ラン達の甘い罠


 

 私は、下等搾精生物を何よりも愛する淫魔、エルムノア。

 人間を捕らえ、下等搾精生物の餌としている――そういう噂も、真実には違いない。

 しかしそれはあくまで余興、私は何よりもまず生物学者でありたいと思っている。

 知られざる搾精生物の生態を解き明かすことが、私の悦びなのである。

 そこで今日は、魔界のランについて語るとしよう。

 

 さて、その前に、諸君達も目にしたことのある人間界のランの生態について。

 多くの花は、昆虫を誘い寄せて花粉を運ばせることは常識だろう。

 甘い蜜で昆虫をおびき寄せたり、特有の匂いを放ったり――

 中でも興味深いのは、ランの一部が行う「色仕掛け」。

 フェロモンや、メスに酷似した形状の花弁などで、昆虫のオスを誘うのである。

 交尾の誘惑で、昆虫を引き寄せて花粉を運ばせる――

 これこそ、「甘い罠」と言われる所以なのだ。

 

 昆虫のメスに似せた形状の花、そして性フェロモン。

 それにまんまと誘われたオスの昆虫は、その花に対して交尾を行ってしまう。

 疑似交尾――俗に、そう言われる現象である。

 この行為によりオスの体には花粉が付着し、そして遠くに運ばれるというわけだ。

 まれに、この疑似交尾の際、射精に至ってしまう雄蜂もいるらしい。

 騙された挙げ句に、花に精子を放ってしまうとは、情けない限りだ。

 このように、ランの色仕掛けは君達の住む人間界でも有名である。

 

 さて、ここで紹介するのは魔界のラン。

 魔界で生まれ、人間界にもごく少数が巣食っているという魔性のランだ。

 これらは人間界のランと酷似した生態を持ち、オスを疑似交尾に誘うのだが――

 その相手は、昆虫ではなく人間。

 驚いたことにと言うべきか、予想通りと言うべきか、魔界のランは人間を誘うのである。

 これこそ、魔性のランが人間に対して仕掛けた甘い罠。

 植物と人間の交尾――これから、その奇妙な生態を見ていこう。

 

 これは搾精ランの一種、スワロー・オーキッド。

 人間の精液を養分にして生育する、一般的な搾精植物である。

 しかし搾精ランは搾精バラなどのように、芳香で獲物を惑わすほどの魔力は持ち合わせていない。

 それゆえ搾精ランは、花弁や果肉を用いて形作った疑似女体によって人間男性を誘い寄せるのである。

 悩ましげに蠢く疑似女体に、ふらふらとおびき寄せられてしまう愚かな男。

 違和感を察しつつも、交尾の誘惑に抗える男性は少ない。

 そのまま男は、疑似女体に身を寄せてしまうのだ。

 当然ながら、その女体の股間には女性器を模した巧緻な穴が備わっている。

 そこに男性器を挿入してしまえば、柔らかな果肉の感触を存分に味わうことになるのだ。

 一分も耐えることはできず、すぐに漏れてしまうだろう。

 

 疑似女体は男の体を抱きすくめるように動き、その体をしっかり固定させてしまう。

 こうなってしまえば、穴から男性器を抜こうとしても腰を引くことができない。

 こうして始まった疑似交尾は、時に丸一日も続くことがある。

 最初は悦んでいた男も、徐々に強制快楽が苦痛となってくる。

 そこで初めて、疑似女体が自分を離してくれない――罠であることに気付くのだ。

 必死でもがくものの逃げられず、ひたすらに射精させられる状態。

 人間の男は、植物に射精を強制されることに対して深い屈辱感を抱くものらしい。

 屈辱に震える男にも、搾精ランは容赦しない。

 精液が一滴も出なくなるまで、ひたすらに射精を促すのである。

 じっとりと湿った柔らかな果肉に、粘膜そのもののぬめり――その穴は、男性器を悦ばせる機能を存分に発揮し続ける。

 こうなれば、もはやペニスは生殖器ではなく、養分の供給口も同然。

 男性器をホース同然に扱われ、己の子種を養分として吸い取られ、男は屈辱感と敗北感を散々に味わうのだ。

 そして空になるまで精液を搾り取られ、ようやく疑似交尾は終わる。

 植物にレイプされた男は、精も根も尽き果ててようやく解放されるのである。

 

 さて、今度は別のラン科植物を紹介しよう。

 ヘリカル・オーキッド――この種は人間との疑似交尾を行うものの、精液を餌とはしない。

 普通の植物と同じく、水と日光で生育するのだ。

 では、何のために疑似交尾を行うのか――それは、一般的なランと同じ。

 自分では動けないゆえに、他の生物に花粉を運んでもらうためなのである。

 例によってこの種も、花弁を変化させた疑似女体で男を誘う。

 そして、その股間に備わった特別な穴に、男のペニスを挿入させるのだ。

 しかしそこは、搾精種のような精液を吸い取る仕組みにはなっていない。

 穴の内壁は粘膜に包まれ、極小の粒子状である花粉が備わっている。

 挿入された肉棒に粘度の高い粘液を絡ませ、たっぷりと花粉をまぶす構造になっているのだ。

 それゆえ疑似成功を終えた後、男のペニスは花粉まみれになってしまう(極小なため、人間の目には見えないが)。

 しかもこの花粉の寿命は極めて長く、最長だと20年。男のペニスに付着したまま生き続けるのだ。

 そして彼が別の人間女性と性交を行った際、その花粉は、今度は女性の膣内へと移動する。

 そして子宮内で根を張り、その女性を苗床にしてしまうのである。

 つまり男は、花粉の運び屋として用いられる――その点では、普通種のランと変わらないと言えるだろう。

 

 さて、疑似性交に話を戻そう。

 つまりこの疑似性交は、ペニスに花粉をまぶすためのもの。

 それを効率的に行うため、挿入孔内部粘膜は巧緻な螺旋状になっている。

 ここをペニスが通ることにより、花粉まみれにされてしまうということだ。

 しかし、その螺旋状の構造は相当に気持ちがいいらしい。

 ねじれ、巻き付き、絡みつくような感触が味わえるのだという。

 ペニスを奥にまで差し込む段階で、男はほぼ間違いなく漏らしてしまうのだ。

 本来なら花粉をまぶすための螺旋内壁なのだが、偶然にも射精を誘発してしまう構造だということ。

 しかしヘリカル・オーキッドにとって、男の射精は全く意味がない。

 男にとっては、精子を無駄に浪費したことにしかならないのである。

 疑似交尾によって果ててしまった敗北感と屈辱感、それを抱きながら花粉の運び屋に成り下がるのだ。

 

 さて、最後に、君も搾精ランとの交尾を体験してもらおう。

 君と疑似交尾を行うのは、搾精ランの一種――バイパー・オーキッド。

 これは、人間の精子を用いて受精、生殖するタイプ。

 つまり厳密に言えば疑似交尾ではなく、交尾そのものと言えるかもしれない。

 では、人間と植物との交尾を実際に体験してもらうとしよう。

 

 君を誘うように腕を広げているのは、花弁と果肉で形作られた疑似女体。

 さあ、その腕に抱かれてみるといい。

 しっかりと君の体を抱き締め、離さなくなってしまっただろう。

 そして、君の大きくなったペニスを股間の穴へと導いてしまうのだ。

 狭い穴に、君のペニスがぬるぬると埋もれていくだろう。

 その中の感触を、たっぷりと味わってみるといい。

 まず、驚くほど温かいことに気付くはずだ。

 とろけそうな心地、というのを実際に体験している感想はいかがだろうか。

 さらに、ぬめりが凄く、簡単に奥の方まで沈み込んでしまう。

 そして奥まで分け入るにつれ、その内部は徐々にすぼまっていくのだ。

 男が最も心地良い圧迫感を与え、手早く射精に導くためだ。

 それは極上の締め付けとなって、君のペニスを悦ばせるだろう。

 こうして君のペニスは、柔らかい肉に包まれた感触に浸らされてしまったのだ。

 少しでも長く快感を味わうため、射精をこらえるのもいい。

 甘い刺激に身を任せ、すぐに精を放ってしまうのもいいだろう。

 君が放った精液は、先にも言った通り「子種」として用いられる。

 つまり君は、植物に種付けをしてしまうのだ。

 その背徳感もまた、快楽のスパイスとなるだろう。

 

 さて――しばらく射精をこらえていると、バイパー・オーキッドは手早く君の精子を搾り出そうとする。

 穴の内部で柔らかな粘膜が亀頭を包み込み、小刻みに収縮を始めるのだ。

 それはまるで揉み洗いされるような感触を生み出し、男の弱点とも言える亀頭を執拗に刺激する。

 この甘い亀頭マッサージが始まってしまえば、もう観念するしかない。

 ペニスを刺激されると、射精してしまう――その単純な事実を、君は痛感することになるだろう。

 それは人間同士の甘い交わりではなく、愛も何も介在しない。

 君の男性器は植物に支配され、射精するかどうかの判断さえ握られてしまっている。

 生殖の主導権を握られ、そして屈辱の射精に至ってしまうのだ。

 さあ、観念して思いっきり射精してしまうといい。

 君の迸らせた精液を、搾精ランは一滴も漏らさずに受け止めてくれるだろう。

 

 さて、君は搾精ランの中であえなく果ててしまった。

 より多くの精液を搾り取るべく、搾精ランは射精中のペニスを刺激し続ける。

 穴の内部が収縮し、脈打つペニスに対して、扱き出すような刺激が与えられるのである。

 こうして最後の一滴さえ尿道に残さず精液を排出させ、そして君は最高の射精感を味わうことができるのだ。

 さて、植物との疑似交尾はいかがだっただろうか。

 なお搾精ランには、何度も精液を吸われる者――リピーターが絶えない。

 「甘い罠」と知りながら、再度掛かってしまう者が後を絶たないのだ。

 植物との疑似交尾は、それだけ男にとって甘美なのである。

 

 幸いなことに、人間界に生息している搾精ランの数はそう多くはない。

 これがもっと数多かった場合、人間という種は危急存亡の危機に立たされるだろう。

 人間の男は、人同士の交尾よりも植物との疑似交尾を望むだろうから――

 さて、搾精ランの話はこれにて終わるとしよう。

 様々な搾精生物の生態について知りたい場合、また私のところへ来るといい。

 その身をもって、体験させてやるとしよう――

 

 

 魔暦12006年10の月、飼育姫エルムノアの屋敷にて

 

 



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