悪堕ち科学者
***西暦2042年1月17日
「そう言えば、須山君……私の引退後のことだがね」
試薬の準備をしながら、不意にイール博士は言った。
「何を言ってらっしゃるんです、定年はまだまだ先でしょう」
博士はまだ50代。
決して若くはないが、定年後を考えるような歳でもないはず。
「いや、それが……二ヶ月後に、孫が生まれるんだよ」
「それはおめでとうございます。ご家族は、確か沖縄ですよね?」
博士はビジターの攻撃で故郷を失い、日本に居を移した。
娘夫婦は確か、沖縄の米軍住宅に住んでいると聞いたことがある。
「うむ……それを期に、引退を考えているんだ。
いや、不明確な表現を使ってしまったな……来月末をもって、私は退職する」
「そんな――」
イール博士は、私を目に掛けてくれていた。
実際、ここに就職できたのは博士に指名を受けたからでもあるのだ。
そんな博士が退職してしまったら、庇護を失う私の立場はどうなってしまうのか。
流石に首が飛ぶことはないだろうが、今ほどの自由は保証されないかもしれない――
「この個人研究ラボの後を継ぐのは、影原教授となっている。
君は以後、彼の下で働くことになるだろう」
「そんな……」
影原は凡庸で愚鈍、かつ性質まで陰湿な研究者。
研究テーマは粘菌と、専門分野まで湿っぽい。
能力ではとうてい及ばないのに、なぜか自分こそイール博士の後任だと自負している。
しかしどうやら、今回は所長に上手く取り入ったようだ。
影原の下に付くことなど、考えたくもない――
「……しかし、その期間も長くは続かんはずだ。君に、私の研究を全て託そう。
実はいくつか、形になっていない素案があってな。
それを上手く使えば、今後の君のキャリアにも有利に働くはずだよ」
「イール博士……」
「私が見たところ、君は3年で影原教授の尻を蹴り落とせる。
この研究ラボは、君が引き継ぐべきなんだよ」
「ありがとうございます、博士!」
こうしてイール博士は、研究所を円満に早期退職した。
たった3年の指導ではあったが、私は彼に対して恩義を抱いている。
だからこそ、それ以来イール博士とはいっさい連絡を取らなかった。
私のような人でなしとは、早く縁を切るのが彼のためだと思ったからだ。
彼の大きな間違いはひとつ。
私という人間を大きく見誤り、力を与える手助けをしてしまったこと。
そして、小さな間違いがもうひとつ。
私が影原を追い落とすのに、彼の見積もった3年は過大だったことだ。
***西暦2043年2月5日
イール博士が研究所を去ってから、約1年後。
影原は、真菌研究部門の主幹研究員となる――要は、閑職に飛ばされたということだ。
そして私は、この研究ラボの主となった。
20代前半で個人研究ラボを獲得するのは、異例中の異例。
また一歩、私は目的の実現に近付いたのだった。
とはいえ、この快挙は幸運の要素も大きかった。
かねてより着目していたデボラのフェロモン作用に、イール博士が残したデータも加味。
博士の下で働きつつ仕上げた独自の研究論文が、軍上層部の目に留まったのだ。
私のフェロモン研究を元にデボラの新型誘引剤が作られ、駆除作戦で使用。
多数のデボラを誘引することに成功し、一網打尽の大戦果を挙げたのだ。
この戦果を軍は大々的に宣伝し、ニュースでも大きく取り上げられた。
その功労者として、私の名も挙がったのである。
軍部は、研究部門からも英雄を必要としていた。
その流れに、私は上手く乗りかかることができたというわけだ。
おかげで上層部の覚えもめでたく、祝賀会や交友会にも招かれた。
顔を売ることに成功し、軍関係者にも多くの知人ができたのである。
また私は、デボラの研究によりいくつか特許を取得した。
その内容は、軍用でも医療でもなく――意外かも知れないが、美容品だった。
デボラのような美肌を保つ薬。
デボラのフェロモンを用いた香水。
その他、デボラ印の美容品……などなど。
デボラの外見はいずれも美しく、彼女達が永遠の若さを保つことも世に知れている。
だからと言って、デボラのような怪物から作った美容品など果たして売れるのか――
私自身も、最初は確信が持てなかった。
しかし世の女性達は、美を手に入れるためなら手段は選ばないようだ。
デボラの美容品は売れに売れ、私は莫大な利益を得た。
知的所有権を押さえておけば懐も潤い、友人も作りやすくなる。
また科学研究に対しては無償で特許技術を提供することで、研究者間の軋轢も緩和する。
研究所内において、私の存在感は大幅に増した。
だが影響力が大きくなるということは、プラス面ばかりでもない。
私のような若造が破竹の勢いでのし上がるのを、快く思わない者も多いだろう。
その対処のためにも、潤沢になった個人資産を有効に使わなければ。
これも全て、私の胸に秘めた目的のためなのだ――
「『ヴァギナ・デンタータ』、とうとう捕獲か……」
晴れて自分のものとなった実験室で、私は週刊誌の記事に目を通していた。
流しているBGMは、モーツァルトのクラリネット協奏曲。
イール博士は大のロック好きだったので、これまでクラシックを流すのは憚られていたのだ。
なお私の愛読しているこの週刊誌は、信頼度も品性も著しく低い三流雑誌である。
その下品で猥雑な内容は、さながら成人誌のよう。
しかしこの雑誌には、一流誌にはとうてい載せられない記事も乗っているのだ――
いや、それこそが売りだというべきか。
だからこそ私は、この三流週刊誌を学生の頃から愛読しているのである。
「ヴァギナ・デンタータ」事件のあらましも、誌面には赤裸々に記されていた。
事件の主役となったデボラは、変異前は娼婦だったらしい。
娼婦出身のデボラと言えば、マニアがまず思い浮かべるのは「ディープスローター」だが――
この「ヴァギナ・デンタータ」も、行動パターンが「ディープスローター」に良く似ているようだ。
売春街で男を誘い、物陰で性交に持ち込もうとするが――
下腹部にペニスを近付けると、その女性器がもう一つの口のように飛び出し、肉棒を咥え込む。
いや、実際に女性器が口腔のような構造をしているのだ。
舌が複数備わり、膣壁には牙まで生えている。
飛び出す構造はウツボの顎、他にも複数種の口腔や生殖器の特質が混じり合っているらしい。
その口で、男の陰茎を何度も何度も咀嚼する。
最初は弱めの力で柔らかく噛むので、ほとんど痛みはないという。
強烈な快感で、男は何度も何度も射精するが――
精を出し尽くした後には、地獄が待っている。
膣内に咥え込んだペニスを、そのまま噛み潰してしまうのだ。
その鋭い牙と強靱な顎の前では、肉棒などソーセージ同然。
あっという間に膣内でミンチにされ、男は悶絶することになる。
極上の快感と引き替えに、14人の男が去勢されてしまったという。
こうして存在が発覚した「ヴァギナ・デンタータ」は、駆除部隊に捕らえられた――
以上で、記事は締めくくられていた。
細部まで、やたらに念の入った描写である。
公的機関の公開情報のみならず、入念な独自調査を行ったことがうかがえた。
「この記事を書いた記者……間違いなく、私と同じ性癖だな」
どうやら、私のような変態性欲者も世の中にはそれなりにいるらしい。
こうした週刊誌の需要も、そのあたりにあることが予想できる。
だが、そのために私ほど努力した者はいないだろう。
私は雑誌を脇に置き、今日の業務――いや、楽しみに取りかかった。
「これが、『クルスクの女王蜘蛛』――」
本日、ロシアの研究機関から運び込まれてきた捕獲個体。
その筋の者には有名な「クルスクの女王蜘蛛」を前に、私は感銘に捕らわれていた。
腰から下は巨大な蜘蛛と化しつつ、上半身は艶めかしいスラヴ系美女のまま。
人間的知性は失われているが、捕食生物特有の狡猾さを有しており、37人もの男を捕食したのだ。
人気のない路地や公園に巣を張って潜伏し、不用意に接近した男を罠に掛ける。
巣に掛かった男を粘糸で巻き上げ、自身の住処(生前に済んでいた家の地下室)へと運び込む。
それから何度も何度も交わり、精を搾り取り――そして弱り尽くした男を、捕食してしまうのだ。
その場合は蜘蛛と同じ、牙から獲物の体内に消化液を送り込み、内部から溶かして肉を啜るというやり方で。
駆除部隊が踏み込んだ時、地下室の巣には7人の男が絡め取られ、全員息はなかった。
そして部屋の隅には、30人分の皮だけが残されていたのだという。
女王蜘蛛が捕食した残りカス、というわけだ。
こうして「クルスクの女王蜘蛛」は捕獲され、ロシアの研究機関に送られた。
その貴重な個体が、私の要請により当研究所に譲り渡されたのだ。
もちろん、それなりの見返りは用意しなければならなかったが――
私の夢がまた一つ叶うことを考えれば、安いものだった。
「素晴らしい……なんて美しい……」
思春期の頃から、この「クルスクの女王蜘蛛」は憧れのデボラのひとつだった。
彼女が起こした事件の記事を読みながら、自分がその被害者になるところを妄想し――
そして、何度も自慰に浸ったものだ。
その実物が、強化ガラスを隔てて目の前にいる――私の感動は、いかばかりか。
私の下半身も正直に反応し、男性器が怒張している。
この研究ラボは、もはや私の城。
ここで、すぐさま行為に及ぶこともできただろう。
だが、焦る必要はない。
まずは女王蜘蛛の「捕食」を、この目でじっくり観察しなければ――
私はただちに、「餌やり」の準備を進めた。
兵役忌避者の房のうちひとつを開け放ち、この部屋へと呼び込む。
恐る恐るといった様子で現れたのは、まだ成人もしていないであろう青年だった。
「ひっ……ば、バケモノ!?」
目の前には、下半身が大蜘蛛の怪物。
普通の感性ならば、恐れおののいて当然だろう――
しかし青年が逃げる間もなく、「クルスクの女王蜘蛛」は目を見張る早さで襲いかかった。
「あ……うわぁぁぁっ!!」
尻餅をつく青年に、デボラは蜘蛛特有の膨らんだ腹部を向ける。
そして、その先端の糸つぼからぶしゅっと粘糸を吐きかけた。
粘糸はまるで液体のシャワーのように、青年の体に降りかかっていく。
彼の体には白い粘液が絡み付き、みるみる糸状となっていった。
「ひっ、助けてぇ……!」
粘糸にまみれ、虫ケラのようにもがく青年。
そこに蜘蛛デボラの巨体が迫り、彼の体をくるくると回して粘糸で巻き取っていく。
たちまち青年は真っ白な繭となり、くるみ込まれてしまった。
ところどころ肌が露出しているが、あれでは動けないだろう。
満足そうな笑みを浮かべたデボラは、繭になった青年にのしかかる。
イモムシのようにもがき、苦悶の声を上げる青年。
そしてデボラは、蜘蛛の腹部を彼の股間に押しつけた――
「ひっ……あ、あぁ、あぅぅぅ……」
青年の口から、切れ切れの声が漏れ出る。
「クルスクの女王蜘蛛」は獲物から精を搾る際、二つの穴が使えるという。
糸つぼと、生殖孔――
今回は、青年のペニスを糸つぼのなかに迎え入れたようだ。
女王蜘蛛は青年にのしかかったまま、じっくりと犯し始める――
「はぅ、あぅぅ……あぁぁぁ〜〜!!」
繭にされた青年は体をくねらせ、人外の快楽に悶えた。
蜘蛛の糸つぼは、粘糸の練り込みや射出ができるよう、筋肉やヒダが巧緻に配置されているのだ。
それで男性器を包まれ、刺激されればひとたまりもないだろう。
スキャン画像では、複雑な構造の肉壁や肉ヒダにペニスが包まれている様子が見える。
内部はじゅぶじゅぶと収縮し、その動作でヒダが男性器へと絡み付いていた。
粘糸を攪拌する動作をペニスで味わい、青年は繭の中でくねくねと悶え――
「う……あ、あぅぅぅ〜〜!!」
犯されてから1分ももたず、青年は達してしまった。
スキャン画像で、ペニスが脈動し精液を吐き出している様子が窺える。
しかしそれでも糸つぼは収縮を繰り返し、射精中の男性器に激しい刺激を与え続けた。
内壁全体がじゅるじゅるとうねり、ペニスを巻き込んで攪拌動作を続ける――
「ひぁ……う、うぁぁ〜〜!!」
青年は悲鳴を上げ、繭の中で身をよじらせて悶えた。
そのまま何度も射精を繰り返し、精液を糸つぼに撒き散らしていく。
そんな青年の上にのしかかったまま、笑みを浮かべて精液を搾っていく女王蜘蛛――
まさに、蜘蛛が獲物を補食している光景そのものだった。
実験房で行われている捕食は、大いに私を興奮させる。
ああいう風に粘糸で拘束され、餌食にされたい――
そんな情欲を抱きながら、30分の捕食行為を観察したのである。
そして30分後、電極から迸った電流により女王蜘蛛の捕食は強制中断された。
デボラはその場に倒れるものの、繭の中の青年に動きはない。
私は慌ててバイタルを確認したが命に別状はなく、衰弱しきった様子のようだ。
自力では動けないと判断し、警備員を呼んで後片付けをさせた。
粘糸にくるみ込まれた青年を、警備員4人がかりで引きずり出す。
粘糸でベトベトの青年の体を引っ張りながら、警備員は「うわ……」と嫌悪の嗚咽をこぼした。
「こんな食われ方だけは、したくないですね……」
別の1人は、額に眉を寄せてそう呟く。
「……いや、そう悪くないかもしれないぞ」
私がそう言うと、警備員達は苦笑いのような表情を浮かべた。
しかし4人のうち1人だけは、唾をごくりと飲み込んだのを見逃さなかった。
「しかし、女王蜘蛛の相手はなかなか大変そうだな……」
警備員達が立ち去り、私は深く息を吐く。
「クルスクの女王蜘蛛」と交わるのは、かなりの困難を伴う見通しだ。
この研究ラボの主となり、時間の問題は解決したと言える。
しかし気絶した青年を繭から引きずり出すのに、警備員4人の力を要したのだ。
これを私1人で、露見しないように行うのは無理がある。
その手段も、考えなければならない――
そうは言いつつ、私の頭の中では解決策が固まりつつあった。
もはや、焦る必要もない。
ゆっくりと計画を進めようではないか。
***西暦2043年3月22日
本日、待望の「蛇仙女」が当研究所へと移送されてきた。
その筋では非常に有名な蛇型デボラであり、中国四川省で合計18人を殺害している。
その出自は、四川省のとある村に住んでいた良家の娘だった。
しかしデボラ化した後も、彼女の両親は娘の変異を隠蔽。
そればかりか自宅の倉に匿い、なんと4人もの男を餌として差し出していた。
娘を思うあまり、道を踏み外してしまったのだろう。
結果的に娘は、両親を絞め殺し倉から逃走。
村の男12人を襲い、精を搾り尽くした上で絞め殺している。
以前から評判の美女だったが、デボラ化した際に妖艶さも極まり、ついた渾名が「蛇仙女」。
ずっと北京の研究所に捕らわれていたが、本日ここに納入されたのだ。
もちろん私の要請で、「生態行動の研究」のために――
「流石に、所長に大きな借りを作ってしまったな。
大物デボラを二体連続で納入したんだから……」
そう呟きながらも、高鳴る胸を押さえられない。
強化ガラスを隔て、私は蛇仙女と対面していたのだ。
「これは、評判以上に美しい……」
雑誌に載った写真を見たことがあるが、実物はそれ以上に妖艶かつ淫靡だった。
整った顔立ちに、長く美しい黒髪。
あどけなさと妖艶さがない交ぜになった色香は、まさに仙女のたたずまい。
そして、あまりにも艶めかしい下半身の大蛇――
悪魔的な造形美が、そこにはあった。
ではさっそく、彼女の「捕食」を見せてもらおう――
いつものごとく、状況も分からないまま実験房に投げ出された青年。
それを前にして、蛇体を這わせながら彼に迫っていく蛇仙女。
まさに、獲物を見定めた蛇の動作そのものだった。
「ひっ……! 来るな!!」
逃げようと背を向けた青年の体を、強靱な蛇体が巻き上げる。
彼は、蛇仙女の抱擁を受けるという栄誉を得たのだ――
「う、ぐっ……」
体が蛇体でぐるぐる巻きにされ、青年はとぐろの中で身悶える。
かなりの重圧が掛けられ、相当に苦しいのだろう。
そんな彼に対面し、顔を突き合わせるように蛇仙女は身を寄せる。
苦悶に歪む青年の顔を、蛇仙女は優越の笑みを浮かべながらべろりと舐めた。
艶めかしい蛇舌が、ねっとりと彼の頬に這う。
そこには、蛇舌が通ったあとの唾液の道が残った。
「う、ぐぅっ……」
じわじわと蛇体で締められ、苦悶の声を上げる青年。
それを楽しみながら、彼の頬に舌を這わせる蛇仙女。
数分の間、前戯とも言えるその行動が続いた。
そして、3分ほど経った頃――
「あ……あぁぁぁっ!!」
蛇仙女が、腰のあたりをくねらせる――同時に、青年の悲鳴が上がった。
蛇体に備わった女性器に、彼のペニスが咥え込まれたのだ。
蛇仙女は獲物を蛇体で巻き上げながら、驚くほど器用に犯してしまう。
そして、筋肉が備わった膣でみっしりとペニスを締め上げるのだ――
「うぐ、あぅぅぅ〜〜!!」
苦悶と快楽が入り交じった悲鳴。
蛇仙女は妖艶な笑みを浮かべながら、じわじわ青年の体を締め上げていく。
膣内スキャンでも、ペニスが肉壁に押し潰され、締められているのが分かった。
強烈な圧力をかけられた肉棒が、膣内でびくびくと震えているのが見える。
彼の体ばかりか、その分身までサディスティックに締め上げられているのだ。
「あ、うぅぅっ……!」
悲鳴と同時に、青年は蛇仙女の膣内へと精液を発射していた。
狭い肉壁に包まれた肉棒がびくびく脈打ち、白濁が放出されていく――
「う……ぐぅっ……!」
すると、内外の締め付けがさらにきつくなったようだ。
射精中の青年をさらにいたぶるように、蛇仙女は締める力を増していく。
同時に、蛇仙女は彼の顔をねっとりと舐め回していた。
苦悶に歪む顔に、じゅるじゅると這い回る唾液まみれの蛇舌。
頬から顎、唇から鼻、まぶたや額に至るまで、顔中がべろべろに舐め回されているのだ。
たちまち彼の顔は、唾液でドロドロにされてしまう――
「あ……あぁぁっ……!」
そして青年は、二度目の射精に追い込まれていた。
膣内で搾り上げられたペニスが、ドクドクと精液を吐き出していく。
体を蛇体でみっしりと締め上げ、苦痛と快楽に歪む顔を蛇舌で唾液まみれにし――
ああやって蛇仙女は、16人の男を搾りながら絞め殺したのだ。
その光景は恐怖どころか、私にとっては羨望そのものだった。
ああやって絞め殺されたい、そんな破滅的な欲求まで湧き上がってくるほどだ――
「うぐ……あぐぐ……」
青年はとぐろの中で涙を流して苦しみ、精を搾られていく。
唾液まみれの顔が苦痛で歪み、そして時には快楽に緩む。
蛇仙女に抱かれながら、青年は地獄と天国を同時に味わっているのだ。
「うぁ……あ、あが……」
それはまさに、大蛇の餌食となり、締め上げられ、体液を搾取される獲物の姿。
青年の精液は蛇の魔膣に貪られ、無慈悲に搾り上げられていく。
こうして彼には30分の間、蛇仙女の抱擁を味わってもらった――
蛇仙女が電流で失神した後も、青年は床に転がり動かない。
ただちに医務室に運ばれたところ、7カ所が骨折していたとのことだった。
命に別状はないということで、ほっと胸を撫で下ろす。
しかしこのレベルのデボラになると、交わるのも命がけだ。
やはり、事前に準備を整えなければならない。
「蛇仙女……早く貪られたい……」
ガラスの向こうにいる蛇仙女に、私はそう語りかけたのだった。
***西暦2043年4月10日
「また、新たなデボラの納入要請か……少し、頻繁過ぎるんじゃないかね?」
所長室にて曇り顔でそう告げたのは、この研究所の所長。
彼は法学部出の管理職であり、研究者出身ではない。
よって所長に、専門的な科学知識はほとんどなかった。
施設の維持運営が職務であり、根回しや政治的駆け引きに従事するタイプの人物だ。
そちらの方面の腕は決して悪くなく、多くの予算を中央から得ることにも成功している。
「あのRU011とCN062だったか……2体の納入に、ずいぶん貸しを作ってしまったんだ。
君の要請だが、今回は受理できんよ」
「ですが所長、貸しなどいくらでも取り返せますよ」
私は、あらかじめ用意してきた資料を所長へと見せた。
もちろん専門知識のない彼向けに、論点は簡易に整理してある。
そして、この種の人物や軍官僚が好むような内容も巧みに織り交ぜてあった。
「デボラの行動を数量的に、統計学的に解析しようという取り組みですが……
イール博士の行動学的アプローチもあり、大いに前進しています」
「ううむ、しかしねぇ……」
良い香りのするコーヒーを啜りながら、所長は呻く。
趣味らしきものが皆無の所長にとって、コーヒーは唯一のこだわりらしい。
高級な器具やコーヒー豆を職場に持ち込み、毎日自分で淹れているのだという。
「これでデボラの行動に精密な予測を立てられるようになれば……
軍による駆除作戦も、より有効かつ効率的に行えるようになります。
そればかりか、デボラが起こす事件を事前察知できるでしょう」
期待や願望が多分に混じっているが、そこは断定口調で押し切る。
管理職の多くは、科学者特有の「慎重な」物言いが好きではないのだ。
良識ある科学者の多くが政治に不得手な理由は、だいたいこの辺にある。
「……そのためには、さらなるデボラの研究が必要です。
特に、過去に大事件を起こした強力な個体でなければ。
研究が円滑に進めば、あと1年で対デボラ作戦は変わります」
「つまり、あれだ……軍の作戦部の方に話を通して、予算を取れと?」
「そこは、所長の手腕次第かと」
「ふぅむ……君の着眼点は悪くはないのだがねぇ……」
なかなか金を食うなぁ、と所長は溜息交じりに呟いた。
「まあ、いいだろ。最近はデボラ掃討作戦が大いにマスコミ受けするからな。
もしかしたら、飛びついてくるかもしれん」
所長に科学的常見は皆無だが、政治的嗅覚は優れている。
こういう場で、大きな下手は打たないだろう。
「……いいだろう、納入を認める。作戦部にも話を持っていこう」
「ご理解頂き感謝いたします、所長」
これで、思惑通りの結果となった。
私は、所長に深々と頭を下げる。
「まあ君も、しばらく派手な動きは控えた方が良い。
もちろん私は、君の未来を大いに期待しているのだが……
君のことを、あまり良く思っとらん連中もいるからなぁ」
「それは……忠告でしょうか?」
「もちろん忠告だよ。一部では、君が予算を私物化していると騒ぐ者もいる」
「分かりました、心得ておきます」
出る杭は何とやら、だ。
その点も、手を打っておかなければなるまい――
そして、正午の休憩時間――
ニュースを見ると、お決まりの戦況報告をやっていた。
北海道にてビジターの進行を食い止めているということだが、要は戦線膠着状態にある。
ビジターの円盤群は、札幌から何年も動いていない。
アジアでは同様に重慶とウラジオストクも戦地となっているが、あちらも同様だ。
ビジターの意図は分からないが、占領地を広げる意志がないように思える。
かと言って、国連軍にビジターを追い払うほどの力はなかった。
よって軍は、デボラを駆除することで戦果をアピールするしかないのだ。
だからこそデボラが起こしたおぞましい事件が、大々的に報道される。
その事件を起こしたデボラを駆除・捕獲することで、戦果に箔が付く――
それが大衆の戦意高揚にも繋がる、そういうことだ。
そして報道チャンネルは、次のニュースに移っていた。
先日「デボラ対策局研究課」で発覚した、兵役忌避者への虐待事件だ。
縦割り行政の結果、国営のデボラ研究所は4つ存在する。
私が務めるこの「異星生物研究所」は、軍が主導する研究機関である。
そして問題が発覚したのは、警察庁管轄の「デボラ対策局研究課」だった。
かの施設で、兵役忌避者がデボラの餌とされていたことが発覚(これは、うちでもやっているが)。
しかも、10人以上の死者を出していることが判明したのだ。
しかしこの事件に対し、世間の反応は冷ややかだった。
責任を問う声が少ないのも、マスコミが警察相手に尻込みしたというだけではない。
「兵役忌避者なんて、エサにされて当然」
「義務を果たそうとしない奴は、どんな目に合っても文句は言えない」
インタビューを受けた通行人達は、そう語っていた。
「世間はそこまで兵役忌避者が嫌いか。まったく、私以上に狂った世の中だ……」
さすがの私でさえ、呆れ返ってしまう世相。
そう言えば、昨日も兵役忌避者への糾弾デモを見かけた。
開戦から12年、大衆の意識も来るところまで来てしまったようだ。
結果的に、この虐待事件はほとんど問題にならず収束するだろう。
まあ、私としても悪くない流れと言える。
この施設とて、決して対岸の火事ではないのだから――
***西暦2043年4月17日
その日、また2体のデボラが新たに納入された。
所長へと直に話を通し、誇大資料まで持ち出して根回しした結果だ。
「ディープスローター」と「ヴェネツィアの庭師」――
どちらも、私が少年の頃から憧れてきた有名なデボラである。
「ディープスローター」は、人間だった時はボストンの娼婦だった。
デボラ化した後も売春通りに出没し、艶めかしい身振りで男を誘う。
そして路地裏に連れ込んだ男の前でかがみ込み、口淫を行うのだが――
しかし、その口こそが「ディープスローター」の搾精器なのだ。
口の外部は人間のものだが、内部にはナメクジ、ヒル、ヤツメウナギなどの要素が複合発現している。
その口による快感――特に深く咥え込んで行われるディープスロートは、格別の快楽なのだという。
被害者(この表現が正しいものかは分からないが)は、魂まで吸われ尽くされるような快感、と表現している。
なおディープスローターはほとんど男性に危害を加えず、精液を吸い尽くすと、そのままその場を後にする。
男性は数回連続の射精で疲れ果てているものの、それ以外の被害は受けないという。
捕獲時も全く抵抗することなく、駆除部隊に連行されていったと記録にはある。
魂まで吸われるような快感――それを味わうのが、今から楽しみだ。
そして、「ヴェネツィアの庭師」――
私はコンソールを操作し、凶悪さでは世界でも随一のデボラを実験房に呼び入れた。
少しして現れたのは、いかにも妖艶な黒髪の女性。
そして、その長い黒髪には無数の花が咲き誇っていた。
体のあちこちにもツタが伸び、まるで着飾っているかのように花で包まれている。
その姿は、さながら美しい花の化身――
しかしその正体は、男の精を無慈悲に吸い尽くす妖婦なのだ。
ヴェネツィアの庭師は、イタリアの良家の女性だった。
しかし若くして両親を失い、広大な屋敷で独り暮らしをしていたという。
そんな彼女が、花のデボラと化してしまった。
彼女は次々に男を屋敷へと招き入れ、その精を飲み干していく。
搾精には、彼女が身に纏う妖花やツタが使われた。
特に妖花の搾精能力は凄まじく、5分あれば成人男性1人の精を搾り尽くすことができる。
しかも、それを複数の妖花で同時に行えるのだという。
駆除部隊が屋敷に踏み込んだ時、彼女の庭園は犠牲者達の屍で華やかに飾られていた。
干涸らびた男達の死体にびっしりとツタが絡み、色とりどりの花が咲き誇り――
死体は作品のようにディスプレイされ、陰惨で美しいアートをなしていた。
その数、なんと55体。うち3人の男は飾り付けられたばかりで、まだなんとか息があった。
イタリアでは最大数の殺害記録を出した、非常に有名なデボラである。
当然私も、記事で読んで以来ずっと恋い焦がれてきた――
そんな高嶺の花が、今は目の前にいるのだ。
艶のある美しい顔に、涼やかな笑みを浮かべる「ヴェネツィアの庭師」。
その細身の体の周囲にはツタがうねり、薔薇のような花が咲き誇る。
あの美しい花々こそ、何十人もの男の精を飲み尽くした妖花。
普通の人間ならば、あまりのおぞましさに血も凍るだろう。
だが私は、咲き誇る妖花を前に性的高揚を隠せなかった。
今すぐ、あの艶めかしい妖花を体験してみたい。
「ヴェネツィアの庭師」の庭園を飾った男達のように、妖花に吸い尽くされたい――
だが、それはあまりに危険すぎるのは自明だった。
ここはやはり、兵役忌避者に働いてもらわなければならない。
どうせ彼らも、良い思いが出来るのだ。
これは、彼らにとっても役得ではないか――
兵役忌避者の青年は、実験房に現れた瞬間に表情を凍り付かせた。
目の前に異形の植物デボラがいるのだから、無理もない。
慌てて逃げようとした彼の足に、ツタがしゅるしゅると絡み付く。
「わぁぁぁっ……!! は、離せぇ……!」
足に巻き付いたツタは、腰から体まで這い上って巻き取っていき――
青年を立たせたまま、その動きを封じてしまった。
「あぁぁ……たすけて、たすけてぇ……!」
恐慌に陥る青年とは裏腹に、「ヴェネツィアの庭師」は涼やかな笑みを浮かべる。
彼女の周囲に咲き誇る花々から、ふわり……と花粉が舞った――
「はぅ……う、あぁぁ……」
すると、青年はみるみる動きが鈍り――うっとりとした表情になった。
ぽかんと口を開け、緩んだ顔でよだれを垂らしている。
あれはデボラ特有の、男性の生殖機能を促進させるフェロモン。
「ヴェネツィアの庭師」は、その分泌量が非常に多いのだという。
「あぅ……う、あぁぁ……」
ツタに絡まれながら、青年はうっとりとした様子で立ち尽くす。
その股間では、すでに肉棒が限界まで怒張していた。
「ヴェネツィアの庭師」はしなやかな動作で、青年の側に立つ。
真っ赤な薔薇の1つが、まるで別の生物のように動き出した――
「あ、あぁぁ……」
その薔薇は、青年の股間へと伸びていく。
赤い花弁が寄り集まった中央には、唇のような器官が備わっていた。
あの搾精口で、男性器を咥え込み――そして、死に至るまで精を吸い出してしまうのだ。
青年はただ、緩みきった目で自らの陰茎に迫る妖花を眺めていた。
ペニスが、それを待ち望んでいるようにひくひくと震えている――
「あ……はぅぅぅぅ……」
妖花がペニスを咥え込むと同時に、青年は気の抜けたような声を発した。
じゅぶり、じゅぶり……と、ペニスを貪るようにうねる真紅の妖花。
すると彼は、体をぶるぶると震わせ――
「うぁぁぁ……」
なんと、あっという間に絶頂していた。
搾精が始まって、10秒も経たずに射精させられたのだ。
「すごいな……男をあっという間に干涸らびさせるわけだ……」
興奮と感嘆を隠せない私の前で、青年はなおも精液を吸われ続ける。
じゅぶじゅぶと妖花がうねり、ペニスをじっくりとしゃぶりたて――
「あぅ……あぁぁぁ……」
そして、あっという間に二度目の絶頂。
妖花の中に、じゅるじゅると精液が吸い取られていった。
「まだ、30秒も経っていないのに……」
そのペースは、目を疑うほどだった。
スキャン画像を見ると、妖花は陰茎から精を吸い上げるのに特化した構造をしている。
じゅぶっ、じゅぶっ……と内壁全体が収縮する機構。
その動作で花弁が何重にもすぼまり、締め付けながら肉棒表面をくすぐるのだ。
さらに内奥には唇状の器官があり、亀頭に吸い付くようになっている。
その快感の凄まじさは、即座に連続射精させられた青年が証明していた。
一刻も早く、あれを体験してみたい――
「はぅ……あぁぁぁ……」
またも彼は、呻きながら妖花に精液を吸い取られる。
これで三度目……いや、四度目か。
射精のペースが早すぎて、カウントも難しくなってきた。
青年の男性器からはひたすらに精液が吸い出され、驚くべき早さで搾り取られている。
五度目、六度目、七度目と――青年は呻きながら、白い体液を奪われていった。
「過剰なペースだな。これは、そろそろ止めなければ……」
搾精が始まってから、まだ五分。
フェロモンに脳まで浸された青年は、立ったまま恍惚の表情を浮かべていたが――
目で見ても分かるほどに、その体がやつれてきている。
フェロモンで造精機能が促進され、体液や脂肪が驚くべき早さで消費されているのだ。
すでに危険信号の点った状態であり、もう搾精を止めさせるべきだろう。
私は、外部から電極を作動させる装置へと手を伸ばす――
だが、中止ボタンを押すことはできなかった。
もう少し、もう少しだけこの淫靡な光景を楽しみたい――
「あ……あぅぅぅ……」
どくどく、じゅるじゅると精液が溢れ、妖花に搾り取られていく。
「ヴェネツィアの庭師」はくすくすと笑いながら、青年の精を啜っているのだ。
彼の体はみるみる痩せ衰え、ツタに絡まれた体ががくがくと痙攣を始めた。
「これ以上は、まずいな……」
頭ではボタンを押そうと判断したが、指は動かなかった。
あともう少しだけ。
もう少しだけ、この甘美な捕食を見ていたい――
「ぅ……ぁ……」
掠れるような呻きを漏らし、青年は不意にがっくりとうなだれた。
ツタに支えられて立っているが、その体に力が入っていないのは明白。
同時に、デボラはひときわ妖艶な笑みを浮かべていた。
その妖花が青年の股間から離れ、咥え込んでいたペニスを解放する――
「そんな、まさか……」
妖花の唇から、精液がどろり……と糸を引いて床に垂れ落ちた。
青年は指一本さえ動かない。
ツタでの拘束が解かれると同時に、彼はその場に倒れ伏した。
まさか、これは――
私は中止ボタンを押し、デボラの意識を奪った。
同時に実験房へと駆け込み、青年の首筋の脈を取る。
脈はなく、そして皮膚も冷えきっていた。
痩せ衰えた体に、老人のように干涸らびた肌。
その目や口元は緩み、とろけきった顔で息絶えていた。
「救護班! 救護班を急げ!!」
手遅れであることを悟りながらも、私は声を張り上げていた――
その夜、私は1人で実験室にいた。
憲兵の事情聴取を終え、流石に精神的疲労は隠せない。
例の兵役忌避者は、やはり助からなかった。
私がボタンを押すのを戸惑ったが故に、見殺しにしたに等しい。
しかし、なぜだろう。
まったくもって、罪悪感が湧いてこないのだ。
私は、冷血なのだろうか――
いや違う、彼を心より羨んでいるのだ。
あの青年は最高の快楽を味わいながら、精を搾り尽くされて果てた。
その屍さえ、とろけきった表情を浮かべていたのだ。
あれこそ、最も幸福な死――
私も、ああいう風に死にたいものだ。
もし立場が逆で、私があの青年だった場合、感謝こそあれ恨みなど持たないだろう。
「しかし、少々面倒なことになったな……」
憲兵は、この一件を事件性なしと判断している様子だ。
まして私は、軍の上層部にも知人がいる身。
ほぼ間違いなく、私が刑事罰を受けることはないだろう。
しかしあくまで事故とはいえ、人命が失われている。
兵役忌避者の風当たりがいかに冷たいといっても、お咎め無しとはいかないだろう。
この一件が、果たすべき目的の障害となってはならない。
今のうちに、もう三手ほど対策を打っておいた方が良さそうだ――
「それにしても、疲れた一日だった……」
動かすべき筋を動かし、頼るべき伝手に頼り――
ようやく一息入れた時には、すでに深夜だった。
精神の疲れを癒すには、例のお楽しみに限る。
幸い、二体の大物デボラの納入があったばかりだ。
しかし流石に、何の対策もなく「ヴェネツィアの庭師」と交わるわけにはいかない。
搾り尽くされるのも本望ではあるが、まだ私にはなすべきことがあるのだ。
私はコンソールを操作し、ディープスローターを実験房に呼び込んだ。
外見は普通の女性に見えるデボラが、私の前へと姿を見せる。
胸を高鳴らせながら、私は彼女の前へと立った。
するとディープスローターは腰を落とし、私のズボンと下着を下げてくる。
外に出された私のモノは、すでに大きくなっていた。
ディープスローターは、ゆっくりと口を近付けてくる。
「魂まで吸われるような」と評されたほどの口淫、ぜひ味わわせてもらおう――
ちゅっ……と、ディープスローターは唇を亀頭に押し当てた。
その次の瞬間、じゅぶっ……と肉棒が口の中に吸い込まれていく。
「はぅぅっ……!」
思わず、私は声を上げてしまった。
私のモノは、一気に根元までディープスローターの口内に咥え込まれてしまったのだ。
口の中は温かく、粘度の濃い唾液でねっとりとぬめっている。
ざらついた舌が複数備わっており、カりやサオにぬるりと這うのが分かった。
まるで、ナメクジの粘膜のような異様な感触だ。
そして――
じゅぶっ、じゅぼっ、じゅるるっ……!
次の瞬間、激しい口淫が始まった。
ディープスローターは口を前後させ、ペニスを激しくしゃぶりたててきたのだ。
「う、あぁぁっ!!」
思わず、上擦った声が出てしまった。
予想を上回る気持ち良さに、腰が崩れそうになってしまう。
じゅるる……じゅぶっ、じゅぶっ、じゅぶっ……
激しいピストンと同時に、口内の柔肉が波打つように収縮した。
ごぶごぶ、じゅるじゅると、口腔でのピストンとは別動作の刺激を与えてくる。
それに連動して、舌もペニス全体にじゅるじゅるとまとわりついてきた。
「あっ、すごい……! あぁぁぁっ……!」
私は声を漏らし、快感に圧倒されるしかなかった。
聞きしに勝るピストンと吸い付きに、足がガクガクと震えてしまう。
じゅぶり、じゅぶり……と、亀頭が喉奥に吸い込まれていくような感覚。
喉肉は亀頭をぎゅっと締め上げ、狂おしいほどの快楽を与えてくる――
「無理だ、こんな……あぁぁぁっ!!」
そして私は、あっという間に絶頂していた。
ディープスローターの口内に、ドクドクと精液を注ぎ込んでしまう。
すると彼女は、より激しく、ねちっこくペニスに吸い付いてきた。
射精中の肉棒が、強烈な吸引刺激を受ける――
「はぅぅぅぅっ……」
思わず腰が砕け、その場に尻餅をついてしまう。
しかしディープスローターは私の股に顔を割り込ませ、咥え込んだペニスを逃がさない。
発射された精液は、とうに飲み尽くされてしまった。
それでもなお、彼女はペニスに艶めかしい吸引刺激を与え続ける――
「あぅぅ……う、あぁぁ……!」
あまりにも強烈なピストンとバキュームに、頭の中が薔薇色に染まる。
まるで男のモノを吸い尽くし、中身を根こそぎ搾り出してしまうかのようだ。
激しい上下ピストンにより、みっちり密着してくる口内粘膜でペニスが摩擦される。
まるで、口内でペニスがしゃぶり溶かされているかのような快感。
私は腰を震わせながら、上擦った声を上げ――
「う、あぁぁぁぁっ……!」
あっけなく、二度目の射精に至らされた。
魅惑の口内へと、ドクドクと精液が吸い取られていく。
まさしく、魂まで吸い尽くされそうなほどの快感。
私は脱力したまま、ディープスローターの搾精に酔いしれた。
そのまま、口内に二度三度と連続射精し――
心ゆくまで、精を啜ってもらったのである。
***西暦2043年4月18日
「とんでもない失敗をしたね、須山君」
私の実験室にずかずかと踏み込み、嫌味な顔で告げた男――
それは、かつて私に研究ラボを奪われた影原だった。
私には多くの友人がいるが、だからといって敵がいない訳ではない。
その中でも影原は、私を最も敵視している男である。
「このご時世、兵役忌避者の死亡事故なんて大した問題にもならないが……
君のキャリアには、大きな傷が付いたのではないかな」
「慰めに来て下さったのですか……?」
そう言いながら、私は流していた音楽の音量を下げる。
バッハの平均律クラヴィーアの深淵さなど、この男にはどうせ理解できまい。
「近く、審問会が行われると聞いてね。
いかに上の覚えがめでたい君でも、貴重な人命が失われたとなればね……」
ふふん、と影原は鼻から息を出す。
陰湿で粘着質な彼が、ここまで饒舌なのも珍しい。
「君の研究スタイルに関しては、僕も色々と思うところがある。
審問会では、もちろん僕も証言を――」
「えっと、確か……扶桑製薬、でしたっけ」
影原の上機嫌な顔が、ぴたりと凍り付いた。
「き、君は、何を――」
「扶桑製薬の、大野さん……ずいぶんご懇意にされているようですね」
「な――」
なぜ知っている、その言葉を影原は飲み込んだようだった。
飲み込もうが言ってしまおうが、状況に違いはないのだが。
「あなたがおっしゃる通り、兵役忌避者の死亡事故など問題にもならない世の中です。
しかし、製薬会社と公的研究機関との癒着となれば話は違うでしょうね……」
「き、君は、なぜ……そんな……」
しばらく口をぱくぱくさせた後、影原はくるりと背を向けた。
そして、何も言わないまま足早に歩み去って行く。
もはや影原は、私の障害にはなり得ない――彼の小さな背中が、そう言っていた。
やはりこの手の駆け引きならば、金の動きを掴むに限る。
相手の収入や支出を徹底的に洗えば、色々と出て来るものだ。
不正の証拠など出れば、大当たり。
それでなくても、どこでどう金を使っているか把握すれば、色々と弱点も見えてくる。
もし困っているなら、手を差し伸べてやればいい。
痛いところがあるなら、突いてやればいい。
ただし、追い込みすぎるのも良くはない。
囲師は周することなかれ――とは、確か孫子の教えだったか。
数日後に行われた審問会とやらも、まったく恐るるに足りないものだった。
かねてから「助け合い」を行ってきた友人達が、あれは不幸な事故だと証言してくれた。
影原は病気を口実に出席せず、以降は私と目も合わそうとしなかった。
結局私は軽い減給処分を受け、それで話は終わりとなった。
時代が狂っていると、私のような人間も潜みやすい。
「腕がハサミになると思ったが……あてが外れたな」
デボラJP137の外見は、一瞥したところでは普通の女性と変わりなかった。
彼女には先日、カニの体組織を注射したばかりである。
しかしハサミも生えなければ、皮膚の角質化も見られない。
だが、その代わりに――
「口に変異が見られるな……これは、カニの特質か」
指を近付けると、デボラの口は人間ではありえない開き方を見せた。
頬のあたりに備わった第三顎脚が、観音開きになる。
そして露わになったのは、大顎および第1小顎、第2小顎――
その口は、明らかに人のものと蟹のものが入り交じっていた。
いったいなぜ、こんな奇怪な発現をしたのだろうか。
「これは、興味深いな……」
実際のところ、女性器や口に対しての他種器官発現が非常に多い。
かの「ヴァギナ・デンタータ」も、調査報告によればその典型だった。
膣にウツボ、ニシキヘビ、タランチュラの口腔が複合発現していたのだ。
しかもどのデボラも、多種多様なれど搾精に適した形なのは疑いない。
なぜ、そのように用途に適応した変化をきたすのか。
やはり、ビジターによってプログラムされているのか――
ともあれ、今は目の前のデボラJP137をより詳しく観察しなければならない。
「では、この口でどうやって搾精するのか……さっそく見せてもらおうか」
実験房に、いつものごとく兵役忌避者が迎え入れられる。
「こ、ここは……?」
彼は戸惑いつつも、同室のデボラに歩み寄っていき――
そして、彼女の口が明らかに人間でないのに気付いたようだ。
「ひっ……! バケモノ……!!」
後ずさる彼を、デボラが強引に押さえ込む。
その力は普通の人間より強いため、青年はたちまち押し倒されてしまった。
そして彼の股間に、デボラは異形の口を近付け――
顎を大きく広げると、だらだらと大量の泡を垂らした。
「な、なんだこれ……! あぁぁっ!!」
突然にデボラに押さえ込まれ、下半身に泡を垂らされるという状況。
混乱していた彼だったが、泡にまみれたペニスはみるみる膨らんでいき――
「はぅ……あぅぅぅっ!!」
なんと次の瞬間、あっという間に射精してしまった。
泡にまみれたペニスがびくびくと脈打ち、精液を発射していく――
「これは……どうなっているんだ?」
触られてもいない、泡の中での射精。
おそらくあの泡には、射精を誘発する化学成分が含まれているのだろう。
あの泡も、ぜひ体験しなければなるまい――
私は、未知の快感に心を躍らせた。
「はぅ……あぅぅぅっ……!!」
そうしている間にも、青年はびくびくと体を震わせていた。
泡まみれのペニスから、ドクドクと精液が撒き散らされている。
もう、2回か3回は連続で絶頂してしまったようだ。
どのような感覚かは想像も付かないが、とても気持ちが良いのは確からしい。
デボラは、ひたすらにペニスを泡責めにしながら――
飛び散った精液を、その異形の口で貪っていった。
「ぅ……ぁぁぁ……」
それから青年は、5分以上精液を垂れ流し――
ついには、意識を失ってしまったのである。
「まさか、死んではいないだろうな……」
バイタルを見たところ、特に問題はないようだ。
例の一件以来、兵役忌避者の体調にはどうにも慎重になってしまう。
私は警備員の1人を呼び、青年を房へと戻させた。
そして、床をべっとりと汚す泡をシャワーで掃除させる。
「これ、なんなんですか……? 泡……?」
「カニ型デボラの吐き出した泡だ。
これを男性器に浴びると、射精が止まらなくなるようだな」
「はは……」
警備員は軽く笑ったが、嫌悪の色は見られなかった。
そう言えば彼は、「クルスクの女王蜘蛛」に対しても独特の興味があったようだった。
彼とは、良い友達になれるかもしれない――
そして、その夜。
私は胸を躍らせながら、いつもの楽しみに臨んでいた。
今回体験するのは、例のカニ型デボラ。
あの泡がどれだけ甘美なのかを、存分に味わってみるとしよう――
デボラJP137を隔離実験房に呼び出し、私もその中へと入る。
するとデボラは、強引に私を押し倒してきた。
その腕でがっしりと肩を掴み、強い力でねじ伏せてくる――
「うっ……!」
抵抗しないように、大人しく床へ押さえ込まれる私。
露わになったペニスは、快楽への期待によりすでに勃起していた。
その股間に、デボラは口を近付けていく。
そして、カニの形状をした口が開き――
ぶくぶくと、大量の泡を滴らせてきた。
「あ、あぁぁぁぁ……」
温もりとヌルヌル感を伴う泡が、ペニスにべっとりと垂れ落ちる。
その感触は、まるで肉棒がドロドロにとろけるかのようだった。
しかも泡は異様なほどに温かく、男性器が温もりに包まれるような心地。
それはあまりに甘く、あまりに気持ち良かった。
たちまち私は、うっとりとした恍惚感に浸ってしまい――
「う、あぁぁっ……」
その直後、あっさりと絶頂に至っていた。
泡にまみれたペニスから、びゅるびゅると精液が発射される。
激しい快楽に突き動かされ、昇り詰めるような射精とは異なっていた。
甘くとろけながら、自然に漏れ出してしまったような感じだ――
「こ、これは……すごい……」
まさか、ここまで気持ち良いなんて。
ヌルヌルの泡の中でペニスが溶け出し、腰全体がとろけていくかのようだ。
射精が終わった途端、また甘い疼きがこみ上げ――
「こんな、また……あぁぁっ!」
そして、二度目の射精に至っていた。
デボラはペニスに顔を近付けながら、だらだらと泡を垂らし――
そして、撒き散らした精液を口で貪っている。
「も、もうだめだ……頭が……はぅぅっ……」
下半身どころか、ついに頭の中までとろけていくような感覚。
この泡には、いったいどんな化学成分が含まれているのか。
私は陶酔に浸りながら、何度も何度も精液を発射した。
30分が過ぎ、デボラが電流で意識を失った頃には――
私は、足腰が立たないほどの状態になっていたのである。
結果的に私は帰宅を諦め、研究室で一夜を過ごす羽目となった――
***西暦2044年2月27日
「まだ公表されていないことだがね……
君の開発した新型のデボラ麻酔剤、軍で制式化されるそうだ。
従来の麻酔銃で発射でき、即効性、コスト……どれをとっても素晴らしいとか」
「お褒め預かり、光栄です」
上機嫌な所長に対し、私はうやうやしく頭を下げた。
あれが制式採用されれば、より多くのデボラを傷付けずに捕獲できるだろう。
そうなれば、私も嬉しい。
「それに君の立案したデボラ行動予測プログラムだがね、あれも非常に評判が良い。
すでに現場では重宝されているようだよ」
さも満足そうに、所長はコーヒーを啜る。
この香りは……ブラックアイボリーか。
原材料を知っている私は、正直あまり口にしたくはない。
「お陰様で……所長のお力添えがあってのことです」
今の私は、飛ぶ鳥をも落とす勢いだった。
多くの研究成果をものにし、上の覚えもめでたい。
軍上層部にも知人ができ、顔が通じるようになっていた。
無論、様々な根回しも忘れはしない。
同僚や上司に様々な利益を分け与え、鞭よりもはるかに多くの飴を使った。
鞭は遺恨を残し、次の火種の原因となる。出来るなら使うべきではない。
幸い、脅しのような手を使ったのは影原で最後だった。
その影原も、もはや研究所にいない。
私に不正を暴露されるのを恐れるあまり、自ら退職を申し出たのだ。
これ以上、追い込むつもりはなかったのだが――つくづく肝が小さい男だ。
「最近は技術の進歩により、デボラの捕獲個体が増えていてねぇ。
収容する場所がどこも満杯だと、悲鳴が聞こえてくるほどだよ」
「収容場所が、足りないと……?」
それは、千載一遇のチャンスではないか。
「……ならば、当研究所を拡充する形で収容施設を作ってはいかがです?
国内のデボラ個体を一元的に管理、収容する施設の必要性を前々から感じていました」
「ううむ、そう言うのは簡単だがねぇ……」
「この件、私に任せて頂けないでしょうか。
ちょうど軍技研の鹿島本部長と、近く会食する予定がありまして」
「それでは……そうだな、君に任そうか。
私も事務次官に、少しばかり根回ししておこう」
「はい、よろしくお願いします」
デボラの収容施設を設立し、私がそこのトップに立つ。
そうすれば、私の目的を叶えるのにもずいぶん楽になる――
だが、決して焦ってはならない。
高いところに登れば登るほど、引きずり下ろそうとする手も増えるのが世の常だ。
「これが、『ヴァギナ・デンタータ』か……」
デボラUM083、女性器の複合変異型。
何人もの男の陰茎に貪り付いては、精液を吸い尽くした上でペニスを噛み千切っている。
男にとっては、寒気のする話だが――
その一方で、どこかゾクゾクするような被虐性を駆り立てられもするものだ。
「よし、筋弛緩剤を投与しよう……」
周知の通り、ヴァギナ・デンタータは非常に危険な個体。
それゆえ、薬物で力を弱めなければ給餌もままならない。
この弛緩剤の分量で、ペニスを噛みちぎるほどの力は出なくなるはずだ。
あくまで、他のデボラの実験結果から割り出した投薬量ではあるが――
「…………」
制御ガスの影響で、ヴァギナ・デンタータは無抵抗のまま注射を受け入れた。
少し待てば、効果は現れるだろう。
不意に私は、その膣に指を入れたくなる衝動に駆られた。
だが弛緩剤の効果が十分ではなく、指を噛み千切られてしまえば――
流石に、若干のリスクは否定できない。
ここは、兵役忌避者に役立ってもらうとしよう。
「あ、あぁぁ……」
実験房の中でデボラと対面し、後ずさる兵役忌避者。
よく見れば、彼は今までの兵役忌避者よりも若い。
まだ10代の半ば、少年と言っても良い年齢だ。
先日、徴兵年齢が引き下げになったとのことだが――
それに応じ、兵役忌避者も低年齢化しているのだろう。
ヴァギナ・デンタータは、恐怖で身を強張らせている少年に歩み寄る。
そして、立ちすくみ動けない彼にそっと身を寄せた。
細くしなやかな腕が、少年の腰を優しく抱く。
そしてフェロモンに反応し大きくなったペニスに、自らの下腹を近付け――
その膣から、ずるりと口のような器官が這い出した。
いや、膣そのものが外部に這いずり出たといっても良い。
そして女性器が、ペニスをがっぷりと咥え込む。
少年の恐怖の表情が、たちまちとろけていき――
「あ、あぁぁぁ〜〜!」
そして彼は、快楽の声を上げていた。
ペニスを咥え込んだ膣が激しく収縮しているのが外からでも分かる。
じゅぶっ、じゅぶっ……と下腹部が波打ち、妖しくうねっているのだ。
あれほどの動作をペニスに与えられれば、いったいどれほどの快感が得られるのか。
「はぅ……あぅぅぅ……」
少年は立っていられなくなり、ヴァギナ・デンタータにもたれかかっている。
彼女は優しく少年の体を抱き留めながら、人外の膣でペニスを貪っていた。
スキャンで見ると、それはまさに咀嚼そのものだった。
多種の口腔が複合発現した人外の膣で、咥え込んだペニスを柔らかく咀嚼している。
今のところ、牙は収納しているので痛みはないはずだ。
少年は足腰をガクガクと震わせ、とろけきった顔をしている――
「はぅ……あ、あぁぁ〜〜!!」
そして数分も経たないうちに、少年は異形の膣内へと精液を発射していた。
射精後も、ヴァギナ・デンタータはペニスをむぐむぐと膣で貪り続ける。
私は、膣内のスキャン画像に目を奪われていた。
それは完全に咀嚼動作なのだが、膣内で複数箇所に分かれて行われていたのだ。
サオを咀嚼する動作と、亀頭を柔らかく噛む動作は別物。
互いが異なる動きで、それでいて連動しつつ咀嚼されている。
これでは、男性器もたまったものではない。
こんな刺激を受けては、どんな男も耐えられないだろう――
「あぅ、あぁぁぁ〜〜!!」
快楽の悲鳴を上げながら、少年は射精を繰り返す。
ヴァギナ・デンタータの膣内は、どっぷりと吐き出された精液でドロドロになっていた。
しかし異形の膣は貪欲にペニスを貪り続け、決して離そうとはしない。
精液が空っぽになるまで、あれが続けられるのだ――
私は興奮しながら、ヴァギナ・デンタータの捕食を観察していた。
あの膣でペニスを咀嚼されるのは、どれだけ気持ち良いのだろう。
全てを投げ出してでも、あの甘噛みを体験してみたい。
この後に来る、あれさえなければ――
「あぅ……うぅぅ……」
それから、15分が経過した。
少年は10回以上射精させられ、すっかり疲れ果てたようだ。
ペニスはびくびくと空撃ちし、もはや精液も出て来ない――
するとヴァギナ・デンタータは、ひときわ妖艶に笑った。
私はすぐさま、内部スキャンに視線をやる。
その膣肉に力がこもり、今まで隠れていた牙が突き出したのを視認した――
「ひぁぁぁぁ!!」
次の瞬間、少年は悲愴な声を上げた。
泣き喚きながら床に転がり、嗚咽のような声を漏らす。
両手でぎゅっと押さえ込んだ股間からは血が迸り、床を赤く汚していった。
苦悶の光景を、サディスティックな笑みを浮かべ見下ろすヴァギナ・デンタータ――
彼女の膣はもしゃもしゃと動き、膣口からどっぷりと血がこぼれる。
そして床を転がる少年の股間には、あるべきものが消えていた。
彼は、ペニスを噛み切られてしまったのだ――
「弛緩剤が足りなかったか……彼を医務室に運べ!」
私は警備員に指示を出し、少年を実験房から運び出させた。
的確な医療処置さえあれば、死に至ることはないだろう。
ただ、噛み潰されたペニスを手術で再結合させるのは不可能。
可哀相だが、彼は去勢された肉体で、一生を過ごすことになる。
まあ、最後に最高の体験ができたのだから良かったのではあるまいか。
おかげで、弛緩剤の投与量に関する貴重なデータも取れたのだ――
少し経って、医務室から警備員が戻ってきた。
彼は確か、デボラに興味を示していた――
つまりは、私と同じ性的嗜好を持っていると思われる人物だったか。
年齢は私と同じくらいか、少し下。
警備員にしては細身で、従順な雰囲気である。
「あの兵役忌避者ですが、命に別状はありません。
ただ、失った男性器はもう戻らないようです」
彼の報告は、聞く前から分かっていたことだ。
なにせ男性器は噛み潰され、捕食されてしまったのだから。
「そうか、それは残念だ。事故とはいえ、胸が痛むよ……」
「しょせんは兵役忌避者、臆病風に吹かれて義務を果たさない卑怯者達です。
こうなって当然だと、自分は思います」
疑いのない目で、彼はそう言った。
私に媚びての言葉ではなく、本心であることがうかがえる。
若干生真面目で、公権力に過度に迎合する傾向あり……と。
ちょうどその時、ヴァギナ・デンタータがゆっくりと体を起こした。
電流で失神している時間は、そう長くはないのだ。
私はコンソールを操作し、制御ガスで定位置へと立たせる。
そこで私は、ちょうど良いチャンスだと考えた。
「ところで、君……えっと、仲原君だね」
私は警備員のネームプレートを確認し、名前で呼びかける。
「はい、なんでしょう」
「まだ、ヴァギナ・デンタータに与える精液が十分ではないんだ。
だがさっきの騒動で、ちょっと兵役忌避者達の隔離房がごたついている。
すまないが、君に少し手伝いを頼めないだろうか?」
「手伝いというのは……?」
「このデボラに、精液を与えてほしいのだよ」
「そ、それは――!」
彼は驚きの表情で硬直し、首を左右に振った。
「しかしさっき、兵役忌避者があんな目に……!
私には、そんな……とても……」
彼が問題にしているのは、ペニスを噛み切られる危険性。
それ以外の点、倫理的問題は度外視しているように見える。
やはり、私の見立てた通りだった。
彼もデボラに深い興味を抱いている――いや、背徳の交わりに魅了されているのだ。
「その問題は、すでに克服されたよ。
ヴァギナ・デンタータがペニスを噛み切るのは、食事を終えた後だ。
つまり精液が枯渇するまでは、絶対に噛み切ったりはしない。
過去のデータと、さっきの実験でそれは確かだ。
だから、そうなる前に必ず私が止めよう」
「で、でも……」
なかなか一歩を踏み出せない警備員を尻目に、私は薬品を準備した。
「それに、筋弛緩剤の投与量を増やす。
さっきの実験で、ペニスを噛み切るための力は測定できたからな」
あくまで、計算上は……だが。
自分で体験するには、より詳細に分量を確かめてからにしなければならない。
「絶対に大丈夫、私が保証しよう。
それでも気が進まないなら、他の者に頼むことにするが……」
「い、いえ……やります」
仲原は、覚悟を決めたように頷いた。
これは彼にとっても、デボラの与える快楽を体験できる千載一遇のチャンスなのだ。
私はコンソールを操作し、ヴァギナ・デンタータに筋弛緩剤を投与して準備を整えた――
「では、実験房に入りたまえ」
「は、はい……」
恐る恐る彼は扉を通り、実験房へと入っていった。
ヴァギナ・デンタータの前に、己の体をさらしたのだ――
「それでは、精液を与えたまえ。
私は邪魔はしないが、モニターはしているので安心するように」
「は、はい……あの、危なくなったらすぐ止めて下さいね……」
不安そうな面持ちの仲原に、ヴァギナ・デンタータが歩み寄っていく。
彼女は仲原のズボンを脱がすと、肉棒を露出させ――
そして、自らの膣で一気にペニスを咥え込んだ。
「あ……あぁぁっ!!」
次の瞬間、彼は快楽の悲鳴を上げた。
おそらく彼にとって、ずっと恋い焦がれていた快感だろう。
その気持ちは、私にとってよく分かる。
そして、むぐむぐと膣内咀嚼が始まった。
その途端、仲原はぶるっと腰を震わせ――
「はぅっ……うぅぅぅ……」
あっという間に、射精に至っていた。
内部モニターで、膣内に精液が放たれているのが分かる――
「あ……おぅぅ……あ、あぁぁっ……!」
射精中のペニスがさらに膣内咀嚼され、彼は身悶えた。
がくがくと体を揺するも、ヴァギナ・デンタータは絶対に離してくれない。
早く私も、あの膣内咀嚼を受けてみたいものだ。
そのためにも、ここで十分にデータを得なければ――
「はぅ……うぁぁぁっ……!」
ほとんど耐えることなく、仲原は連続で射精させられている。
その異形の口に精液を貪られ、搾りたてられていった。
そろそろ精が枯渇し、そしてペニスを噛み千切る頃合いだ。
さっき私は、そうなる前に止めると仲原に約束したが――
本音を言うなら、もう少し長く観察を行いたいところである。
筋弛緩剤を投与した状態で噛み千切り動作を行わせ、どれだけ力を制御できるか見たい。
今ここで試すかどうか、私は少しばかり迷ったが――
やはり、今試すべきだ。
私は仲原が精を貪られるのに任せ、止めることはしなかった。
精液を全て搾り取られた後の、あの動作が始まるまで――
「う、あぅぅ……」
それから5分ほど経過した。
膣内ではペニスがびくびくと震えるだけで、空撃ちの状態となっている。
ヴァギナ・デンタータは、仲原の精液を全て貪り尽くしてしまった――
「ぁ……ぅ……ぁぁ……」
彼はすっかり脱力し、もはや意識も虚ろになっている。
私がそれを待っていたことなど、思いも寄らないだろう。
そして、いよいよあれが始まった。
ヴァギナ・デンタータは笑みを浮かべ、膣内のペニスにとどめを刺そうとする。
計算上は、問題ないはずだ。
果たして、上手くいくだろうか――
「あ……あぅぅぅっ!!」
膣内の圧力が、ぎゅっとペニスを押し潰す。
しかし、噛み潰すほどの力は出なかった。
筋弛緩剤の効果により、膣内に牙も出ていない。
ヴァギナ・デンタータは眉をひそめ、獲物にとどめを刺せなかったことに戸惑う。
再び噛み潰そうとして、何度か膣内に力を込めるが――
仲原が悲鳴を上げるだけで、ペニスを食いちぎることはできなかった。
「う、うぅぅ……」
そうしているうちに膣からペニスが抜け、仲原はその場にくずおれる。
私はスイッチを押し、ヴァギナ・デンタータを失神させた。
――私の見積もりは、間違ってはいなかった。
搾精に支障はなく、ペニスの噛み千切りは不可能な筋弛緩剤の量を見出したのである。
これで私も、たっぷりと楽しめるはずだ――
しばらく休憩させ、仲原は意識を取り戻した。
業務外手当として多少の金を渡すと、暮らしが楽ではない彼は大いに喜んだ。
私は仲原に、今後デボラに餌をやる際、不足があれば提供してもらうよう頼む。
彼は快諾し、その見返りに私への協力を約束してくれた。
友達が増えるというのは、嬉しいものだ。
そして、夜――
私は実験室で、仲原のことを考えていた。
彼を懐柔するだけならば、もっと簡単な手段がいくらでもある。
金や昇進を餌にした方が、露見のリスクは遥かに低いはずだ。
(もちろん、仲原が全てを暴露した場合の対策も用意してある。
その場合、悲しいことに彼は精神病院に収容されるはめになる)
しかしリスクを踏まえながら、なぜ彼に対してデボラを餌にしたのか。
やはり彼に、何らかの親近感を感じたからだろう。
楽しみを共有したかった、というのもあるかもしれない。
いや、本音を言えば、私の楽しみを全人類と共有したかった。
個人的に楽しむ段階は、もはや過ぎ去った。
デボラの素晴らしさを、この世界に広く伝えたい――
それこそ、今の私の目的なのである。
とは言え、千里の道も一歩から。
今は一歩ずつ地を踏みしめ、目的に向かって歩んでいかねばなるまい。
そのためには、精神をリフレッシュすることも忘れてはならない。
さて、今夜の楽しみを始めよう――
私は、若干腰が引けながらもヴァギナ・デンタータのいる実験房に入った。
すでに、筋弛緩剤は投与済みである。
その効果は、仲原をエサに行った実験で実証されているが――
とはいえ、物事に万全などない。
薬とて、耐性ができることもある。
だが、そのスリルも含めて私は高揚していた。
獲物を見定めたヴァギナ・デンタータは、ゆっくりと歩み寄ってくる。
そして私に寄り添い、そのしなやかな腕を腰へと絡めてきた。
運を天に任せるつもりで、私は自ら生殖器をヴァギナ・デンタータへと差し出す。
多くのペニスから精を吸い尽くし、そして噛み千切ってきた悪魔の膣口へと――
じゅぶぶっ……と、膣全体がせり上がり、私のモノに食いついてきた。
そのまま肉棒は、温かくぬめった膣内に咥え込まれてしまう。
そして始まる、じゅぶじゅぶと収縮するような咀嚼――
甘く柔らかく、何度も何度もペニス全体を甘噛みされる。
「う……あ、はぅぅぅっ……!」
その強烈な快感に、思わず腰が引けてしまった。
しかし肉棒の根元までかぶりつかれ、ほんの少しも逃がそうとしない。
捕らえた獲物を、むにゅむにゅ、ぐぶぐぶと咀嚼し続ける――
「す、すごい……あぁぁっ!」
亀頭もサオも、柔らかな肉壁に上下からむぐむぐと圧迫された。
じゅぶっ、じゅぶっ……と膣壁が収縮し、肉棒が柔らかく甘噛みされる。
デボラの下腹は艶めかしくうねり、その激しさがうかがえた。
まさに、ペニスを貪られているような感覚だ。
あまりの気持ち良さに、私はたちまち限界に達してしまう――
「うぁぁ……! もう、出るっ……!」
ぐぶぐぶと咀嚼収縮する膣内に、ドクドクと精液を放っていた。
射精中も容赦なくペニスが甘噛みされ、とびきりの快感が与えられる。
「お……! あぁぁ、ぁぁ……!」
ヴァギナ・デンタータにペニスを貪られながら、私は快感に悶えた。
サオと根元、そして亀頭で受けている咀嚼動作が独自に行われているのだ。
根元はぎゅっぎゅっと、断続的に上顎と下顎で押し潰されている。
そしてサオは、何度も何度も柔らかく咀嚼されていた。
ぐちゅっ、ぐちゅっ……と中が狭まり、圧迫される感触がたまらない。
そして、最も敏感な亀頭――
男の弱点は、むぐむぐじゅぶじゅぶと、激しく小刻みに咀嚼された。
まるで、歯のない口でガムを噛んでいるかのような動作。
その快感は強烈で、私のモノはたちまち音を上げてしまい――
「あ……うぁぁっ!!」
あっという間に、二度目の精を放っていた。
すると不意に、ヴァギナ・デンタータの目つきが変わる。
どこか攻撃的な、そんな感じで――
「あぅぅぅっ……!」
ぎゅぅっ……と、膣壁がペニスを強烈な力で押し潰してきた。
さらに二度三度と、万力のように締め付けてくる。
「こ、これは――あぁぁっ!!」
間違いない、ペニスを噛み切ろうとしている――
仲原で一度失敗しているからか、普段より早く噛み千切るつもりなのだ。
しかし筋弛緩剤のせいで牙が出てこず、噛み切るには至らない。
おかげで私のペニスは、強烈な咀嚼を何度も連続で受けることとなった。
「あぐ……うぐぅぅっ!!」
ヴァギナ・デンタータは、ペニスを噛み切れないのが不思議でならないらしい。
何度も何度も、噛み切る動作で膣内を圧迫してくる。
それを自分のペニスで受けた私は、たまったものではなかった。
「あ……! うぁぁぁ〜〜!!」
肉壁がぎゅっと狭まり、そのたびに強烈な快感がペニスを襲う。
快楽に耐えかね、ドクドクと精液を吐き出す――
それにもかかわらず、ぐぶっ、ぐぶっときつく咀嚼されるのだ。
そのたびに私は絶頂に至り、快楽の嵐に体を痙攣させた。
それから、10分ほど経って――
ヴァギナ・デンタータはようやく無駄だと悟り、ペニスを噛みちぎるのを諦める。
その頃には、膣内は大量の精液でドロドロになっていた――
「う、うぅぅっ……」
そのまま私は、ヴァギナ・デンタータの足元に昏倒してしまう。
タイマーで目覚めなかったら、そのまま朝まで倒れているところだった――
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