悪堕ち科学者


  

 ***西暦2045年4月15日

  

 当研究所付属のデボラ収容施設を設立する、という話は順調に進んでいた。

 もちろん、省からの相談役として天下りのポストを用意することも忘れない。

 警備員や事務員として、増加しつつある退役軍人や傷痍軍人の受け入れも約束した。

 根回しの甲斐あり、軍技研ならびに事務次官の後押しをこぎ着け、いよいよ完成したのである。

 さすがに全国のデボラを一括管理できるほどではないが、それでも国内最大規模の収容施設。

 そして、そのトップの椅子に座るのは、もちろん――

  

 「もちろんあなたですよ、所長。

  ここを取り仕切れるのは、あなたをおいて他にいません」

 コーヒーの香りが染みついた所長室で、私は所長にそう告げた。

 彼は柔らかな椅子に腰を深く沈ませたまま、新設備に関する資料を机に置く。

 そして、軽く息を吐きつつ私を見上げた。

 「……正直私は、君がこの椅子に座りたがると思っていたがね」

 「私はまだ若輩、施設を切り盛りする力はありませんよ。

  まだまだ、研究に専念したい身ですしね」

 なお新収容施設は、ここ異星生物研究所の一部門という位置づけになった。

 ゆえに今後、所長の権限において新収容所も統括するということになる。

 「今のこの地位は、君の働きで得たようなものだ。須山君、本当に感謝しているよ……」

 「いえいえ、私は少々お手伝いしただけです」

 満足感を漂わせる所長に対し、私は謙遜を欠かさない。

 こうして私は、所長を通じさらに多くのデボラを動かせるようになった。

 私の目的にも、大きく一歩近付いたのである――

  

 新収容所設立による研究所の大改築で、周囲は色々と変化を見せた。

 だが、私は自分の研究ラボから動くことを好まなかった。

 いつものようにモーツァルトやバッハを流し、新聞や雑誌のデボラ記事に目を通す――

 そして愛読する週刊誌で、着目すべき記事を見つけた。

 「新デボラ、『化蛙』か……国内に、この手のデボラが出現するのは珍しいな」

 日本は人口密集地が多く、どこでも人目に付きやすい。

 外国のように、人目を逃れて犯行を重ねるのは難しい地理的条件なのだ。

 そんな中で、25人もの男を餌食(この事件は生存者も多いが)にできたのは、

 奈良の小規模な山村でこの「化蛙」事件が発生したからだった。

 多くの疎開児童が村にはおり、一方で監督する大人は少ない――

 そんなアンバランスな状況の中で発生した事件だったのだ。

  

 主犯となった「化蛙」とは、カエル型のデボラ。

 体の大部分にカエルの因子が発現、まさにカエル女という外見だったらしい。

 手足の指には水掻きと吸盤、全身は粘膜で覆われ、その舌は5メートルまで伸びるという。

 そんなデボラが、男子児童達を次々に誘拐。

 巣穴の洞窟に連れ込んで拘束し、精液を搾り上げていたのだ。

 なおこのデボラは基本的に交尾を行わず、卵生なのだという。

 ゆえに洞窟に卵を産み付け、少年の陰茎を手や舌で刺激し、卵へと精液を放出させていたのだ。

 捕獲された際にも、洞窟の真ん中には卵塊が鎮座し、少年達の精液でまみれていたようだ。

 複数の少年を同時に嫐り、卵にどっぷりと精液を与える蛙の妖女――

 想像しただけで、下半身が反応してしまう。

 なお駆除部隊が踏み込んだ際、洞窟で18人の少年が保護されている。

 搾られて衰弱死した死体は3体、他に生存が絶望視されている行方不明児童が4人。

 デボラの身柄は軍の拘置施設にあり、近く移送される予定――

 そして、移送先はこの施設。

 私は、こみ上げる笑みを隠せなかった。

  

 そして、他の記事にも目を通していると――

 「国立研究所に潜む狂気のマッドサイエンティスト」と題された記事があった。

 要約すれば、以下の通りだ。

 とある有名な国立デボラ研究所(名前は出ていなかった)に、狂気の若手科学者がいる。

 彼は軍上層部や官僚と癒着して権力を振るい、怪しい研究を推し進めているのだという。

 その権勢には誰も逆らえず、研究所でやりたい放題。

 兵役忌避者はモルモットのように扱われ、狂気の研究のために消費されている――

 以上のように書かれていた。

 「これは――」

 間違いなく、「狂気のマッドサイエンティスト」とは私のこと。

 しかし、癒着だの狂気だのと散々な書かれようだ。

 問題なのは、記事の内容がおおかた正しいことである。

 そして、内部の者しか知り得ない情報が含まれていることだ――

 「さて、困ったな……」

 今は戦時下であり、公的権力による情報統制は平時よりも遥かに強い。

 しかし総務省管轄の新聞は黙らせられても、このような雑誌はなかなか難しいようだ。

 締め付けが強いこの時代、公的機関への糾弾記事とは、ずいぶん気骨溢れた記者らしい。

 なんとしても、手を打たなければなるまい――

  

 「担当記者の名前は……荻野? どこかで……」

 記事の末尾に署名していた記者の名前だが、どこかで私の記憶に残っていた。

 あれは――そう、この週刊誌に連載されている、世界のデボラ事件記事。

 猥雑かつ扇情的な記事だが、それを書いている記者の名も荻野ではなかったか?

 「化蛙」のページに戻って確認したが、やはり間違いない。

 かたや、猥雑で下劣(だが私は毎週愛読している)デボラ記事の記者――

 その一方で、公権力の腐敗に切り込む正義感の強い記者。

 なんとも両者のイメージが一致しにくい。

 ともかく、手を打った方が良い用件だろう。

  

 なお、この記者に情報をリークした人物が誰であるかは明らかだ。

 影原――内容から考えて、その線で間違いないはず。

 退職しても、まだ私への憎悪は捨てていなかったか。

 だが、こちらはどうにでもなるだろう。

 国防に関する機密を漏洩したという罪で、逮捕させることさえ容易い。

 が、そこまでいかなくても、逮捕をちらつかせるだけで折れるだろう。

 ついでに職を失って金に困っているなら、助けてやるのも面白い。

 そういうわけで、影原は簡単に片が付く。

 問題なのは、荻野という記者の方だ。

 ただちに、彼に関する情報を集めなければ――

  

  

  

 この研究機関に収容所を併設したおかげで、デボラは格段に入手しやすくなった。

 また、世界各地で増加の一途を辿るデボラ事情も一役買った。

 以前は研究のため重宝がられた捕獲デボラも、こうも増えれば扱いに困る。

 各国の研究施設では、悲しいかな不要なデボラの処分も始めたようだ。

 そんな中、金を出して引き取るとあらば――

 世界各地から雑多なデボラが集まってくるのも、当然の事情と言えた。

 そして中には、この業界で有名なデボラの姿もあるのだ――

  

 「ベイビーフェイス……それに、ウェストミンスターの聖女か……」

 本日移送された二体のデボラを前に、私は喜びで胸を沸き立たせていた。

 どちらも、私が少年の頃に読んだ事件禄にさえ乗っているほど有名なデボラである。

 特に「ウェストミンスターの聖女」は、その被害規模も危険性も折り紙付きだった。

  

 彼女の出自は、ウェストミンスターの教会に勤めていたシスター。

 イソギンチャクやクラゲの複合型であり、全身に備えた触手が特徴。

 しかし彼女の異質な点は、デボラ化してから2年もの間、正体を悟られなかったことだ。

 そして彼女は、密かに信徒を餌にし続けた。

 発覚して捕獲されるまでに、なんと75人もの男を捕食したのだ。

 聖女は捕食の際、相手の体を骨まで消化し、遺体を全く残さない。

 だからこそ、ここまで膨大な犠牲が出たのである。

 特に、犠牲者に少年が多いこともこの事例の特色だった。

 たまたま誘いやすかったのか、そういう嗜好だったのか――

  

 またベイビーフェイスも、好色で残酷な生態で有名だった。

 その外見は、あどけない少女そのもの。

 しかし搾精孔が備わった強靱な触手を備え、それを用いて獲物を拘束する。

 彼女は非常に独占欲が強いデボラであり、捕らえた獲物が力尽きるまで決して離さない。

 その尻尾に巻き取られてしまえば、精を吸い尽くされるまで解放されないのだ――

 しかも彼女は、猫が獲物をいたぶるようにじわじわと弄ぶこともある。

 幼いがゆえに、高い嗜虐性と残酷性を備えたデボラなのである。

  

 「まずは、『ウェストミンスターの聖女』のお目見えと行こうか……」

 コンソールを操作し、かの有名な聖女を呼び込んだ。

 姿を見せたのは、いかにも清楚な雰囲気のシスター。

 その体には、紺色のローブをまとっているが――

 手足の裾からは、にゅるにゅると無数の触手が顔を出していた。

 特に足元からは、ざわざわとピンク色の触手がうねっている。

 このデボラは、なんとローブの内側に無数の触手を宿しているのだ。

 衣服自体が彼女の体に取り込まれ、完全に結合しているのだという。

 「これは……実に素晴らしい……」

 清楚なシスターの、そのローブの下で妖しくうねる無数の触手。

 その異様な姿は、私を限りなく昂ぶらせた。

 それでは早速、その捕食を見せてもらうとしよう――

  

  

  

 房から呼び出されたのは、やはり年若い兵役忌避者だった。

 明らかに少年――いったい何歳で徴兵を受け、それを拒んだのだろう。

 まあ「ウェストミンスターの聖女」は、年若い少年が好みのようだ。

 むしろ、この方が都合が良いのかもしれない。

  

 「ひぃぃっ……!」

 デボラを目にした少年は、その場にかがみ込んでしまった。

 三角座りで膝に頭をつけ、恐怖のあまり原始的な逃避体勢に入ってしまったようだ。

 そこへ、聖女は静かに歩み寄る。

 柔らかな笑みを浮かべながら、彼女は少年の間近に立った。

 そして身を寄せ、静かに屈み込む――

 その姿は、まるで少年を優しく慰めているかのようだ。

 しかし次の瞬間、聖女は艶めかしい笑みを浮かべた。

 ゆっくりと、ローブを開けると――その中には、びっしりと触手でうねっていた。

 紺のローブの内側は、まるで生物の肉壁。

 内臓のようなピンク色の粘膜に、びっしりと群集する無数の触手。

 触手ローブを左右に開いた聖母のその姿は、まるで消化器官を晒しているかのようだ――

  

 「あ、あぁぁ……」

 恐怖のあまり、少年は硬直して動けない。

 聖女は優しく抱き込むように、彼の体を触手ローブで包み込む。

 その様は、捕食者が獲物を丸呑みにしているかのようだった。

 消化器官で、ゆっくりと獲物の体を飲み込んでいく――

 「あ、あぁぁぁ〜〜!!」

 彼の体がローブに包まれると同時に、少年の叫びが響き渡った。

 それは苦痛ではなく、熱を帯びた甘いものだ。

 外からでは、ローブに抱き込まれて何も見えない。

 しかし、スキャンで中を確認すると――

 少年の体は、何百本もの触手に絡め取られていた。

 全身を触手が這い回り、くまなく撫で尽くす。

 当然ながらペニスも、複数の触手で絡みつかれていた。

 じゅるじゅると触手が肉棒を刺激し、激しく嫐りたて――

 「はぅ、あぅぅっ……!」

 そして、あっという間に射精へと導いた。

 放出された精液は触手から吸収され、聖母の養分となる。

 「あぅぅっ……う、あぁぁ……!」

 しかし少年の射精など関係ないかのように、触手は全身を嫐り続けた。

 彼の体を包み込む触手ローブは、さながら胃袋のようだ。

 獲物をじっくり弄びながら、聖女は慈しみとも取れるような笑みを浮かべていた――

 「う、あぁぁぁぁ……」

 少年は快楽に呻きながら、何度も何度も射精を繰り返す。

 全身を触手で嫐り尽くされ、蹂躙されながら――

 おそらく彼は、昇天しそうなほどの快楽を味わっているのだろう。

 これが、「ウェストミンスターの聖女」の甘美なる抱擁。

 私も出来るならば、聖女の胸に飛び込んでしまいたい――

  

 「ん? これは……」

 不意に私は、少年の体に異変が起きていることに気付いた。

 その肉体がどろどろと液状化し、形が崩れ始めている――

 「まさか……消化されているのか?」

 外からは、何も分からないが――

 スキャンで見る限り、少年の体は熱したロウのようにとろけていく。

 間違いない、聖女は少年の精を搾りながら、肉体まで貪っているのだ。

 触手から滴らせた消化液で、彼の体はみるみる溶かされ――

 「ぅ……ぁぁ……」

 麻酔効果で苦痛を感じていないらしいが、少年のうめき声も徐々に小さくなる。

 触手で精液を搾られながら溶かされるのは、どのような心地なのだろうか。

 もはや彼の体表組織は、消化液でとろけてドロドロ。

 これではもう助かるはずもなく、私は座視しているより他にない。

 最後まで、「ウェストミンスターの聖女」の捕食を観察するとしよう――

  

 それから10分かけて、聖女は少年の体を消化した。

 肉は溶かして啜り尽くし、骨まで触手で貪り食らう。

 後に残されたのは、骨盤や頭骨などの溶け残りがいくつか。

 聖女の餌にされた少年には、悪いことをしてしまった――

 いや、最期まで極上の快楽が味わえたのだから、決して悪くはないだろう。

 それにしても、あっという間に少年1人を食らってしまうとは。

 「ウェストミンスターの聖女」、またとんでもないデボラを招いたものだ――

 そう思いつつ、私は性的高揚を隠せなかった。

 なんとか安全を確保し、彼女の餌食にしてもらうのが楽しみでならない。

 それより前に、この一件の後片付けをしなければ――

  

 幸い、兵役忌避者の体はほとんど残っていなかった。

 「ウェストミンスターの聖女」に溶かされ、大半は貪り尽くされたのだ。

 残った骨のいくつかは、焼却炉で処分する。

 他にも所持品を始末し記録を改竄、彼の存在した形跡を抹消する――

 不本意ながら、この作業には懐柔した警備員である仲原の手を借りざるを得なかった。

 彼は私に服従し、疑問を一つも挟むことなく全ての作業をやってくれた。

 その礼――いや、ご褒美に、またデボラを与えてやらねばなるまい。

 それに関して、私は特に不満でも不快でもなかった。

 デボラに深い愛着はあったが、それは所有欲のようなものではないのだ。

 より多くの人間が、デボラの素晴らしさを知るべきとさえ思っていた。

 ゆえに仲原には、スキュラ(触手デボラUM057をこう呼んでいた)との交わりを愉しんでもらおう。

 きっと彼も、大いに悦んでくれるだろう――

  

  

  

 そして、その日の夜。

 周囲への心配りを忘れない私だが、自分の楽しみを決して疎かにしたりはしない。

 今日は「ウェストミンスターの聖女」の一件の後片付けで、残る一体の新顔――

 ベイビーフェイスの捕食を観察できなかったのだ。

 今回は観察なしで、私が体験してみても良いだろう。

 ベイビーフェイスは危険な個体ではあるが、それは独占欲の強い生態によるもの。

 毒や消化液など、危険な特質を持っているわけではない。

 30分で自動発動する電極があれば、問題はないはずだ。

  

 私は、強化ガラス越しのベイビーフェイスと対面した。

 一見した限りは、可愛らしいがいかにも生意気な様子の少女。

 にやにやと笑みを浮かべ、どこかこちらを小馬鹿にしている様子だ。

 しかしそのお尻には、大蛇のように長く太い尻尾が備わっていた。

 あれで巻き取られれば、大の大人でも逃げられないのがよく分かる。

 しかしベイビーフェイスは、尻尾で男を締め上げて楽しむタイプではない。

 その尻尾の先端に備わった搾精腔――あれで、じわじわと精液を搾りたてるのだ。

  

 「しかし……飴を与えると大人しい、というのは本当だな」

 報告通り、ベイビーフェイスには棒付きの飴を与えてある。

 今も、れろれろと飴をしゃぶりたてているのだ。

 しかし彼女は、正面に立つ私の姿を見据えると――

 飴を口から離し、私に見せつけるようにこちらを向けた。

 その飴に、彼女の尻尾が伸び――搾精腔が、まるで口のように飴を咥え込む。

 じゅっぽじゅっぽと、その尻尾が怪しく収縮した。

 尻尾の穴を巧みに用い、飴を器用にしゃぶりたてているのだ。

 私は思わず、その光景に目を奪われた――

 そして5秒ほどして、彼女の手元から尻尾が離れていく。

 飴は完全に溶かされ、棒だけが残っていた。

 いったいどんな動きをすれば、あんな短い時間で飴をしゃぶり溶かせるのか。

 私の股間はたちまち反応し、ズボンを大きく膨らませてしまった。

 ベイビーフェイスはニヤニヤと笑い、私を誘う――

 そんな様子を前にしては、我慢できるはずもなかった。

 私は足早に、実験房へと入っていく。

 そして、ベイビーフェイスに近付いた瞬間――

 「う……あぁっ!」

 大蛇のような尻尾が、たちまち私の体を捕らえていた。

 足から肩までぐるぐると巻き上げ、体の自由を奪ってくる。

 みっしりとした圧迫感で、これは逃れられそうもない――

 なすすべもなく彼女に捕らえられた犠牲者達は、どんな気分だったのだろうか。

 みな動きを封じられたまま精を搾り取られ、嫐り殺しにされたのだ。

 私も同じようにされると想像しただけで、絶頂しそうになる――

  

 「う、ぐっ……」

 尻尾に巻き取られ、軽く持ち上げられる私――

 その顔を、ベイビーフェイスが覗き込んできた。

 舌を伸ばせば届くほどの距離、彼女がさっきまで舐めていた飴の甘い匂いがする。

 彼女はくすくす笑い、私を見下しているかのようだ。

 尻尾の先端に備わっている搾精腔が、ゆっくりと股間に迫り――

 「あ、うぁぁっ……!」

 そして、ペニスが搾精腔へと咥え込まれた。

 中は熱く、みっしりと柔肉が詰まっているのが感じられる。

 さらに粘つきのある体液が、ぬるぬると絡み付いてきた。

 これが、ベイビーフェイスの搾精腔――

 格別の気持ち良さに、尻尾のとぐろの中で脱力してしまった。

 すると、ベイビーフェイスはにんまりと笑い――

 「お、おぉ……あぁぁぁっ!!」

 じゅぶじゅぶ、ぐちゅぐちゅと尻尾全体が収縮する。

 その内壁のうねりは、まるでペニスを扱き上げているような刺激を生み出した。

 同時に内壁全体がぐねぐねとうねり、艶めかしい蠕動刺激を与えてくる。

 内部がじゅぶじゅぶと波打ち、強烈な快楽にさらされた――

 「あ、あぁぁぁぁっ……!!」

 これが、飴をほんの数秒で舐め溶かした時の動き。

 その気持ち良さに、少しの時間さえ耐えられるはずもなく――

 「だ、だめだ……もう……!」

 そのまま、ドクドクと射精してしまった。

 搾精腔の内壁がじゅぼじゅぼと収縮し、精液を吸い上げていく――

 「あ、あぁ……! あぅぅっ!!」

 それはまるで、射精中のペニスに与えられる性的拷問。

 ベイビーフェイスはくすくす笑いながら、悶える私の顔を覗き込んでくる。

 意図的に刺激を強め、私を弄んでいるのだ。

 これは、デボラによる男性器への快楽虐待だ――

 「あ、あぅぅっ……!!」

 亀頭を弄ぶように、激しい蠕動刺激が集中する。

 先端部がぐにぐにと揉みしだかれ、ねじられているかのようだ――

 「うぁ……あぁぁっ……!」

 そして私は、あえなく二度目の射精に導かれていた。

 精液がじゅぶじゅぶと尻尾に飲み干され、餌にされていく――

 その際の、肉壁をうねらせて精を吸い上げる動作がまた気持ち良い。

 奥にじゅるじゅると吸い付かれながら、揉みしだかれるような刺激だ――

 「はぅ……う、あぁぁっ……!」

 悶える私に顔を寄せ、ベイビーフェイスはにんまりと笑う。

 とぐろの中でじわじわと精を搾り出され、弱らせていくかのような気分。

 こうやって、ベイビーフェイスは何人もの男を搾り殺したのだ。

 くすくす笑い、衰弱していく過程を楽しみながら――

 「あ、はぅぅぅっ……!」

 さらに大量の精液が放出され、尻尾の中に搾り出されていく。

 私は強烈な快感に悶え、嫐り者にされていた。

 そのまま、何度も何度も射精させられ――

 じっくりと弄び、いたぶるように搾り取られ――

  

 そして30分が過ぎ、ベイビーフェイスは意識を失う。

 尻尾の拘束が緩み、私は床に投げ出された。

 たった30分で足腰も立たないほど吸われた私は、情けなく床を這う。

 私は満足感を抱きつつも、搾精行為が途中で終わったことに物足りなさを感じ始めていた。

 本当なら、この魅惑的なデボラに生命そのものを捧げても良かったが――

 まだ、私にはやらなければならないことがあるのだ。

 その日まで、この命は大切にしなければならない。

  

  

  

  

  

 ***西暦2045年8月19日

  

 ラボに入ってまず、BGMを選ぶのが常。

 私はバッハの「ゴルトベルク変奏曲」のCDを再生した。

 グレン・グールドの55年版、モナリザと並ぶ人類最高峰の芸術である。

 また一昔前の映画で人気を博した、猟奇殺人鬼の精神科医が愛聴していたという設定もあった。

 その深遠なメロディは、映画でも陰惨なシーンと相まって効果的に用いられている。

 (惜しむらくは、作中で用いられていたのはグレン・グールドの演奏ではないということだが)

 かくいう私も人の道を踏み外した博士である、曲との相性は悪くないはずだ。

  

 「ハエ型のデボラを納入か……ハチ型なら嬉しかったのだが」

 移送報告書に目を通し、私は溜息を吐いた。

 目的のためには、真社会生物のハチ型がぜひ欲しい。

 アリ型でも良かったが、どちらにしろ目的のデボラは転がっていないようだ。

 注射によりDNAを取り込ませ、発現させてみるか――

 いや、自然条件で生まれたデボラの方が望ましい。

 「まあ、ハエでも試す価値はある……やってみるか」

 もしかしたら、良好な結果が得られるかもしれない。

 この件は、ハエ型デボラを現在の第一候補としよう。

  

 「さて……例の薬の方は、まだまだ課題点が多いな」

 動物実験のデータを参照し、私は溜息を吐いた。

 デボラのフェロモン成分を含む、新型催淫剤の一種。

 さらに、あのカニ型デボラの泡から抽出した成分をも用いている。

 ただしこれは、デボラに用いるための薬品ではなかった。

 私がこれから先に進むためには、どうしても必要になってくるものだ。

 もっと実験を重ね、完成度を高めねばなるまい。

  

 そして今日は、ラボを出なければならない用がある。

 私は仲原に車を出してもらい、影原の家へと向かった。

 厄介者の1人を、ここで片付けておこうということだ。

  

  

  

 影原の住居は、驚くほどに貧相だった。

 外も中も汚く、生活ゴミがあちこちに散乱している。

 研究所を辞めた後、食うにも困り、生活が荒れているのがうかがえた。

 記者に情報を売ったのは、私への憎悪のみならず、報酬欲しさも大きかったのだろう。

 なんとなく、彼が惨めに思えてきた。

  

 最初、私の姿を見た影原は敵意を剥き出しにした。

 そこで、記者への機密情報漏洩は重罪になる、と例の週刊誌を突きつけた。

 ことが軍事機密だけに、刑事裁判ではなく軍事裁判になる可能性が高い――そう告げた。

 影原は目に見えて青くなり、薄皮一枚の虚勢を保つだけで精一杯となった。

 そこで私は、この一件を大事にする気などないと告げた。

 目に見えて安堵した影原だが、それでも私への敵意は意地で保っている。

 そこで私は、かつての同僚に優しく語りかけた。

 私と影原は、あくまで理想に邁進する科学者同士であったこと。

 しかし両者の道は分かれてしまい、対立する結果になってしまったこと。

 (だが、対立という言葉は正確でない。実際、私は影原など眼中になかった)

 そして不毛な争いの結果、影原が研究所から放り出されてしまったこと。

 私はそれに罪悪感を感じ、それゆえにここに来たこと。

 「つまりだ、須山博士。君はここに謝罪に来たというのか?」

 「もちろん、その通りです。

  あなたをこんな境遇に追い込んでしまったのは、私の本意ではなかった」

 そして私は、影原に金銭的援助を申し出た。

 十分な衣食住の確保および、影原のプライドが傷付かない程度の職の斡旋。

 異星生物研究所に、新たな椅子を与えることを約束したのだ。

 仕方なく謝罪を受ける、という態度を演じつつ、彼は私の申し出に飛びついた。

 こうして影原は、私の飼い犬同然となったのである。

  

 それから何度か、影原のところに顔を出した。

 最初は虚勢を張っていたものの、会う度に彼の態度は軟化した。

 4回目には、「僕は須山博士を誤解していた」と言い出した。

 頻繁に彼の元に足を運んでいることに、感銘を覚えたらしい。

 8回目には、「須山博士は僕の恩人だ」と涙を流した。

 そういえば、俗流心理学の本で読んだことがある。

 悪い関係だった相手ほど、関係が改善された際は結びつきが強くなるのだという。

 あと5回ほども通えば、私の銅像でも建ててくれたのかもしれない。

 ともかくこれで、影原が面倒を引き起こす可能性は完全に消え去った。

 残る障害は、例の記者だけだ――

  

  

  

 そして、夜の実験室。

 頻繁に居残っていても、もはや不審がる者はいない。

 また仲原に働きかけ、警備を緩めてもらうこともできるのだ。

 デリケートな作業をしているので、足音や気配が気に掛かる――

 そう伝えれば、巡回の数は大いに減った。

 向こうとしても、仕事が減るのは大歓迎らしい。

 そんな風に、今の私の権限なら大抵のことは許されるのだ。

  

 今夜の相手は、デボラFR032――いや、メリュジーヌ。

 今では彼女を、そう呼んでいた。

 最初は蛇の因子が舌に発現していただけだったが、今は下半身全体が大蛇と化している。

 そしてコウモリのDNAを注射した影響で、背には大きな羽根が生えていた。

 その外見は、フランスの伝承にある妖女メリュジーヌ。

 彼女こそ、私が作り出した最も愛するデボラの1人だ――

  

 メリュジーヌの舌技は、どれだけ味わっても飽きなかった。

 思えば、この研究所で一番最初に性的接触を行ったデボラなのだ。

 ペニスを露出させると、メリュジーヌは笑みを浮かべてかがみ込む。

 そして複数の舌をじゅるじゅると伸ばし、ペニスをじっくり巻き取ってくる。

 奉仕させている、という感覚など微塵もない。

 優位なのは向こうの方であり、私は彼女に己の最も大切なところを捧げているのだ。

 私は彼女に、そして人類はデボラに従属すべきなのである――

  

 「あぁぁ……き、気持ちいい……」

 螺旋状に絡み付き、じゅるじゅると這い回ってくる舌。

 時にはペニス全体がぎゅっと締め付けられ、腰が砕けそうな快感に晒される。

 この快感に、なんとか耐えていると――ついに、「あれ」をしてもらえるのだ。

 「あ……あぁぁぁぁっ……!」

 尿道口と裏筋を、チロチロと舌先で舐め擦る彼女の得意技。

 サオの部分は舌でしっかりと巻き取られ、スローモーに揉みしだかれ――

 そして敏感な尿道と裏筋が、高速の舌先責めに晒されるのだ。

 その快感は強烈で、これまでの実験台はいずれも10秒足らずで射精させられた。

 もちろん、私とて例外ではない――

 「あ、はぅぅぅ……」

 これを受けると、もう私は耐えることをやめる。

 どうせ、どれだけ我慢しようとも無駄なことだ。

 私は体の力を抜き、メリュジーヌの甘美な舌遣いに身を委ね――

 「出る……あ、あぁぁっ……!」

 そのまま、一気に射精へと導いてもらった。

 そして射精した後は、さらなる天国が待っている。

 メリュジーヌの舌は、精液の雫一滴まで逃しはしない。

 複数の舌が亀頭に殺到し、カリから上が激しく舐め尽くされる――

 「あぅぅぅぅ〜〜っ!!」

 私は声を上げ、強烈な快感に悶えた。

 尿道口と裏筋を素早く舐め擦る動作は、延々と続けられる。

 さらに別の舌先がべろべろと亀頭に這い、カリ首を何度も何度もなぞり――

 まるで、亀頭が激しくうねる舌の渦に巻き込まれているかのようだ。

 「あ……あぁぁぁ〜〜!!」

 二度目の射精も、あっという間だった。

 メリュジーヌの舌に二連続で精を捧げ、私はぐったりと床に崩れる――

  

 すると、不意にメリュジーヌが肉棒から舌を離した。

 妙だ、普段ならこのまま舌責めを続行するはずなのに。

 二度や三度の射精ではペニスを離さないのに、なぜ――

 「メリュジーヌ……何を……」

 メリュジーヌは艶めかしい笑みを浮かべ、私にしがみついてきた。

 蛇体が私の体をゆっくりと巻き上げ、柔らかに抱き込んでくる。

 こんな反応は、これまで初めてだった。

 彼女の下腹部に、私のモノが密着し――

 にゅぐっ……と、その膣内にペニスが咥え込まれてしまった。

 「あ、あぁぁぁぁ……」

 甘く優しい感触が、私のモノを包む。

 メリュジーヌの膣内は熱く、そして柔らかかった。

 優しく包み込まれるような快感は、まるで甘い抱擁のよう。

 彼女と交わったのはこれが初めてだったが、こんな感触だったとは――

 私はメリュジーヌに抱かれ、温かな膣内のとろけるような密着感に身を任せた。

 「はぅぅぅ……」

 メリュジーヌは顔を近付け、ねっとりとキスを交わしてくる。

 舌を絡ませながら、私は甘美なる交わりに酔いしれた。

 その肉壺の甘いうねりと、優しく包まれる快感を存分に味わい――

 「で、出る……!」

 そして、メリュジーヌの膣内にたっぷりと精を放ったのである。

 激しく搾り取られるのではなく、甘い快楽の中で果てるという放出感――

 「あぁぁぁ……」

 こうして私は、メリュジーヌとの甘い交わりを満喫した。

 天にも昇るような快感と、胸を満たす幸福感。

 私は何度も何度も彼女の肉壺に精液を捧げ、従属を示したのである――

 究極の悦びが、そこにはあった。

  

  

  

  

  

 ***西暦2045年9月10日

  

 ずっと懸念事項になっていた記者――

 荻野に対する身辺情報も、だいたい集まった。

 年齢は24、若さと情熱に満ちた社会派記者。

 高い成績で有名国立大学の人文社会学部に入学、兵役を免除されている。

 そして大学卒業後は一流新聞社に入るものの、1年に満たず退職。

 そこで彼が手掛けた記事は、軍官僚の不正に関するもので、検閲の対象になり世には出ていない。

 退職の理由も、どうやら軍の圧力があったようだ。

 それから彼は三流の出版社に入り、週刊誌記者となった。

 自由を手にした彼は、軍部と癒着し権勢を振るう悪徳研究者をターゲットとした――

 だいたい、そういう来歴だ。

 彼の手掛けた記事や掴んだネタを見る限り、紛れもなく優秀な記者である。

 社会正義に溢れ、職を失ってもなお不正への糾弾をやめない――

 それが、荻野の人物像であった。

  

 しかし一点だけ、荻野には実に奇妙なところがある。

 明らかな社会派記者であるはずの彼が、その一方で猥雑なデボラ記事を書き続けているのだ。

 例の週刊誌にデボラ記事を寄稿するのは、大学在籍時から始まっている。

 当時からデボラ事件を独自取材し、記事を寄稿していたのだ。

 新聞社を首になった後に現在の雑誌社に再就職したのも、その繋がりがあってのことだろう。

 社会派記者として活躍しつつ、下品なデボラ記事を書き続けるアンバランスさ――

 これはもはや、間違いない。

 彼は、私と同類の人間だ。

  

  

  

 そして深夜、研究所の駐車場――

 そこに、私は荻野記者を呼び出していた。

 彼はこちらが告げた通りの時間に現れ、私に対し不審の目を向けている。

 非常に落ち着かない様子で、しきりに視線を周囲へと這わせていた。

 どうやら、私に仲間がいることを警戒しているのだろう。

 このまま車のトランクにでも詰められて、海に捨てられるとでも思っているのか――

  

 「心配しなくても、罠なんかない。

  まさか、危害を加えられてるとでも思っているのか……?」

 「……分かるものか。お前が誰だかも、おおかた検討はついているぞ」

 不安を隠せない様子ながら、彼は私を威嚇する。

 「俺は、暴力なんか怖くない。

  殺すと脅されたことも、一度や二度じゃないんだ」

 「殺すなんてとんでもない、私はいつも君の記事を楽しみに読んでいるんだ」

 実際のところ本音だったが、荻野が信じるはずもなかった。

 「暴力じゃないなら、金か。俺を買収しようとしたって――」

 「分かっているさ。君は金で動くタイプじゃない」

 この手の社会派を、金で動かそうとするなど愚策。

 そこで、私が用意した餌は――

 「例の動画に、興味は持ってくれたかな……?」

 まず先週、私は彼のアドレスに匿名で動画を送っていた。

 送り主は「情報提供者」、タイトルは「スクープ」。

 本文は無しで添付動画のみの不審なメール。

 普通なら再生もせずゴミ箱行きだろうが、彼は記者なのだ。

 情報提供者を名乗る者のメールとなれば、決して無視はできない。

 そして、彼に送った動画の内容というのは――

  

 「あれは間違いなく、『クルスクの女王蜘蛛』じゃないか……!

  あんなもの、なんで……」

 荻野は、周囲を警戒しながらも声を荒げる。

 そう――私が彼に送ったのは、「クルスクの女王蜘蛛」の捕食動画だった。

 あの妖艶な蜘蛛型デボラが、兵役忌避者を粘糸で巻き上げ、そして精液を搾る一部始終――

 その動画を、荻野に提供したのである。

 なおその動画が再生されるたび、私の端末でモニターされるようにしておいた。

 彼は毎日仕事が終わって帰宅してから、何度も何度もその動画を再生していた。

 何をしていたかは、もはや明白だ。

  

 そして昨日、私は彼の元にまたメールを送った。

 前とは別の「クルスクの女王蜘蛛」の捕食動画。

 それに、「君も同じ目に遭いたくないか?」というメッセージを――

 そのメールで指定した時刻と場所に、荻野はやって来たというわけだ。

  

 「頭の良い君に、つまらない駆け引きは不要だろう。

  私は、君を買収しようとしている。ただし、用意したのは金じゃない。

  私に関する糾弾記事を引き下げる、その条件と引き替えに――」

 私は、そこで少しばかり言葉を切る。

 ごくり……と、荻野は唾を飲み込んだ。

 「君が最も体験したかったことを実現できる、というわけだ。

  デボラ事件を追うだけでは、満足できないだろう?

  デボラの餌食になった者が、どんな気分だったか……ぜひ体験したいだろう?」

 「ほ、本当にそれが……お前に……」

 「私の権限がどれほどか、君はよく知っているはずじゃないか。

  さあ、こちらに来たまえ。研究所に招待しよう……」

 こうして私は、荻野を研究所へと招き入れたのだった――

  

 受付には、眠そうな顔の警備員2名がいた。

 私(とその後ろの荻野)の姿を認め、彼らは慌てて姿勢を正す。

 「これは須山博士。こんな夜更けに、お仕事ですか……?」

 「お勤め、どうも。彼は懇意にしている記者だが、ちょっと取材に応じたいんだ。

  昼間だと、色々忙しくてね……」

 「分かりました、どうぞ中へ」

 不安そうな面持ちの荻野も、フリーパスの待遇に驚いたようだ。

 「あと、この来客は記録に残さないでほしい。

  彼1人を優遇したことがバレたら、ほら……他の記者達の立場がね……分かるかな?」

 「ははは、大変ですね」

 警備員は笑顔を浮かべ、記録を残さず荻野を中へと通した。

  

 「こんな堂々と大胆に正面から……露見するのが怖くないのか?」

 研究所のそう広くもないロビーを進みながら、荻野は眉を寄せる。

 「露見しない。仮にしたところで、内部ならば押さえ込める」

 彼を案内し廊下を進みながら、私は言った。

 「正直なところ、外部に流れたとしても情報は統制できるんだ。

  知っての通り、軍部には知人も多いからね……」

 「軍隊ほど、コネが通じる役所はない」

 吐き捨てるように、荻野は言った。

 「そうやって、あんたは上手くやってきたわけだ」

 「ああ、こうやって私は上手くやってきた。

  ほんの少しの不安要素でも、万全を尽くして対処するのが成功の秘訣だ」

 こうして私は、荻野を研究室へと招き入れる。

 不安そうな面持ちで部屋を見回す彼を尻目に、私はコンソールを操作した。

 すると隔離房から「クルスクの女王蜘蛛」が呼び出され、実験房へと姿を見せる。

 荻野はその妖艶な姿をガラス越しに、惚けた表情で見据えた。

 まるで私が、始めて生のデボラを見た時のような顔で――

  

 「答えをまだ聞いていないな……記事を撤回するのかどうなのか。

  もし撤回してもらえるならば、私と君の間に友情が成立する。

  友情の証として、君の最も渇望している体験をただちに提供する」

 「…………」

 彼は無言のまま、「クルスクの女王蜘蛛」を魅入られたように眺めていた。

 そしてデボラの方も、彼を妖艶な笑みで誘っているように見える。

 「もし、記事を撤回しないならば……このまま帰りたまえ。

  ただし帰り道で君は憲兵に職務質問を受け、機密漏洩の容疑で逮捕される。

  君は不快な体験をし、私は後味の悪い思いをする。結果的に、誰も得をしない」

 「…………」

 「また君が今ポケットに忍ばせているレコーダーも、拘置の手続き中に紛失してしまう。

  君の部屋も煙草の不始末でボヤに見舞われ、HDDもメモも全て駄目になる予定だ。

  その他いかなる書類やデータ、書き置きも、法的証拠にはなり得ない」

 ここまで言うのは、無粋かもしれない。

 もはや彼の選択は、すでに決まっているのだから。

 「……記事を破棄する。あんたの一件はもう追わない」

 荻野は、声を絞り出すように言った。

 頭の中では、色々と葛藤があっただろう。

 しかしその心は、約束の場所に現れた時点ですでに決まっていたはずだ――

 「ありがとう、君の決断に感謝する。これで、君と私は友達だ。

  新しい友達には、感謝の意を示さなければならない……」

 この言葉は、決して口先だけではなかった。

 私は荻野に対し、親近感を抱いていたことは否定できない。

  

 「さあ、そこの扉から実験房に入りたまえ。

  三重、四重の安全措置により、君の身に決して危険は及ばない」

 「あ、あぁ……」

 大きく唾を飲み込み、荻野は指示されたドアを通り抜ける。

 そして、実験房に立ち入った次の瞬間――

 「あ……わぁっ!」

 「クルスクの女王蜘蛛」は身を躍らせ、荻野へと飛びついた。

 そして腹部の糸つぼを向け、粘糸をどっぷりと彼の体に吐きかける。

 「ひぃっ……!」

 たちまち白い粘糸にまみれていく荻野の体。

 「クルスクの女王蜘蛛」は彼の体を、じっくりと粘糸で巻き上げていく――

 「あ、あぁぁぁ……!」

 虫のように繭にされながら、荻野は泣き笑いのような表情を浮かべていた。

 恐怖は隠せないながらも、彼の念願が叶った瞬間なのである。

 そして、ぐるぐる巻きにされた荻野に「クルスクの女王蜘蛛」がのしかかった。

 その糸つぼを、荻野の股間へと押しつけ――

  

 「あ、あぁぁぁ〜〜!!」

 あっという間に、女王蜘蛛は彼を犯してしまった。

 糸つぼの中にペニスを咥え込み、激しく下腹をうねらせて責めたてる

 モニターには、じゅぶじゅぶと収縮する糸つぼの動きが映し出されていた。

 「ひぁぁぁぁ〜〜!!」

 ひときわ甲高い悲鳴を上げた荻野は、繭の中で体をぐねぐねとくねらせ――

 そして、大量の精液を発射していた。

 女王蜘蛛の糸つぼの中に、どっぷりと精液を注ぎ込んでいく――

 彼の顔は歓喜に歪み、涙と鼻水、唾液が垂れ流しとなっていた。

 それを私は、醜いとは思わない。

 人間が得られる究極の快楽を味わっているのだから、無理もあるまい――

  

 それから「クルスクの女王蜘蛛」は、延々と荻野を犯し続けた。

 そして30分後、電極が作動し女王蜘蛛の捕食は中断される。

 繭の中で、ぐったりとした様子の荻野――

 ここからが、歓待を兼ねたこの実験の重要なところだ。

 「さて、上手くいくか……」

 30分のタイマーと連動して、実験房内のスプリンクラーが作動する。

 そこから降り注いだのは、私が独自に開発した特殊な溶剤。

 蜘蛛デボラの放つ有機粘糸を溶かし、分解する薬品なのだ。

 他にも、綿や麻などの植物繊維は溶けてしまうが――

 まあ、人体にほとんど影響はないので良しとしよう。

  

 このテストは、初めてにしては驚くほど上手くいった。

 荻野の体をくるんでいる粘糸が解け、みるみる液状に分解されていく。

 彼が着ている衣服の一部も溶け出しているが、まあ構うまい。

 「う……うぅぅ……」

 ふらつく足で、荻野は立ち上がった。

 溶剤の実験は見事に成功、事後の蜘蛛糸を簡単に処理できる目処は付いた。

 これで私も、心置きなく「クルスクの女王蜘蛛」との交わりを楽しむことができる――

  

 荻野は改めて、記事の撤回を約束した。

 さらに、私の「友達としての頼み」も快く引き受けてくれた。

 彼がこれまで掴んできた、様々な政治家や軍上層部のスキャンダルの提供だ。

 さらに荻野は、今後の私の頼みも引き受けてくれるという。

 その際には、友達として彼を「歓待」することを私は約束したのだった。

  

  

  

 そして、荻野が帰った後――

 私自身も、夜のお楽しみを行うことにした。

 今夜の相手は、お待ちかねだった「クルスクの女王蜘蛛」。

 晴れて実験が成功し、1人で事後処理を行うことも可能になったのだ。

 もう少し先延ばしにして、処理方法を洗練させようとも考えたが――

 ずっとお預けになっていた女王蜘蛛との交わりを、これ以上伸ばすのは耐えられない。

  

 実験房に「クルスクの女王蜘蛛」を呼び寄せ、その中へと入る。

 女王蜘蛛は即座に獲物の私を見定め、腹部先端の出糸突起を向けた。

 そこから、粘糸がどっぷりと吐きかけられる――

 「う、わぁぁっ……!!」

 私の体はネバネバの粘糸にまみれ、絡め取られていった。

 さらに女王蜘蛛は、私の体を巧みに粘糸で巻き上げ繭にしていく。

 ネバネバの粘糸に全身を包まれる艶めかしい感触――

 その際の快感は、それだけでも果ててしまいそうなほどだった。

 そして、虫ケラのようにくるみ込まれた私の上に――

 妖艶な笑みを浮かべた女王蜘蛛が、ずっしりとのしかかってくる。

 圧倒的な捕食者を前にした、惨めなほどの無力感。

 それとは裏腹に、勃起したペニスはびくびくと興奮で打ち震えていた。

  

 「あ、あぁぁぁ……」

 女王蜘蛛は、蜘蛛そのものの下腹部を私の股間へと近付けていく。

 その先端の糸つぼからは、噴出したばかりの粘糸がだらりと垂れ落ちていた。

 くちゅっ、くちゅっ……と、出糸突起が妖しく収縮する。

 糸を吐き出す口が、亀頭へと密着し――

 ぐじゅっ……と、その中に飲み込まれてしまった。

 「うぁ……あぁぁっ!」

 ペニスから伝わる艶めかしい感触に、私は思わず声を上げてしまう。

 糸つぼの中は、粘糸を織り込み、噴出するため複雑な構造になっていた。

 中がぎゅうぎゅうと収縮し、何層にも備わったヒダが亀頭を擦る。

 肉壁がぐねぐねと波打ち、中をぐちゅぐちゅ攪拌してくる――

 それは糸つぼ内の粘糸を掻き混ぜ、紡ぐための動作だった。

 「お、おぉぉ……!」

 内部にはネバネバの粘糸が詰まっており、ペニスが一緒に攪拌された。

 亀頭が粘糸の渦に巻き込まれ、無数のヒダで揉みくちゃにされる。

 まるで、熱く柔らかなミキサーに男性器が巻き込まれているかのようだ。

 その強烈な快感の前では、僅かな時間さえも耐えられず――

 「あ、あぁぁぁっ……!」

 ぐちゅぐちゅとうねる快楽ミキサーの中に、思いっきり精液を放っていた。

 私の射精を察知し、女王蜘蛛は妖艶に笑いかける。

 射精中のペニスを巻き込みながら、糸つぼはなおも攪拌動作を繰り返した。

 じゅるじゅるとうねり、ヒダや粘糸がペニスを巻き込むように絡み続ける――

  

 「う、ぁぁぁっ……!!」

 私は繭の中で身をよじり、強烈な快感に悶えた。

 糸つぼの艶めかしい攪拌で、ペニスがぐちゅぐちゅに搾られているのだ。

 その狂おしい快感に、腰ががくがくと震えてしまい――

 「あぅぅ……あ、あぁぁっ!!」

 あっという間に、二度目の射精に追い込まれていた。

 糸つぼの中に、ドクドクと精液が発射されていく――

 「うぐ……はぅ、あぁぁっ!!」

 連続で精液を搾り上げられ、私は繭の中で体をびくびくと震わせた。

 女王蜘蛛は艶めかしく笑い、ますます激しく糸つぼの中で攪拌動作を繰り返す。

 粘糸の渦に巻き込まれ、ペニスが肉壁やヒダで揉みくちゃにされ――

 「あ、あぁぁっ……!」

 ほとんど間を置かず、3度目の射精。

 凄まじいペースで精液が搾られ、女王蜘蛛に吸われていった。

 私は繭の中で身悶えながら、情けなく射精を繰り返すしかない。

 今私は、まさに蜘蛛の餌食にされているのだ。

 粘糸で動きを封じられ、無慈悲に精液を搾り取られている――

 「うぅ……はぅぅぅ……」

 「クルスクの女王蜘蛛」に搾られた犠牲者達は、こんな快感を味わったのか。

 こんなに気持ち良い思いをしながら、力尽きるまで搾ってもらったのか――

 あまりの快楽に、このまま搾り殺されても本望だとさえ思えた。

  

 そのまま、30分の規定時間が経過し――

 電極から電流が流れ、女王蜘蛛は意識を失った。

 こうして私と女王蜘蛛の逢瀬は、終わってしまったのだある。

 名残惜しいが、仕方ない。

 まだ私は、ここで力尽きるわけにはいかないのだ――

  

 同時に、スプリンクラーから溶剤が降り注いだ。

 私の体を包み込んでいた粘糸が、みるみる溶け出していく。

 服も少々傷んだが、大きな問題ではない。

 こうして私は、念願だった「クルスクの女王蜘蛛」との楽しみを体験したのである――

 

 

 

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