まれてしまった。

 「うぅっ……! あ、あぁぁっ……!!」

 一般的に昆虫型デボラの生殖器は、他のものとはかなり構造が異なる。

 特に、虫の交尾器は種によっても大きく違うのだ。

 だからこそ、未知の刺激を味わうことができるのである。

 「こ、これは……あぁぁっ!」

 ハエ型デボラは、肉壺の奥に繊毛のようなものが密集していた。

 それがぞわぞわと亀頭に擦れ、独特の快感をもたらす――

 「あ……うぁぁっ!!」

 さらに肉壺が、じゅぼっ、じゅぼっと収縮した。

 デボラは虫型の下腹部全体をうねらせ、内壁全体を激しくうねらせているのだ。

 その強烈な快感に、私はあえなく降参し――

 「はぅぅぅっ……!」

 ドクドクと、昆虫の産卵孔へと精液を放出していた。

 同時に、肉壺からはどっぷりと消化液が溢れ出す。

 交尾しながら男性器を溶かしてしまう悪夢の本能が、そこにはあった。

 「う、あぁぁっ……!」

 しかしその熱く粘りのある体液は、今は消化酵素を含んでいない。

 その艶めかしいぬめりが、ペニスにますます快感をもたらした。

 じゅぶっ、じゅぶっ……と、粘液混じりに産卵孔が収縮を繰り返すのだ。

 「あぅ……あ、はぅぅぅっ!」

 快楽に悶える私の顔に、デボラは頭を近付けると――

 その口から、べっとりと溶解液を垂らしてきた。

 たちまち私の顔から胸まで、白濁した溶解液にまみれてしまう。

 「はぅぅぅっ……」

 彼女に捕まった獲物は、こうやって犯されながら溶かされる――

 そう考えただけで、興奮が収まらない。

 じゅぶじゅぶと収縮する産卵孔の中で、ペニスがびくびくと脈動し――

 「はぅぅぅっ……」

 そして、どっぷりと精液を撒き散らした。

 消化液で満ちた産卵孔に、子種を捧げる背徳感――

 「あ、うぁぁっ……! あぁぁっ!!」

 こうして私は、ハエ型デボラの溶解液にまみれながら延々と犯され続けた。

 電極が発動する、その時まで――

  

  

  

  

  

 ***西暦2048年1月11日

  

 この日、私はとうとう待望の報告を得た。

 その時に流していたBGMは、ヘンデルの『メサイア』。

 不朽の名盤と名高いリヒター版だ。

 高まるコーラスともあいまって、まさに福音がもたらされたように思えた――

  

 岐阜にて、ハチ型のデボラが目撃されたという。

 その一報を伝えてきたのは、荻野からのメールだった。

 東白川村の付近で、近隣住民が飛翔するハチの怪物を目撃、デボラと思われる――

 「岐阜か……」

 いよいよ、私は色めき立った。

 ハエ型では望みがなく、手をこまねいていた矢先の吉報。

 ただちに関連機関に連絡を取り、「社会的行動を取るハチ型は非常に危険」と尻を叩く。

 それも決して嘘ではなく、むしろそれこそ彼女達を求めている理由でもあるのだ。

 一刻も早くハチ型デボラが捕獲されることを、私は心より祈ったのだった――

  

 事態が大きく前進した以上、混合薬「ブレンド」も準備を進めなければならない。

 プラナリア型とアメーバ型のどちらかを選ぶ際、悩んだ末に私はプラナリア型を採用した。

 アメーバ型は、他種のDNAを損傷させてしまうという事例が見られたのだ。

 今は「ブレンド」の準備を整えつつ、ハチ型デボラの捕獲を待つとしよう。

 また奈良で捕獲された化蛙の娘6体も、本日移送されてきた。

 餌を与えて様子を見ながら、この興味深いケースも調べなくては。

  

 次に私は、「メコンの食人植物」の隔離房をモニターした。

 以前に与えた少年3人はみな消化されてしまったので、また別の少年を与えている。

 「メコンの食人植物」にも、例の消化酵素制御薬をテストしてみた。

 おかげで少年達はまだ溶かされておらず、五体満足のまま精を搾り取られている。

 この技術も、かなり形になってきたようだ。

 だが、アメーバ型デボラに制御薬を投与しての実験は――

 こちらは、残念ながら失敗に終わってしまった。

  

 「来るな……あぁぁぁっ!!」

 怯える少年に、アメーバ型デボラがのしかかっていく。

 その体は不定形で、まるで巨大なスライムの化物に襲われているかのようだ。

 少年は粘肉の中に飲み込まれ、悶え喘ぐ――

 「う、うぅぅ……」

 しかし手足をばたつかせる動作は、みるみる弱まっていった。

 彼の全身をドロドロの粘肉が包み、ねっとりと愛撫する。

 大きくなったペニスもじゅるじゅると刺激され、あっという間に射精させられていた。

 「はぅ……あぁぁぁ……」

 粘肉に溺れながら、甘い声を漏らす少年。

 その体が、ゆっくりと粘肉に包まれていく。

 アメーバ型デボラは、その粘肉状の体全てが消化能力を持つのだ。

 少年の体がじゅるじゅると溶かされ、貪られ――

 射精を繰り返しながら、じっくりと消化されていき――

 10分の後、残されたのは骨だけとなった。

 全身が消化粘液の塊ともいえるアメーバ型デボラには、制御薬も効果を発揮しなかったらしい。

 彼女を相手に楽しむのは、少々難しいかもしれないな――

  

  

  

 そして、夜。

 アメーバ型デボラなど特殊な例外はあれど、消化への対策は確立された。

 時間制限こそあるものの、消化液を無効化できるのだ。

 これまでの様々な実験で証明され、私もハエ型デボラとの交わりで身をもって確かめた。

 これでいよいよ、あの憧れのデボラ――

 「ウェストミンスターの聖女」と、楽しむことができるのだ。

  

 実験房に、シスターの服に身を包んだデボラが現れる。

 その清楚で柔らかな雰囲気は、人を食らうデボラだとはとても思えない。

 もちろん、制御薬はすでに投与済みだ。

 これまで何度、あの聖女に抱き締めてもらうことを夢見ただろう。

 いったい何回、触手ローブに包まれて精を啜られることを夢想しただろう。

 それを今、実際にこの身で体験できるのだ。

 私は胸を高鳴らせ、実験室へと足を踏み入れた――

  

 「ウェストミンスターの聖女」は私を認めると、ゆっくり静かに近付いてくる。

 優しい笑みを浮かべ、怖がらないよう促すかのようだ。

 紺色のローブが、ゆっくりと開かれていく。

 その中はピンク色の触手がびっしりと備わり、ぐちゅぐちゅとうねっていた――

 「あ、あぁぁぁ……」

 柔らかな笑みを浮かべ、立ち尽くす私を優しく抱き込んでくる聖女。

 その触手ローブの中に、包まれる格好となった――

 そして無数の触手が、私の全身にじゅるじゅると絡み付いてくる。

 ねっとりと消化液を滴らせながら、体中くまなく這い回り、愛撫し尽くすのだ。

 「はぅ……あ、あぁぁぁ……」

 柔らかな抱擁を受けながらの、全身触手責め――

 触手は粘液でぬめり、まるで体中を舐め尽くしているかのようだ。

 その快感は凄まじく、私は聖母に抱かれながら身悶えた。

 「う、あぅぅっ……! あぁぁぁ……!!」

 ペニスにも、にゅるにゅると触手が絡み付いてくる。

 じっくりと亀頭やカリを這い回り、弄ばれているかのようだ。

 そして、亀頭をしゅるりと巻き上げた触手にぐにぐにと揉みしだかれ――

 「あ、あぁぁぁぁっ……!!」

 私は、あっという間に絶頂を迎えていた。

 触手に絡め取られたペニスから、精液がドクドクと溢れ出していく――

 すると、私を抱いている腕に柔らかな力がこもった。

 より深く、より甘く、聖母は私の体を抱き締めてきたのだ。

 触手ローブは完全に全身を覆い込み、まるで聖女の胃袋に包まれてしまったかのよう。

 いや、このローブこそ彼女の消化器官そのものなのだ。

 今の私は、聖女に丸呑みにされた獲物なのである――

  

 「はぅ……あぁぁぁ……」

 ぬめった触手がペニスに殺到し、じっくりと撫で回してきた。

 粘液を滴らせながら、根元から亀頭までをぬるぬると愛撫し――

 甘い快楽刺激を、ひたすらに与え続けてくる。

 「うぁ……あぁぁっ……!!」

 二度三度と絶頂し、聖母に抱かれたまま射精した。

 触手からはヌルヌルの粘液が分泌され、全身が温かくぬめった感覚にまみれている。

 本来ならば、これは消化液。

 こうやって精を搾られながら溶かされ、聖母の養分にされてしまうのだ。

 今は消化能力はなく安全だが、それでもゾクゾクするような背徳感を味わった。

 聖母に抱かれながら甘く消化されるのは、どれほど気持ち良いのだろう。

 命がいくつもあれば、それもぜひ体験してみたいのだが――

  

 「あ、あぅぅぅっ……!!」

 それでも私は、擬似的に消化される気分を味わっていた。

 消化液にまみれながら、触手に全身を蹂躙される――

 それも聖母の柔らかな抱擁を受けながら、嫐り尽くされているのだ。

 私は快楽に悶えながら、何度も何度も精液を捧げた。

 聖母の腕の中で体を弛緩させ、天上の快楽を味わったのである――

 

 

 

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