ホログラム娘


    

    ――それは、とある土曜の夜の出来事だった。

    

    「ああ、ミク……ミクぅ!」

    その名を呼びながら、今日も僕はPCを前に日課である自家発電に励んでいた。

    今日のオカズは、ボーカロイドの初○ミク。

    清純で清楚、ちょっとアホの子、それが愛くるしい少女――

    その画像をディスプレイに表示させながら、僕は自らの性器を激しく扱きたてる。

    「ああ……ミク、ミクー! 顔に出すよ……ううっ!」

    そして、一人でフィニッシュ。

    ディスプレイに、べちゃりと白い花火が上がっていた。

    可愛らしい少女がネギを片手に愛しげな笑みを振りまく――その画面を、精液がべっとりと汚してしまう。

    

    「しまった、つい盛り上がりすぎた!」

    射精の恍惚に浸る暇もなく、たちまち我に返る僕。

    慌ててティッシュ数枚を引き抜き、ディスプレイを拭こうとする――

    その時、画面に異変が起こった。

    にっこりと笑みを浮かべていた初○ミクが、ぱちりと瞬きをしたのだ。

    「え――何だ?」

    これは動画ではなく、静止画のはず。

    今のは、ただの見間違いだろうか。

    しかし、確かにミクの目がぱちっと――

    

    次の瞬間、さっき僕が見たものは間違いでなかったことを悟る。

    そしえ今度は、自分の正気を疑っていた。

    にゅっ、と画面の中の少女は顔を突き出してきたのだ。

    まるで、ディスプレイという扉から現実世界に這い出るかのように――

    

    「な、な、なんだ……!?」

    「〜〜〜うんしょ!」

    ディスプレイから、にゅっと突き出る細い腕。

    そして画面の枠を掴み、ぴょこんと画面から飛び出してくる少女。

    冗談のように長いエメラルドのツインテールに、くりくりした目。花びらのような唇に、大きなネクタイが印象的な服装。

    ニーソックスとミニスカートの間から覗く健康的な太腿に、露わになった肩と二の腕。

    間違いない――それは、初○ミクそのものだった。

    しかも彼女の鼻先には、僕がさっきディスプレイに放った精液が粘り着いている。

    

    「……なんだ? 君は? ど、どうなってるんだ……? は、初○ミク……?」

    地面にへたり込んだまま、僕は震える声で言った。

    「ん……♪」

    ミクは鼻に着いた精液を指先ですくい取り、ぺろりと舐める。

    たぶん、これは夢か幻覚に違いない。

    自分の妄想癖も、いよいよここまで来てしまったか……

    「ミク……? たぶん、その形で現出されたみたいだね」

    ミクはまじまじと自身の身体や服装を眺め、にっこりと微笑む。

    「えっと、ミクは――じゃなくてミクの元になったホログラム娘ってのは……

     電脳空間に存在するサキュバスの一種なんだけど……そのデータを元に、具現化?

     キャラ付けを認識して、虚像として波長の合う人の所に――よく分からない」

    いきなり説明を放棄し、ミクはそう断じた。

    自分にも分からないものが、僕に分かるはずあるか。

    「ミクって、もしかしてアホの子? そういう情報が投影されたみたいだから、うまく説明できないよう……」

    なにやら、しゅんと肩を落とすミク。

    「言ってることがまるで分からないけど……とりあえず、君は初○ミクなのか?」

    「電脳空間を利用している人達――つまり、インターネットに繋いでいるみんなだね。

     その人達の集団概念を投影して、この姿で虚像として現出されてるの。

     外見だけじゃなくて、性格とかもそのキャラそのものになってるんだよ」

    虚像として現出――すなわち、ホログラム娘。

    どうやら初○ミク本人ではないらしいが、格好だけの単なるニセモノでもないらしい。

    何やら良く分からないが、やけに手の込んだ夢か幻だ。

    

    「虚像……つまり、幻なのか?」

    僕は恐る恐る、ミクに向かって手を伸ばしてみた。

    そして肩に触れる――その直前に、まるでホログラムのようにすり抜けてしまう。

    ほんのりと温かく、その虚像は熱を持っているようだが――

    まあいい。どうせ夢や幻の類なのだから、何が起きようとOKだ。

    「で……何をしに、その電脳空間から出てきたんだ?」

    「もちろん、マスターの精液を吸うためだよ♪ 私、サキュバスなんだから♪」

    ミクは、にっこりと目を細めていた。

    どうでもいいが、清楚で天然なはずのミクが「精液」という言葉を口にする度に興奮してしまう。

    「せ、精液を――!?」

    それはつまり、このミク相手に色々してもいいということなのだろうか。

    それともサキュバスというからには、僕が色々される側なのだろうか。

    「でもミク、ぜんぜん授肉できてないの。マスターに精液貰わないと、触ることもできない……」

    そうだ。

    こちらからミクに触れられないのと同様、ミクからもこちらに触れられない。

    これでは、色々と楽しいこともできないじゃないか。

    「ど、どうすればいいんだ?」

    「最初にミクを呼び出した時みたいに、ミクに精液をかけてくれればいいの。

     ミクはマスターを触れないから、射精のお手伝いできないけど……」

    あのミクが、あの澄んだ声で「精液」とか「射精」とか言っている。

    それだけでオカズになるくらい、僕は興奮しきっていた。

    ホログラムとは言え、ミクに精液をぶっ掛ける――その背徳感。

    

    「ミ、ミク……」

    僕は床に座り込んだまま、大きくなったペニスを右手で握る。

    そしてミクの視線を受けながら、いきり立ったモノを上下に刺激する。

    ミクは微笑んだまま腰を落とし、僕の股間を覗き込んできた。

    「ミクもお手伝いしてあげたいけど、触れないの……そうだ、歌ってあげようか?」

    「いや、遠慮しとくよ……」

    オナニーの最中に歌われても、正直困る。

    それよりも、無邪気な目でじっと見詰められているのがたまらない。

    まるで、視姦されているような興奮――

    「うわぁ……ぴくぴくしてる。先っちょはぷにぷにしてるんだね……」

    股間に顔を近付け、そう口走るミク。

    その吐息が亀頭をそよそよとくすぐり、たまらない快感をもたらした。

    「あ、ミク……息が……」

    「気持ちいいの、マスター? ふぅー、ふぅー」

    楽しいことを発見したのか、ミクはにぱっと笑う。

    そしてピンク色の亀頭に向かって、断続的に息を吹きかけてきたのだ。

    「ミクの息、あったかい……あぁぁ……」

    可愛い少女が興味深そうに股間を覗き込んでいるという興奮。

    さらに、亀頭で感じるミクの息づかい。

    まるでくすぐられるような刺激に、僕は自慰をしながら身を震わせてしまう。

    サオは自分の手で刺激し、亀頭部をミクに責められているかのようだ――

    「ふぅー、ふぅー……マスター、イっていいよ?」

    無邪気に投げ掛けられた、そんな言葉がとどめになった。

    「あ、あうっ!」

    僕は、本能の赴くままに白濁をまき散らせてしまう。

    尿道から迸った精液は、じっと覗き込んでいたミクの鼻先に降りかかった。

    「やっ……!」

    精の迸りを受け、僅かに怯むミク。

    その可愛い顔に、ぴゅっ、ぴゅっと白濁が飛び散っていく。

    少し顔を背けたものの、直撃は避けられなかったのだ。

    「あ、ああぁぁ……」

    ミクの綺麗な顔を、精液で汚してしまう背徳感。

    精液はミクの頬や鼻先に飛び散り、ねっとりと糸を引く。

    しばらくしてようやく射精は収まり、ミクの顔は精液でドロドロになってしまった。

    

    「いっぱい出たから、びっくりしちゃった……♪」

    白濁を頬や鼻先に付着させたまま、にっこりと微笑むミク。

    それは糸を引いて垂れ、黒の上着やエメラルドのネクタイさえ汚していく。

    その姿に、勃起が萎える気配はない――

    「じゃあマスター、今日はおしまい」

    「ええっ……!?」

    ミクの突然の言葉に、僕は落胆を隠せない。

    ここから先、実体化したミクと色々できる――そう思い込んでいたのに。

    「ミクはそんなに力がないから、精液もらってもすぐに実体化できないの。

     じっくり一晩コトコト煮込んで、栄養に換えないと……」

    一晩ということは、続きは明日になるのだろうか。

    「マスター、明日はみっくみくにしてあげるからね――♪」

    そう言い残して、ミクはディスプレイの中にしゅるんと戻ってしまった。

    彼女の姿は画面に吸い込まれ、なにかの冗談だったかのように部屋から消え去る。

    僕は床に座り込み、肉棒を握りしめたまま呆然とするのみだった。

    今のは、非常にリアルな夢――だったのだろうか。

    

    

    

    

    

    

    ――そして一晩が明け、今日は日曜日。

    

    昨夜のことを、僕は冷静に思い返してみる。

    どうやら昨日は非常に疲れていて、アレな幻覚を見てしまったらしい。

    初○ミクが画面から飛び出て、オナニーを鑑賞してくれた――など、妄想としても危なすぎる。

    ともかく、今夜も日課に励むとするか――

    

    「マスタ〜〜♪」

    しゅるん……と、ディスプレイから少女が飛び出してきた。

    変わった服装に、エメラルドのツインテール、そして愛らしい顔。

    PC用の椅子に座ったまま、呆然とする僕の前に立つミク――

    その姿は、昨日見た幻と全く同じである。

    

    「うう……病院に行った方がいいかな、こりゃ」

    「マスター、お体の調子が悪いの? 元気が出る歌、歌ってあげようか?」

    僕の顔を、ミクは心配そうに覗き込んできた。

    「いや……大丈夫だよ」

    「よかった! でもね、その……授肉が、あんまり上手くいかなくて……」

    ミクはみるみる顔を曇らせ、しょんぼりと肩を落とす。

    「あのね、足だけしか実体化できてないの……」

    「足だけ……?」

    僕は手を伸ばし、ミクの足首を掴んでみる。

    そのスベスベのニーソックスと、弾力と温もりに満ちた肉の感触が掌から伝わってきた。

    「本当だ。実体化化してる――あれ?」

    足首からすね、そして膝――そこから上の、肉の感触は消失していた。

    膝から上は、やはりホログラムのようにすり抜けてしまうのだ。

    「……もらった精の量が少なかったのかな? 膝から下しか実体化できなかったの」

    ミクはしょんぼりと肩を落とし、僕の前に立つ。

    「だからマスター、もっと精液もらっていい?」

    「そりゃ、いいけど……また自分ですればいいわけ?」

    ミクに観察され、亀頭に息を吹きかけてもらいながらのオナニー。

    それはそれで気持ちいいが、どこか寂しい気もする。

    

    「もっと手伝ってあげたいんだけど……足だけじゃ難しいかなぁ?

     ちょっと待ってね、電脳空間から方法を検索してみるから――」

    ミクはおもむろに、ディスプレイに向かって右手をかざした。

    ビビビッと画面からは電光が弾け、その掌に迸る。

    数秒ほどミクは静かに目を閉じ――そして、その目がにっこりと笑った。

    「分かった、踏んであげればいいんだ〜♪」

    「お、おい……!?」

    PC用の椅子に座る僕を前に、ミクはゆっくりと片足を上げた。

    黒のニーソックスで包まれている、形の良い足。

    そのつま先で、ズボンの上から股間に触れてくる。

    最初はつんつんと、そしてやや体重を乗せてぐにぐにと――

    「あうっ……!」

    その感触に、僕は思わず身悶えしてしまった。

    しかしミクは、すぐに足を離してしまう。

    「マスター、椅子に座ってるから踏みにくい……」

    むー、と表情を曇らせ、ミクは呟く。

    「ねぇ、ミクの足元で寝転がってほしいな」

    「えっ……?」

    「イヤ? ミクにふみふみされたくないの?」

    「……」

    ミクの、あの柔らかそうな足裏で踏まれる――それを思っただけで、股間はいきり立っていた。

    僕は椅子から腰を上げ、言われたままミクの足元に寝そべる。

    ズボンや下着を落とし、腹を見せながら仰向けになる――

    それはまるで、ミクに屈服して服従してしまったような不思議な屈辱感。

    愛らしい少女の足元に寝転がることで、興奮は駆け上がっていった。

    

    「マスターのおちんちん、ぴくぴくって震えてる……じゃあ、踏むね?」

    ……むにゅっ。

    ニーソックスに覆われたミクの足裏が、ゆっくりと股間に乗せられる。

    肉棒の裏筋から根本にかけて、ミクの温もりがじんわりと伝わってきた。

    ミクに踏まれている――それだけで、興奮が頂点に達しそうになる。

    「あ、あぁぁ……」

    「マスター、気持ちいい? おちんちん踏まれてるのに気持ちいいの?」

    ふにふに、すりすり……

    無邪気にそう尋ねながら、ミクはペニスを踏みつけにしている足をゆっくりと動かしてきた。

    痛みのないように調節しつつ体重を乗せ、時にはぎゅっと強めに踏みつけてくる。

    かと思えばスリスリとつま先や足指をペニスに擦り付け、ニーソックスのサラサラ感を味わわせてくれる。

    甘く嫐るような感触に、僕は恍惚に浸っていた――

    「あはは♪ みっくみくになっちゃえ〜♪」

    「……ひぃ! ひあああぁぁぁ……!!」

    そんな僕の恍惚は、あっという間に身をよじるような強制快感に変わっていた。

    突然にミクは、膝を小刻みに震わせ始めたのである。

    それはまるで、電気アンマそのもの。

    ペニスを踏みしめては緩め、その素早い脚使いで男を悶絶させる責め。

    「あ、あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜!!」

    ぐに、ぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐにぐに……!

    ミクの足裏は甘美なバイブレーションを繰り出し、ペニスをぐにぐにと弄んでくる。

    全身の力が抜け、身体の奥底から震えが沸き上がってきた。

    それは、股間に浴びせられる強制的な快感。

    足の裏全体がペニスを優しく揉み潰し、時にはぐりぐりとひねるような刺激さえ与えられる。

    当然ながら痛みをほとんど感じさせない、練達した足遣い。

    これが、電脳空間とやらからデータを検索した成果か――?

    

    「ミ、ミク……! あぐぅぅぅぅぅ、ひぁぁぁぁぁぁ……!!」

    「マスター、何言ってるのかわかんない……気持ちよくないの? もっと早い方がいいの?」

    ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり、むにむにむにむに……!

    ミクの足さばきは徐々に早くなり、小刻みに繰り出される圧迫に僕は追い詰められていく。

    あまりの快感に全身がブルブルと震え、腕がじたばたと勝手に動いてしまうほど。

    ミクは驚くほどの器用さで、僕の両足を掴まずに電気アンマ同様の刺激を与えてくるのだ。

    腰の力がじんわりと抜け、射精どころか尿すら漏らしてしまいそうなほどの感覚。

    このままミクに足蹴にされ、ペニスを踏みにじられてイかされてしまう――

    

    「あぁ、ミクぅぅ……! も、もうダメ! で、出そう……!!」

    「ダメだよ、マスター。まだイかせてあげないから♪」

    にんまりと笑いながら、ミクは足の親指と人差し指をニーソの上から器用に使い――ギュッと摘んできた。

    なぜか根本ではなく、敏感な先端の方を。

    亀頭をぎゅっと挟み、裏筋やカリの少し上を足指で締め付けられる感触――

    それは射精をせき止めるどころか、むしろトドメの刺激になってしまった。

    

    「あ、ミク……! あああああぁぁぁぁッ!!」

    「あー! マスター、まだダメなのにー!」

    ミクに咎められ、その足裏の感触を受けながら僕は絶頂していた。

    びゅく、びゅく、びゅく、とペニスが脈動し、快楽の液体を放出する。

    噴き出した精液はミクの黒ニーソに降りかかり、黒と白の淫らなコントラストを形作ていく――

    「あれぇ? なんで出ちゃうの……?」

    射精している間にも、ミクは亀頭部を足の指でグニグニといじくり回す。

    それがたまらない心地となり、射精中のペニスに強い快感を与えてきた。

    「あう、ミク……! それ、感じすぎて……ああぁぁぁ!!」

    当然ながら射精中のペニスは無防備で、その先端は敏感。

    そこを徹底的に責め上げられたのだから、たまらない。

    射精が完全に終わるまでミクの足指いじりは続き、僕は最後の一滴を出し切るまで弄ばれたのだった。

    

    「あ、あぅぅ……」

    ミクの足元で、僕は茹でダコのようになって転がるのみ。

    黒のニーソックスに包まれた右脚にはねっとりと白濁が粘り着き、それは膝まで達するほど。

    我ながら、ずいぶんたくさん撒き散らしたものだ。

    「なんでだろ。寸止め、失敗しちゃった……」

    僕を完全に屈服させた少女はというと、不思議そうに首を傾げていた。

    どうも最後の足指亀頭責めは、射精の寸止めをするつもりだったらしい。

    しかし射精を止めるなら、先ではなく根本だ。おかげで、とんでもなく気持ちいい射精が味わえてしまった。

    ともかく、電脳空間からの検索とやらは決してパーフェクトじゃないらしい。

    

    「もっともっと、マスターをみっくみくにしちゃいたかったのに……ま、いっか」

    ミクは自分で勝手に納得した後、にっこりと微笑んだ。

    「これだけ精をもらったら、今度こそ授肉できるかな? じゃあ、また明日ね♪」

    そう言い残して、しゅるんとディスプレイに戻っていくミク。

    「あ、おい……!」

    止める間もなく、エメラルドの長い後ろ髪がひゅるりと引っ込んでいく。

    ディスプレイに残ったのは、何の変哲もない初○ミクの画像のみ。

    僕は存分にみっくみくにされ、床に転がっていたのだった。

    

    ……それにしても、実にリアルな夢である。

    こんな夢なら大歓迎のような気もするが、精神が徐々に病んでいくのはやはり怖い。

    これは、誰かに相談した方がいいのかもしれないな――

    

    

    

    

    

    あれから二日目、月曜日の昼下がり。

    

    僕は高校生の身の上、月曜からは学校がある。

    食堂にて長机を挟み、いつものように昼食を貪る僕と親友の田中。

    「実は……昨日の夜、PCのディスプレイから初○ミクが出て来たんだよ」

    「あ、ああ……?」

    カレーパンを食べる手を止め、田中は目を丸くしていた。

    「それでミクは……足コキしてくれたんだ」

    「そうか……」

    田中は腰を上げると、ノーコメントのまま食堂から出て行ってしまった。

    なんとも薄情な奴だ。

    

    

    そして、その日の夜がやって来る。

    今夜もディスプレイから這い出してきたミクは、長々としたネギを手にしていた。

    

    「マスタ〜……」

    出てくるなり、ミクは何とも浮かない表情を見せる。

    いつも元気なイメージのあるミクが悲しそうにしていると、こっちまで辛い気分だ。

    「また、授肉とやらがうまくいかなかったのか?」

    「うん……そう言うマスターも、元気ないみたいだね」

    「いや……正直、幻覚ながら美味しいなとは思ってるんだけど。

     やっぱり刻一刻と壊れつつある自分を自覚して、辛い気分になるというか……」

    「アイデンティティの危機なの、マスター? ミクもまた授肉に失敗しちゃったの。

     ちょっとずつ実体化してはいるんだけど――えい」

    ぺち、とミクはネギで僕の頭を軽く叩いていた。

    それは僕の頭に当たった――すなわち、触れることができる。

    「ネギが、実体化したのか……?」

    「これはただのオマケ。さすがにネギじゃマスターの射精をお手伝いできないし……」

    ミクは、ぽいっとネギを投げ出していた。

    さすがに、ネギコキなんてあまりにマニアックすぎる。

    「それで、またミクの一部分だけが実体化しちゃったの……ほら」

    そう言いながら、ミクはずいと胸を突き出してくる。

    そんなポーズにもかかわらず、ミクの胸は相変わらずちいさい。

    「もしかして、おっぱいが実体化したのか……?」

    ミクの胸に手を伸ばすも、おっぱいには触れられないまま突き抜けてしまった。

    「ううん、おっぱいじゃなくて……ネクタイ」

    「ネ、ネクタイ……?」

    ミクのトレードマークの一つである、エメラルド色の大きなネクタイ。

    それが実体化したというのか――?

    

    「あ、本当だ……」

    確かに、そのネクタイにはこの手で触れることができた。

    サテンのスベスベ感触が滑らかで、非常に手に優しい。

    それにしても、足に続いてネクタイとは――なぜ、そんな部分的にしか実体化されないのだろう。

    「身体や衣服の末端から、じんわりと実体化してるみたいなの……」

    ミクはそう言った後、気を取り直したように笑った。

    やはり、ミクは無邪気に笑っている方が可愛らしい。

    「ねぇ、マスター。ネギとネクタイ、どっちがいい?」

    そして、そんな質問を投げ掛けてくるミク。

    それは――当然ながら、お手伝いの話か。

    ネギよりはやっぱり、ミクが身につけているネクタイの方がいいだろう。

    「う〜ん……ネクタイにしようかな」

    「じゃあ、ネクタイで射精のお手伝いするね♪ さっそく方法を検索して――」

    ミクがディスプレイに手をかざすと、ビビッと情報が送信されてくる。

    さすが電脳世界、ネクタイコキまでカバーしているとは恐ろしい。

    「なるほど、こうすればいいんだ……マスター、おすわり!」

    僕はというと準備万端、すでにズボンも下着も脱いでいる。

    彼女の指示に従うまま、僕は大股開きで座り込んでいた。

    ミクはその股の間にしゃがみ込むと――両手でネクタイを掴んで、ゆっくりと股間に近付けてくる。

    そして、滑らかな感触がペニスに密着してきた。

    

    「ミクのネクタイ、スベスベでしょ、マスター?」

    「……ああ。思ったより、気持ちいいな……」

    さらさらさら……と、ネクタイの感触が肉棒の表面を滑る。

    ネクタイでペニスを撫でさすり、くすぐり回すような責め。

    スベスベの感触とこそばゆい感覚が合わさり、えもいわれぬ刺激を生み出す。

    早くも先端からは先走り液が滲みだした――それをミクは目敏く捉えていた。

    「あっ! おちんちんからヨダレ……」

    しゅ、しゅしゅ……

    ネクタイの表面で、軽く亀頭の滴を拭き取るミク。

    スベスベの感触が敏感な先端に押し付けられ、そして液を塗り広げられるような刺激――

    「あうっ!」

    その強めの快感に、僕は思わず腰をガクンと揺さぶってしまった。

    「マスター……これ、弱いんだ……」

    「あ、あうぅぅぅぅ……ミ、ミク……」

    ミクはにんまりと笑うと、ネクタイでの亀頭いじめを開始した。

    敏感な表面粘膜をサラサラのネクタイでくすぐり、その感触をたっぷりと味わわせてくる。

    亀頭がじっくりといじくられ、くすぐられる感触――

    先走り液は絶えず溢れ出て、ネクタイの表面を汚していった。

    「こちょこちょ……さわさわ……」

    ネクタイが亀頭をさすり、裏筋を撫で、カリをなぞる――

    そんなソフトにくすぐるような刺激は、徐々に包まれるような感触に変わっていった。

    ミクはネクタイでペニスを撫でさするだけに飽きたらず、しゅるしゅると巻き付けてきたのだ。

    「マスターのおちんちん、ぎゅうぎゅうにしてあげる」

    たちまちペニスは根本までネクタイで巻き上げられ、肌の部分が見えないほどにされてしまう。

    縛るというほどにはキツくない、ほどよい圧迫感。

    根本から先端までネクタイに覆い包まれ、その屈辱感と背徳感は相当なものだった。

    僕のペニスはもはやミクに捕らえられ、好きなように嫐られるしかないのだ。

    

    「えへへ、マスターのおちんちんぐるぐる巻きー♪」

    「あ、ああああぁぁぁ……!!」

    しゅるり、しゅるしゅる……ぎゅっ、ぎゅっ……!

    サラサラの素材がペニスに巻き付き、そして優しく締め上げてくる――

    ミクは巧みに、くいくいと締めては緩めを繰り返しているようだ。

    その波打つような圧迫感が、まるで扱かれているような感触をペニスに与えてくる。

    ミクに弄ばれているような屈辱感もたまらない。

    「ミク、気持ちいいよぉ……ああッ!!」

    「えへへ、みっくみくになっちゃいそう?」

    根本は緩めに、感触を与える程度に。

    サオはくすぐるように、時に締め付けるかのように。

    亀頭はきゅうきゅうと締め付け、こすこすと器用に擦り立て――

    ネクタイを巻き付けての器用すぎる責めに、僕はとうとう限界を感じ始めていた。

    ぞくぞくするような射精感が背筋を駆け上がり、股間に出口を求めてきたのだ。

    

    「あ、もう……! で、出る……!」

    「マスター、気持ちいい? ネクタイでおちんちん締め付けられて、精子もれちゃう?」

    ミクは微笑みながら、とどめとばかりに亀頭をぎゅっぎゅっと締め付けてくる。

    ネクタイの表面がカリに擦れる感覚が合わさり、そのまま射精まで追い詰められてしまった。

    「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ――!!」

    どくっ、どくっ、どくっ、とネクタイに包み込まれたままペニスが脈動する。

    漏れ出た白濁液はネクタイの表面に染み込み、じゅるじゅると溢れ出していた。

    射精が終わるまでネクタイはくいくいと締め上げられ、強制的に刺激が与えられる。

    「ふぁ、あぁぁぁぁぁぁ――」

    それを味わいながら、僕は最後の一滴までを出し尽くしたのだった。

    

    「……はい、いっちょあがり」

    しゅるしゅるとペニスからネクタイを解き、満面の笑みを浮かべるミク。

    ネクタイにはドロドロの精液が粘り着き、それがミクの黒い上着にもくっついて糸を引く――

    その光景は、息を呑むほどエロティックだった。

    「こんなに貰っちゃった♪ 次は、ちゃんと授肉できるといいな……じゃあマスター、また明日ね!」

    「あっ、おい……!!」

    声を掛ける間もなく、ミクはディスプレイの中にひゅるりと戻っていく。

    僕はみっくみくにされた状態で、一人虚しく部屋に放置されたのだった。

    ……しかも、ネギを部屋に置きっぱなしのままだ。

    

    

    

    

    

    

    ――三日目、火曜日の朝だった。

    

    「ふぁ〜」

    夜にエキサイトしているせいか、最近は朝が辛い。

    今日も学校の準備を――あれ?

    「ネギだ……」

    部屋の隅には、元気の良い長ネギが無造作に転がっていた。

    これは確か、昨晩にミクが忘れていったもの――

    「まさか、幻覚なんかじゃなかったのか……!?」

    あれは、疲れた僕が見ている夢のようなものかと思っていた。

    だが、あれは現実。

    ホログラム娘なるサキュバス?

    それとも、ボーカロイドのミク?

    何が何やら良く分からないが、ともかくあれは現実のものだったのだ。

    

    

    そして、昼下がりの食堂。

    

    「おい田中! 初○ミクがディスプレイの中から現れて、イイ事してくれて、ネギまで置いていったんだ!!」

    「ああ、そうか……そいつはよかったな」

    不憫そうな視線を僕に投げ掛け、田中は頷いた。

    「見ろ、これがミクの置いていったネギだ!」

    僕がそのネギを見せるも、田中は不憫そうな顔を隠そうとしない。

    「明日まで待ってくれ。いい病院を調べてやるからな……」

    そう言って、田中は食堂を去ってしまった。

    

    

    そんな、その日の夜。

    

    「えーん! マスター!」

    ディスプレイから這い出して来るなり、ミクはわんわんと泣きじゃくる。

    これは幻ではなく、紛れもない現実――

    だからどうした、という気にもなってくる。

    ミクが毎晩ディスプレイから現れるんだから、こんなに素晴らしいことはないではないか。

    「どうした、何かあったのか?」

    そんな葛藤とも言えない葛藤はともかく、僕はミクに語りかける。

    まあ、だいたい検討はつくが。

    「……授肉がね、まだできないの」

    ぐすん、と鼻を啜りながらそう呟くミク。

    やはり彼女は若干ながらアホの子なのか、実体化があんまり上手くいかないようだ。

    どうも彼女はサキュバスらしいが、あまり上等なサキュバスではないのかもしれない。

    

    「それで、今日はどこが実体化したんだ?」

    「……かみのけ」

    「髪……?」

    僕は手を伸ばし、彼女の腰まであるツインテールの髪を撫でてみる。

    「本当だ、サラサラしてる……」

    掌に吸い付くように、きめ細やかなエメラルドの髪の感触が伝わってきた。

    さらりと撫で上げて……そして、おでこのところですり抜ける。

    やはり、体や衣服の末端から実体化しているのには間違いないようだ。

    「くすん……早くミクの中で、マスター気持ちよくさせてあげたいよ……」

    「まあまあ、その気持ちだけでも嬉しいよ。それに、髪というのもなかなか――」

    ミクの髪を撫で、その感触を掌で味わっているだけで、股間は反応してしまった。

    この綺麗な髪で肉棒を刺激されてみたい――そんな邪なことを考えてしまったのだ。

    

    「あっ……マスターのおちんちん、元気になっちゃった……」

    ミクはきょとんとした表情を浮かべた後、その顔を笑みに染めていく。

    「じゃあ、今日は髪の毛でマスターの射精をお手伝い♪ 方法を検索して――」

    ミクはディスプレイに手をかざし、やはり髪でのやり方を電脳空間から検索した。

    「ああ、よろしく……って、えっ!?」

    しゅるしゅるしゅる……

    なんとミクの髪は蛇のように、手も触れないまま動き出した。

    まるで一房一房が生きているかのように、エメラルドの髪の毛は宙を泳ぐ。

    「ミクの髪の毛、自在に動かせるんだよ」

    「あっ、おい……! ああっ!!」

    しゅるしゅるしゅる……

    驚く間もなくズボンも下着もずり下ろされ、そして剥き出しのペニスにミクの髪が絡み付いてきた。

    サラサラの感触をペニス全体で味わいながら、しゅるしゅると巻き取られていく――

    その髪がフワフワと動く度に、シャンプーの甘い匂いが漂ってきた。

    その香りに酔っているうちに、ペニスは根本までミクのエメラルド色の髪に巻き上げられてしまう。

    根本やサオはもちろん、まるでマフラーのようにカリにも巻かれ、先っちょの亀頭だけがピンクをさらしていた。

    

    「あ、あああぁぁ……」

    みっちりと縛られ、痛くない程度に締め付けられ――

    何よりミクの髪の毛でペニスを包まれてしまったという興奮に、僕は声を漏らしていた。

    「ミクの髪、サラサラでしょ……♪」

    そのままミクは、くいくいと髪でペニスを締め上げてくる。

    昨晩のネクタイの時のように、締めては緩め、大蛇がじっくり獲物をいたぶるように――

    ただしその感触はネクタイとは全く異なり、サラサラで繊細。

    カリやサオで感じる髪の感触は、まるで筆先でくすぐり回されているかのよう。

    しゅり、しゅり、しゅり……と細かな音が股間から響き、淫靡さを強調していた。

    「あう、あぐぅ……」

    髪が敏感な敏感なカリに食い込んでしまうと痛そうだが、ミクは絶妙の力加減を持って刺激してくる。

    まるでペニス全体、特にカリを念入りにくすぐられ、締め付けられるような感触――

    露出している尿道からは、だらだらと先走り液が溢れ出てくる。

    それはねっとりと糸を引いてミクの髪に垂れ、その綺麗な表面を汚してしまっていた――

    「巻き巻きされて、ヨダレ垂らしてる……」

    ミクはにんまりと目を細め、別の一房を手に取ると、その毛先でさわさわと亀頭をくすぐってきた。

    尿道をさすり、そして裏筋をこそばし、敏感な亀頭全体に筆のように髪を這わせる――

    カリやサオを、じっくりと髪で締め上げながら。

    「あぐ……! ああっ!」

    そのくすぐったい快感に、僕は必死で身悶えする。

    先端を掃き清めるようにこしゅこしゅし、髪で裏筋を撫で上げてくるミク。

    その感触は、快感とくすぐったさで全身をひくつかせてしまうほどの刺激。

    髪での丹念な亀頭いじりは、まるで拷問のように続けられた。

    ミクにじっくりと弄ばれ、もはや尿道から先走りが漏れ続ける状態――

    

    「じゃあ、そろそろトドメ刺しちゃうね♪」

    ミクはにっこりと微笑み、そしてしゅるしゅると亀頭全体にまで滑らかな髪を巻き付けてきた。

    とうとうペニスは根本から先端までミクの髪に覆いくるまれ、エメラルド色に染められてしまう――

    「じゃあ、みっくみくになっちゃえ〜♪」

    しゅり、しゅり、しゅり……

    さわさわ、しゅるしゅるしゅる……

    ペニスを包む髪が亀頭をくるんで締め上げ、擦り立て、這い回ってくる。

    サラサラの感触を味わわされたまま、上下にしゅるしゅると動かされる。

    それは扱かれるような感覚であり、射精にも直結する刺激――

    それまで散々に嫐られて昂ぶっていたこともあり、その感触に耐えることはできなかった。

    

    「あぐ、ううぅぅぅぅぅぅぅ……!」

    ペニスがびくびくと脈動し、髪の中で快感に打ち震える。

    ドクドクと溢れ出した精液は、たちまち髪の外にまで染み出していた。

    白濁がねっとりとエメラルドの髪に絡んでいく――

    「出てる出てる……」

    くいくいくい……

    ミクは髪で巧みに亀頭部を締め上げ、射精中の亀頭に刺激を加えてきた。

    「あ、あぅ……! あぅぅ……!」

    その刺激でドクドクと精が溢れ出し、ミクの綺麗な髪をたっぷりと汚してしまったのである。

    

    「えへへ、いっぱい出たね……♪」

    ミクはしゅるしゅるとペニスから髪を解く。

    そのエメラルド色の髪には自分の放った精液が粘り着き、ねっとりと糸を引いていた――

    あまりにも淫らな光景に、僕は思わず息を呑んでしまう。

    そして髪を白濁で汚されたにもかかわらず、ミクはにこにこと笑っていた。

    「じゃあマスター、次こそ実体化した姿で会おうね!」

    そう言い残して、ミクはひゅるっとディスプレイの中に戻っていく。

    いつものように元気いっぱいに、ひたすらマイペースに。

    「あ、あぅぅ……」

    そして部屋には、例のごとくみっくみくにされた僕が転がっていたのだった。

    

    

    

    

    

    ――四日目、水曜日の昼休み。

    

    「なんとか見付けてきたぞ。なかなか評判もいいらしい」

    そう言って田中は、僕の机の上に精神病院のパンフレットを置いた。

    「おお田中。ミクの髪は綺麗だぞ」

    「ああ、それは良かったな。俺も付き添ってやるから、明日にでもさっそく行こう」

    通院の付き添いまでしてくれるとは、なんと素晴らしい友人なのだろう。

    口先だけの友達では、なかなかそこまではできないものである。

    ただし、問題は一つ――僕は正常だ。

    

    

    そして、夜――

    

    「そういうわけで、友達に危ない人扱いされてなぁ……」

    ディスプレイから這い出したミクに、僕は昼間のことを愚痴っていた。

    「む〜。ミクのせいで、マスターが危ない人扱いされるのは不服です」

    ミクは軽く頬を膨らませた後、指をパチンと鳴らす。

    「そうだ! 私の友達を、そのタナカとかいう人に紹介してあげようよ!

     電脳世界の住人をタナカとかいう人の家にも送ってあげたら、信じてくれると思うの」

    ふむ、それは明案かもしれないな。

    幸せをお裾分け、というやつだ。

    「そうだな……じゃあ、頼むよ」

    「了解♪ ミク、電脳世界にいっぱい友達がいるけど、どんな人がいい?」

    「適当でいいよ、適当で」

    「じゃあ、適当に……誰か来て〜♪」

    ミクの呼び声に答えるように、怪しい影がのっそりとディスプレイから這い出す。

    その男――そう、彼はとてつもなく濃い顔をしていた。

    服装は上下のツナギ、がっしりした体格に劇画風の顔付き。

    イケメンとかセレブとか、そういう安っぽい言葉は似合わない――まさに、いい男。

    

    「ウホッ! いい男!」

    挨拶のごとく、僕はそう叫んでしまう。

    「やらないか」

    不敵な笑みを浮かべ、そう言い返してくる男――阿部○和。

    「いえ……お断りします」

    ついノリで言ってしまったが、心の底から御免こうむりたい。

    ともかく、阿部さんが適当に呼ばれた電脳世界のお友達のようだ。

    ……ミクの奴、本当に適当に呼んだな。

    

    「……っていうわけで、タナカさんとかいう人の家に行ってほしいんだけど」

    「いいのかい? 俺はノンケでも構わず食っちまうんだぜ?」

    ミクの説明を理解したのかしていないのか分からないが、いちおう阿部さんは了承した様子だ。

    「じゃあ、いってらっしゃ〜い♪」

    「それじゃあ、とことんよろこばせてやるからな……」

    不敵な台詞を残して、阿部さんはディスプレイの中に引っ込んでいった。

    おそらく電脳空間とやらを伝い、田中の家に向かったのだろう。

    さて、今見たものは全て忘れることにしようか。

    

    「で、ミク……実体化の具合はどうなんだ?」

    そう言いつつも、どうせ終わっていないだろうことは想像に難くない。

    「う〜ん、それが……」

    ミクは不意にその手を伸ばし……僕の頬を、ぺとっ、と触った。

    その掌からは、ミクの温もりがじんわりと伝わってくる。

    「やっと、両腕が実体化したみたいなの。マスターを触れるのは嬉しいけど……」

    最初に両足、次にネクタイ、そして髪、とうとう両手――

    日進月歩ながら、順調に実体化してる気はする。

    次あたり、とうとう全身が実体化するのかもしれないな。

    「でも、これでちゃんとマスターの射精をお手伝いできるんだよ♪」

    目を細め、にっこりと微笑むミク。

    正直なところ、今までも十分なほどに射精の手伝いができていたが――

    「じゃあ、やり方を検索するね……」

    ミクは例によって電脳世界から情報を吸収し、そして立ったままの僕の背後に回った。

    そして、抱きすくめるようにしながら両手を僕の股間に伸ばしてくる――

    ズボンの上からでも、その手の感触は心地よかった。

    ちっちゃな掌で揉み込むようにぎゅっぎゅっと刺激され、みるみる肉棒は大きくなってくる。

    「あ、ミク……」

    「マスター、元気♪」

    ミクはズボンと下着をずり下げると、剥き出しになったペニスに両手を伸ばしてきた。

    男がオシッコをする時のように左手で根本を支え、そして右手が亀頭を襲う。

    人差し指の腹で、つんつんと尿道口をつついてきたのだ。

    「な、何を――あぅ!」

    「えへへ……」

    溢れた先走り液を指の腹ですくい取り、ぬるぬると指の腹で亀頭に塗り込む。

    「あ……! そ、それ……! はうっ!」

    尿道や亀頭先端部でにゅるにゅると円を描かれる動きに、僕は全身をわななかせて悶えていた。

    さらにミクは、五本の指を亀頭に這い回らせてきた。

    軽く掻くように、這いずるように――まるで、先端部に触手が這い回っているかのような動き。

    先走り液のぬめりをすくい取り、ぬるぬると執拗に亀頭が撫で回される。

    「あ、あぅぅぅ……!」

    その甘い刺激で、僕の頭の中はたちまち真っ白になっていった。

    上下の扱きはいっさい与えられないので、射精には直結しない責め。

    そのくすぐったい、腰をヒクつかせるような刺激は、まるで生殺しのようだった。

    「マスターの先っちょいじめ♪」

    ミクの5本の指がカリを摘むように配置され、じっくりと先端の方にまで這われていく。

    くに、くに、くに、と優しく亀頭を指先でマッサージする。

    カリを掻くように擦られ、摘むようにくにくにされる――

    そんな風にいじくり回され、僕は息を乱して喘ぐしかなかった。

    「そんな、先ばかり――あぅ!」

    「えへへ、先っぽこちょこちょ……」

    ミクの指は、もう先走り液でドロドロ。

    そんなぬめった指で亀頭をくすぐられ、いじくり回され、撫で回され――

    もはや、生殺しの限界を極めていた。

    

    「だ、だめだ……ミク、もう……イかせて……」

    「もう降参ですか、マスター?」

    ミクはにっこり笑うと、右手で親指と人差し指の輪を作った。

    まるでOKのジェスチャー、それをペニスへと近付けていく。

    「それじゃマスター、この輪をくぐらせてあげる。何回くぐったらもれちゃうかな?」

    その指の輪は、先走り液でヌルヌル。

    それを、ゆっくりと亀頭に近付けていき――

    

    ――ぬるん。

    

    「あうっ……!」

    その狭い輪の中に、亀頭がくぐらされてしまった。

    ぬめぬめとほどよい締め付けと共に押し進められ、カリの下のくびれに指の輪がフィットする。

    ゾクゾクした感覚が背筋を走り、今の一瞬で射精してしまいそうになった。

    「このままクイクイ……ってしたら、マスターもらしちゃうかな?」

    ミクはにっこりと笑ったまま、カリのくびれに嵌っている指の輪をくいくいと締め付けてきた。

    「あ……! あ、お……!」

    「ダメ〜♪ もうちょっとガマン♪」

    ずるるるるるる……

    ミクは指の輪を後退させ、にゅるんと再びカリをくぐらせて亀頭をくぐっていく。

    今度は抜くような刺激にさらされ、またしても快感がぞわぞわと背筋を這った。

    指の輪からペニスがぬるんと抜け――そして、またスローモーに挿入される。

    ゆっくりと締め上げる圧迫感を与えられながら、まるで女陰に挿入するようにニュルニュルと――

    「あ、気持ちいいぃぃ……も、もう……!!」

    亀頭を先端から傘の方へぬるりと擦られ、カリの部分を指の輪にくぐらされた瞬間――

    僕の快感は、とうとう限界に達してしまった。

    

    「あ、あぐぅぅぅぅぅぅ……!!」

    カリがくいくいと軽く締められると同時に、精液が尿道からびゅるびゅると飛び散る。

    腰をガクガクと震わせながら、僕は甘い射精感を味わっていた。

    「わっ、出ちゃった……!」

    ミクは素早く左手で亀頭部を包み、溢れ出る精液を柔らかい掌で受け止める。

    「あぁぁ、あんまりいじらないで……」

    僕は先端でミクの掌を感じ、カリを指の輪でくりくりと弄ばれながら精液を搾られたのだった。

    ミクに、指で犯された――そんな感覚を抱きながら、彼女のちっちゃな手の中で果てたのである。

    

    「いっぱい搾っちゃった♪」

    ミクは精液でべとべとの手にペロペロと舌を這わせ、にっこりと目を細める。

    「じゃあ、また明日ね」

    「あ、あぅ……」

    事が終わると、ミクはディスプレイの中にひゅるんと消えていってしまった。

    相変わらず僕はみっくみくにされ、部屋に転がってしまったのである。。

    

    

    

    

    

    ――五日目、木曜日の昼休み。

    

    田中は、今日は学校を休んでいるようだ。

    何かあったのだろうか。

    

    PPPPP……

    

    「メール……誰からだ?」

    送り主は、学校に来ていない田中。

    文面は、ただ「アッー!!!!!」とだけあった。

    

    

    そして、夜。

    

    「マスター♪ マスター♪」

    ディスプレイから飛び出して来るなり、大はしゃぎの様子のミク。

    「なんだ、どうしたんだ……?」

    「んーっ……♪」

    不意にミクは顔を近付けてきて――そして、唇を重ねていた。

    ミクの柔らかい唇、その甘く暖かな感触に僕は酔わされてしまう。

    一瞬だけのキスの後、ミクはやや恥ずかしそうに唇を離した。

    「えへ、頭が実体化したの。これからは、マスターとキスできるからね」

    嬉しそうにそう言うミクが、可愛くて仕方がない。

    頭部が実体化したということは、口でしてもらえるということも――

    「マスター、いやらしい顔……えっちなコト考えてる?」

    不意にミクは、僕の図星を突いていた。

    「ボーカロイドのお口は歌うためにあるの。おちんちん入れるところじゃないよ」

    「え……じゃあ、してくれないのか……?」

    「マスターがしてほしいのなら、してあげる」

    そう言って、ミクは僕のズボンや下着を脱がせてきた。

    さらに僕をベッドの上に座らせ、その足の隙間にしゃがみ込んでくる。

    

    「あれ……今回は、情報を検索しないのか?」

    「ミクはボーカロイドだから、お口のエキスパート。検索する必要なんてないもん♪」

    そう自信満々に言いながら、ミクはペロリと舌を出した。

    柔らかそうなピンクの舌に、ねっとりと唾液が乗っている。

    あれで舐められると思っただけで、背筋がゾクゾクするのだった。

    「じゃあ、ペロペロするね……♪」

    ミクはゆっくりと舌を伸ばし――そして、ペニスをねろりと舐め上げた。

    まずは、裏筋から先端まで。

    次に、亀頭の表側をレロレロと――

    「あぐ、うぅ……」

    微かにざらざらとした感触が、唾液のぬめりを伴って敏感な亀頭を這う――

    それはくすぐったいような、たまらない快感。

    さらにミクはペロペロと、亀頭を清めるように舐め回してきた。

    「マスター、きもちい?」

    「き、気持ちいいよ……あうっ!」

    ミクの舌先が、尿道をれろれろとほじるように舐め回してくる。

    その舌は再び亀頭を責め、アイスクリームを舐め溶かすように嫐ってくるのだ。

    ペニスはミクの唾液によって、たちまちドロドロにされてしまう。

    「ん……れろれろ」

    「あ、ああああぁぁぁ……」

    ひたすらに舐め上げられる刺激に、僕は腰をわななかせてしまった。

    ペニスそのものもびくんと揺れ、ミクの柔らかい頬にぺちゃりと当たる。

    「逃げちゃダメだよ、マスター♪」

    ミクは両手でペニスの根本を支え、逃げられないようにしてから――

    まるで拷問のように、またも亀頭に舌を這わせてきた。

    「あひ、あうぅぅぅぅ……!!」

    ミクの口技は、ひたすら舌先でちろちろペロペロと舐め回すだけ。

    それは背筋がゾクゾクとするほど気持ちが良いが、射精に繋がる性感ではなかった。

    口に咥えられたり、上下の刺激は与えられていないのである。

    ただアイスのようにペロペロ舐められるフェラ――それは、生殺しそのものだった。

    「あ、ミク……! あっ! うっ!」

    「あれ? 気持ちよさそうなのに、精液でないね……」

    不思議そうな顔をしながらも、ミクは舌での亀頭責めをやめない。

    やはり検索をしなかったからか、やり方を完璧に間違っているのだ――

    

    れろーり、ねろねろ、れろれろ……

    

    「ひっ、あぐ……あああぁぁぁぁ……!!」

    敏感な亀頭に、ひたすら与えられる執拗な刺激。

    滲みだした先走り液はあっという間に舐め取られ、唾液と混じってしまう。

    チロチロと舌先で散々に尿道を嫐り、れろんれろんと舌全体で亀頭表面を弄び――

    ミクのペロペロ攻撃で、僕の呼吸は乱れきっていた。

    「あふ、ミク……気持ちいいけど……あうぅ!!」

    「マスター、何言ってるのか分かんない……」

    そう言いながらもミクは、生殺しのペロペロフェラをやめようとしない。

    よがり狂う僕の様子を観察しつつ、なぜ射精しないのか分からないのだ。

    「……あうぅ!!」

    その舌が裏筋をねろねろと舐め回した瞬間、僕は腰をびくんと震わせていた。

    この刺激は、射精に繋がるような感覚――

    「ミ、ミク……そこ……」

    「ここ? ここが気持ちいいの?」

    ねろねろ……れろっ。

    ミクはにっこりと笑い、裏筋を舐め上げてきた。

    舌を尖らせてほじるようになぞらせ、舌表面を柔らかく押し当てて亀頭裏全体を刺激し――

    その裏筋責めで、一気に射精への感覚が跳ね上がっていた。

    

    「あぁぁ、ミク……! で、出る……!」

    次の瞬間、快感が弾けてしまう。

    びゅるんと飛び出した白濁の塊は、ミクのおでこにまで跳ね上がって粘り着いた。

    しばらく焦らされたからか、その量は驚くほど多い。

    「あは♪ 出た出た……♪」

    ミクは、射出のたびにびくびく脈動する亀頭を再び舐め回してきた。

    びゅくびゅく精液を溢れさせている尿道からカリまで、容赦なく舐め尽くす――

    「ふぁぁぁぁぁぁぁ……」

    ミクにペロペロと舐め回され、舌で弄ばれながらの射精。

    十数度に渡る脈動で精液を撒き散らし、それをミクの顔に浴びせ掛けていた。

    そして射精が終わり――ようやくミクは唾液の糸を引きながら、ペニスから舌を離す。

    

    「ボーカロイドのお口、気持ちよかった?」

    「あ、あぁぁ……」

    あれは完全に、フェラのやり方を間違っている。

    散々によがり狂わされて疲れ果て、僕はベッドから起き上がる気力すらなかった。

    「よ、良かったよ……」

    それでも顔に精液を付着させたままニコニコ微笑んでいるミクを見ていると、文句も言えなくなってしまう。

    「やった♪ じゃあ、また明日ね♪」

    そう言い残し、するりとディスプレイの中に戻っていくミク。

    相変わらず、元気いっぱいのマイペース。

    散々みっくみくにされた僕は、ベッドに横たわったまま動けない。

    そして疲労のあまり、意識が遠のいていった――

    

    

    

    

    

    ――六日目、金曜日の帰り道。

    

    通学路である公園前を歩いていると、田中の姿を見掛けた。

    ツナギの服を着て、澄ました顔でベンチに座り込んでいる。

    道を行く人達は、あからさまに眉をひそめ避けて歩いていた。

    

    「……やあ。俺は新しい世界を見てしまった」

    田中は僕を見つけると、穏やかな微笑を浮かべて語りかけてくる。

    そのまま僕は目を合わせず、家への道を急いだのだった。

    

    

    そして、夜――

    

    「う〜」

    ディスプレイから出るなり、ケンカする猫のように唸るミク。

    実体化に何日も掛かっているからか、ご機嫌ナナメな様子だ。

    どうやら、まだ今日も授肉とやらが終わっていないらしい。

    「……で、今日はどこが実体化したんだ?」

    「おっぱい……」

    ミクは自身の小振りな胸に両手をやり、ふにふにと揺する。

    ……が、さほど大きさがないせいで、揺れているとは言えそうにない。

    揺すっているのであって、揺れているのではない――このニュアンスが分かるだろうか?

    まな板ではない。確かに膨らみは認められるが、これは……難しいところだろう。

    

    「う〜ん、今日は『お手伝い』できないかもな。その胸じゃ……」

    「ミク、おっぱいあるもん! おちんちん搾れるくらいあるもん!」

    おもむろにミクは、ぼむんと体当たりを仕掛けてきた。

    「おうっ!」

    僕は弾き飛ばされてベッドの上に転がる――

    そして仰向けになった僕の上に、ミクがのしかかってきた。

    あっという間にズボンと下着が脱がされ、股間を胸でプレスしてくる。

    「おい、無理するなよ……」

    「無理してないもん!」

    ミクはペニスを掴み、そのまま自分の胸へと押し当ててきた。

    服の上からおっぱいの間(谷間と言うほどではない)に押し当てられ、そのまま左右からぎゅっとプレスされる。

    両手を使って左右から圧力を掛けると、何とか挟めるくらい。

    こうして服の上から、僕のペニスはミクの胸に挟み込まれてしまった。

    ぷにぷにの感触が左右からぎゅっと押し付けられてきて、驚くほど気持ちが良い。

    「あ……意外に気持ちいい。ミクの胸、ちっちゃいけど柔らかくてぬくぬくで……」

    「ちっちゃくないもん!」

    ミクは執拗にそう主張し、胸をぎゅうぎゅうと押し付け、ペニスを挟んだままきつく寄せてきた。

    服の上からではあるものの、その上着の素材は驚くほど薄く、ミクの肌の感触が直に伝わってくるのだ。

    その柔らかな肉厚と弾力がたまらない。

    しかし胸の合間に深みが足りないからか、肉棒はおっぱいとおっぱいの間からこぼれそうになってしまう。

    「ダメ、逃がさないから……」

    ミクはおっぱいに押し当てていた掌を広げ、両指でペニスを胸の間に戻してしまう。

    そのまま左右の指を組むようにしてロックし、肉棒は胸の合間から抜けなくされてしまった。

    「射精するまで逃げられないよ。ミクのおっぱいで、みっくみくにしちゃうんだから」

    

    ……むにゅっ、むにゅっ、むにゅっ。

    ミクのちっちゃなおっぱいが、弾力を込めてペニスを圧迫してくる。

    柔らかい圧力がペニスを締め付け、胸の間を塞いだ手が胸板へと肉棒を押し付けてくる。

    そのまま身体全体を上下に動かされると、その指の段々がカリにほどよく擦れてたまらない感触を生み出した。

    ペニスの裏側から真横にかけては、ミクの柔らかおっぱいに包まれてとろけるように気持ちいい。

    「あ、ミク……、気持ちいい……」

    「おっぱい、ちっちゃくないでしょ? ちゃんと挟めてるでしょ?」

    挟めているかどうかは微妙、むしろ押し付けられていると言った方が正しい。

    それでも上下の動きでペニスの裏側がむにゅむにゅと擦り立てられ、たちまち腰がとろけてくる。

    「あ、あぐ……ううっ!」

    「もう降参なの、マスター? ミクのおっぱいでもれちゃうんだ……」

    「あ、ああああ……」

    負けたような気分を味わいながら、僕はみるみる追い詰められていく。

    いかに我慢しようとしても、むにむにの弾力で絞り上げられ、上下に揺すられる感覚は絶品。

    先端からは先走り液が溢れ、ミクの黒い上着を汚している。

    驚くほど早く、しびれるような射精感が沸き上がってきた。

    

    「ダメだ、もう出そう……」

    「えへへ。ミクの勝ち〜♪」

    とどめを刺すべく、ミクは胸をぎゅ〜っと締め付けてきた。

    柔らかいおっぱいにペニスを両側からプレスされ、快感が頂点に達する。

    「あ……! あ、あああぁぁ……!!」

    びゅく、びゅく、びゅく……と柔らかい弾力の中で精液が迸っていた。

    それは胸の間にたっぷりと放出され、ミクの細い首や顎の辺りまで飛び散ってしまう。

    「ほらほら、ミクのおっぱい気持ちよかったでしょ♪」

    ミクは嬉しそうに胸を締め付け、ぎゅうぎゅうとペニスを圧迫し続ける。

    こうして僕は、最後の一滴までミクの胸に搾られてしまったのだ――

    

    「はい、おわり♪」

    ミクはぴょんと飛び退き、にっこりと笑った。

    胸元や首を精液でべとべとにしたまま目を細め、ベッドの上に伸びる僕を見下ろす。

    「あと実体化してないのは、おなかのところ……次に会った時は、授肉が完全に終わってるからね♪」

    確かにもう、残る箇所は腹部から下腹部だけ。

    そう言えば――明日はちょうど、ミクが初めてディスプレイから出て来てから一週間にあたる。

    「じゃあ、また明日。待っててね、マスター♪」

    そう言いながら、ミクはさらりとディスプレイの中に戻っていった。

    今日もみっくみくにされ、魂を抜かれたかのような状態でベッドに転がる僕。

    いよいよ、明日にはミクが完全に実体化する――

    そんな感慨を胸に抱き、明日を待つのだった。

    

    

    

    

    

    

    ――そして、七日目の土曜日。

    あれから、ちょうど一週間。

    ミクがディスプレイから飛び出してきてから、もう一週間が経ったのだ。

    

    「マスター♪ マスター♪」

    ミクは画面から現れるなり、体当たりをするかのように抱き付いてきた。

    「わっ、いきなりなんだ……!?」

    「やっと、授肉が終わったんだよ! ほら、おなかもあそこも――」

    「どれどれ……?」

    その股間に手を伸ばそうとする僕の頭を、ミクはぺしっとネギではたいていた。

    「マスター、デリカシーないです!」

    「ご、ごめん……」

    恐縮する僕を、ミクはせっせとベッドに横たわらせ――

    そして、横になった身体をゆっくりと跨いでくる。

    「えへへ♪ これで、マスターとひとつになれるね……」

    そう言いながら、ミクは短いスカートをゆっくりとめくり上げていた。

    なんと、その下はノーパン。

    清楚なはずのミクだが、そこらへんはホログラム娘的なサキュバス補正が掛かっているらしい。

    「……おいおい、さっそくなのか。デリカシーがないんじゃなかったのか?」

    「む〜。ミクの中に入りたくないの?」

    「そうじゃないけど……さっきは、僕にあんなこと言っておいて……」

    文句を言う振りをしつつも、僕の視線はミクの秘部に吸い寄せられていた。

    とても小さく、可愛らしく、控え目な女陰。

    綺麗なピンク色で、ぴっちりと引き締まっているような感じがする。

    僕の視線は、その一点に吸い寄せられてしまった。

    「ミクの中、気持ちいいよ? おちんちん昇天させちゃうよ?」

    「あ、ああ……」

    ミクの言葉に、僕は興奮を隠せない。

    そのままミクは後ろ手で、僕の下着を剥がしてくる。

    すでに屹立している肉棒がぴこんと跳ね上がり、外気にさらされた。

    その上を跨ぎながら、ミクは僅かに頬を紅潮させつつ微笑む。

    

    「じゃあ……入れちゃうね、マスター」

    そのまま、ゆっくりと腰を落としてくるミク。

    ピンク色の入り口と、亀頭の先端がぴっとりと密着する。

    そこから、じんわりとミクの温もりが伝わってきた。

    その穴から溢れ出した淫液が、僕のペニスをぬらぬらと濡らしてくる。

    「……えいっ♪」

    

    ぬぷ、ぬぷぷぷ……

    

    ミクは一気に腰を沈め、その狭い肉洞に僕の肉棒を呑み込んでしまった。

    その中はキツキツでヌルヌル、驚くほど温かく、そしてドロドロしている――

    「あう……ミク、気持ちいい……」

    「えへへ……ミク、さきゅばすだもん。この中に入れちゃったら、マスターなんてすぐにヒモノにできちゃうよ?」

    騎乗位の体勢のまま、ミクは僕を見下ろしてニコニコと笑った。

    可愛らしい顔、無邪気な表情でそんなことを言われる屈辱。

    実際のところ、ミクに組み伏せられて犯されているに等しいのだ。

    「あぐ……! それは、やめ……」

    「大好きなマスターに、そんなことしないけどね。どうどう? みっくみくになりそう?」

    「あ、あぁ……」

    ミクは僕の上に跨ってペニスを咥え込んだまま、まるでオシッコをするような姿勢で固まっていた。

    まるで腰を動かしていないにもかかわらず、その中は徐々に僕を追い詰めていく。

    肉がじっくりと絡み付き、ねっとりと締め付け、圧迫感を増していくのだ。

    まるで、中で搾られているかのように――

    

    「ミクの中に、マスターのおちんちんが入ってるんだよ?

     ミクのピンク色のお肉におちんちん包まれて、ヌプヌプされて、キュウキュウされて……

     それで、ミクに精液吸われちゃうんだよ……?」

    そんな淫語を口走りながら、ミクは頬を紅潮させる。

    それでも腰は動かさず、静かに包み込んだまま僕を責め嫐ってくるのだ。

    まるで肉が何重にも重なっていくように、ペニスを包む柔らかでねとついた圧迫はきつくなっていく。

    内部がヒクヒクと収縮し、その度にぎゅうぎゅうと締め付けられる――

    

    「あ、ミク……! もう……!」

    「もう我慢できないの? マスター、すぐもらしちゃうんだから……」

    くすり、とミクは笑い、中をきゅっきゅっと締め上げてきた。

    「ミ、ミク……! あぁぁぁぁぁ……!!」

    その締め付けに屈服し、僕はたちまちミクの中で昇天してしまう。

    狭い蜜壷の中に、どぷどぷと白濁を注ぎ込む――それは、夢のような快感。

    射精している間にも、膣肉はペニスを巻き込んでぎゅうぎゅうと締め嫐ってくる。

    「あ、あぁぁ……」

    搾り取られている――僕は、その狂おしい射精感を存分に味わっていた。

    射精の脈動が終わり、最後の一滴を出し切るまで、ミクの中は心地よく締め付けてくれたのである。

    

    「はぁ、はぁ……き、気持ちよかった……」

    「えへへ、まず一回……♪」

    ミクは僕を見下ろしながら、そう言って目を細めていた。

    「え――? まさか、まだ――」

    「せっかく実体化したんだから、もっとみっくみくにしてあげる♪

     もっとマスターと繋がって、もっとマスターを昇天させてあげるの。ミクの中で、何回果ててもいいからね」

    ゆっさ、ゆっさ、ゆっさ……

    女の子がオシッコする時のようにしゃがみ込んだまま、ミクは腰をゆさゆさと揺さぶってきた。

    挿入されたままのペニスが、蜜壷内を半ば強制的に掻き回す――

    ぬるぬるの肉壁が肉棒の表面を滑り、ヒダヒダがカリや亀頭をくすぐり回す。

    ぬぷっ、ぬぷっ、ぬちゅっ、ぬちゅっと淫らな音が響き、狭い穴の中で扱き抜かれた。

    

    「あ……! ミク、ミクぅぅぅ……!」

    「上下、上下♪」

    ミクは歌うように呟きながら、腰を上げては沈ませを繰り返す。

    腰を上げた時は亀頭あたりまで引き抜かれ、次の瞬間には腰を沈められた。

    ミクのお尻と僕の太腿がぺたんと当たり、一気に根本まで呑み込まれる。

    それを踊るように、リズミカルに――

    

    ずちゅっ、ぬちゅっ、ずちゅっ……!

    ミクの腰が沈んだ時には、ペニスが狭い穴を突き入る時の感触が――

    ミクの腰が浮いた時には、カリの部分が引っ掛かりながらずるずると抜けていく感触が――

    「あ、あぐぅっ……!!」

    その腰の動きに翻弄され、快感がみるみる高まっていく。

    さっき射精したばかりなのに、早くも二度目の絶頂が近付いてくる――

    「あ、ああああぁぁぁぁぁ……!!」

    天に昇るようなフワフワ感を味わいながら、僕はミクの中で果てていた。

    温かい膣内で扱かれ抜き、たちまち導かれる二度目の射精。

    ミクの甘いテクニックの前に、僕はみっくみくにされてしまった――

    

    「あっ、また出ちゃったんだ……♪」

    そう言って目を細め、ミクは腰の動きを緩めた。

    そのまま、すとんと腰を落として根本までペニスを呑み込んでしまう――

    「前後、前後♪」

    安らぐ暇もなく、再びミクは腰を踊らせ始めた。

    今度は、腰をクイクイと前後に動かしてくる。

    まるで恥骨同士を擦り合わせるように、ずっちゃずっちゃとリズミカルに身体を前後させる。

    「も、もう無理……! あっ、あっ……! あぁぁ……!」

    ぬくぬくの肉筒の中で、グチュグチュにシェイクされている感触。

    ミクの腰だけがまるで別の生き物のようにくいくいと動き、ペニスを嫐ってくる。

    先端がむにゅむにゅと肉に包まれ、不思議なコリコリ感を味わう――

    ミクの膣内で激しくこね回され、昇天まであっという間だった。

    「ダメだ……! ミク、出るよぉ……!」

    「あれれ……ひとたまりもなかったね」

    ミクにそう言われながら、僕はドクドクと精を漏らしていた。

    三度目にもかかわらず、我慢するヒマもなく瞬殺される。

    動く度に射精してしまう――ミクの名器とその腰の振りは、強烈な破壊力だった。

    ボーカロイドではなく、えっち用のアンドロイドとしか思えないくらい――

    

    「ぐるぐる、ぐるぐる〜♪」

    「あっ! も、もう――」

    今度はミクは、腰を回すように振り立ててくる。

    これだけ動かれていながら、その締め付けは凄まじい。

    まるで絡み込むようにペニスの表面に吸い付き、甘く押し潰してくる。

    亀頭のくびれを肉壁が捕らえ、じゅぷじゅぷとヒダで執拗に擦り立ててくる。

    じわじわと追い詰めるように、粘り着くように快感を押し上げ――

    そして、絶頂まで達するのも一瞬だった。

    「あぁぁぁぁ……!! ミク、ミクぅぅぅ……」

    彼女の細い腰にしがみつき、身を震わせながら射精してしまう。

    下半身が溶けてしまうような感覚を味わいながらの連続絶頂。

    無邪気なミクに、否応もなく味わわされる強制射精。

    「も、もう無理だって……! ミク……! あ、ミクぅぅぅ……!」

    それでも、終わらない。

    ミクは僕の上でずりずりと腰を踊らせ、終わらそうとはしない。

    「えへ♪ もっともっと、みっくみくにしてあげる♪」

    「ああ、もうやめてぇ……! ああああぁぁぁぁ……」

    

    くちょっ、くちょっ、くちょっ……

    どぷっ、どくどくどくどく……

    

    精も根も尽き果てているのに、それでも延々とイかされる。

    可愛い顔して貪欲なミクに、僕はひたすら精を搾られてしまう――

    まるで夢のような心地にして、延々と与えられる快楽拷問。

    容赦なく射精させられる、連続強制絶頂地獄。

    あまりの激しさに、意識すら遠のいてしまうほどに――

    

    

    「う、うう……」

    あれから、何回射精しただろう。

    僕からたっぷりと精を吸い上げたミクは、ようやく満足した顔で腰を上げた。

    「ごちそうさま、マスター♪ じゃあ、また明日ね♪」

    そう言って、するりとディスプレイに戻ろうとしたミク――が、その直後に轟音が響いた。

    ミクの頭と画面がごいんとぶつかり、ディスプレイはPC台からずり落ちて、派手な音と共に床へ転がる。

    そのままミクはPC台に突っ込み、どんがらがっしゃーん!とキーボードや周辺機器をひっくり返していた。

    「お、おい……!」

    僕は慌ててベッドから飛び起き、ミクの元に駆け寄る。

    散乱するPCや周辺機器の真ん中で、ミクは両目を「×」の字にして引っ繰り返っていた。

    「いたた……あれ? なんで?」

    「どうしたんだ? 大丈夫か――?」

    ミクは起き上がって目をぱちぱちした後、うるうるした目で僕を見上げた。

    「マスター、どうしよう……電脳世界に帰れなくなったみたい……」

    「それって、完全に実体化したからか?」

    こくこくと頷き、ミクは肩を落とす。

    「帰るとこ、なくなっちゃった……」

    「じゃあ……家に居てもいいよ」

    「えっ……!?」

    目を丸くして顔を上げ、エメラルドのツインテールを震わせるミク。

    こんなに可愛らしい娘が部屋に住み着くのに、異論があるはずもない。

    「もう電脳世界には戻れないんだろ? なら、僕の部屋に住むといいよ」

    「マスター、大好き〜♪」

    ミクはぴょこんと飛び上がり、僕の胸に飛び込んできたのだった。

    

    

    

    

    

    ――そして八日目、晴れやかな日曜日。

    

    ぽかぽかと暖かい太陽、そして雲一つない空。

    気持ちの良い気候も手伝ってか、日曜の遊園地は恋人や家族でごったがえしている。

    僕とミクは、そんな遊園地をてくてくと連れ立って歩いていた。

    

    彼女は、ミクの姿をしたサキュバス――

    いや、それともサキュバスの属性を持ったミクなのだろうか?

    ボーカロイドなのか、サキュバスなのか、それともほとんど人間なのか――

    結局のところ、彼女が何者なのかはよく分からない。

    あくまでボーカロイドなのだけれど、ほとんど人間同然。

    普通の食事もできるけれど、主食は人間の精液――そんな、良く分からないミクだった。

    まあ、そんなことはどうでもいいか。

    これからずっと、僕の側にミクがいる。それだけで十分だ。

    

    ……あと、些細なことだが、ミクは結構な額のお金を持っているらしい。

    電脳世界におけるボーカロイドの仕事で稼いだもので、あやしいお金ではないようだ。

    金銭的なことでも、僕に迷惑は掛けないとのこと。

    

    「マスターマスター! あれ、乗りたい!」

    ソフトクリーム片手に、ミクは観覧車を指差す。

    その大きく可愛らしい目が、ねだるように僕を捉えてきた。

    「あれなに!? お皿が回ってる!!」

    「お化け屋敷、こわいよぉ!!」

    「マスター! お馬さんに乗ろ!」

    ミクは遊園地など初めてらしく、大はしゃぎしながらあたりを駆けずり回っている。

    心配になるくらい短いスカートを翻し、大きなネクタイを揺らしてせわしなく動き回る――

    その微笑ましい光景に、僕は目尻を下げっぱなしだった。

    「おいおい、はしゃいで転ぶなよ……」

    気取った風に言いながらも、デレデレ感は隠せない。

    幼児のようにはしゃいで駆け回るミクを、目を細めて見守るのだった。

    

    「おい、あれ……初○ミク!?」

    「コ、コスプレか……!? いくらなんでも可愛すぎるだろう……」

    その服装やエメラルドの髪に見覚えのある一部の人達は、目を丸くして驚いている。

    それでなくても、奇異で目立つ服装。

    ミクの存在は、混雑する遊園地の中でも浮きまくっていた。

    

    「マスター……あ、いたっ!」

    前も見ずに駆け回っていたミクは、案の定正面から来た通行人と衝突してしまった。

    よりによってアロハシャツにサングラスの、いかにもチンピラ風な男だ。

    「ごめんなさい!」

    ミクはぱっと姿勢を正し、ぺこりと頭を下げる――

    その腕を、ぶつかられたチンピラはがっしりと掴んでいた。

    「おいおいおい、謝って済むとおもっとんのか!?

     こりゃ、お嬢ちゃんの身体に謝ってもらわないかんなぁ……!」

    「あ、痛い……放してよ……」

    ミクが腕をぶんぶんと振るも、チンピラは離そうとしない。

    ただでさえ目立つミクなのに、こんな騒ぎとなっては人目を集めすぎる。

    チンピラは物陰にでもミクを引きずり込む気なのか、嫌がる彼女の腕をぐいぐいと引っ張った。

    「おら、こっちこいや!」

    「何するんだ、おい――」

    勇気を振り絞ってチンピラに挑み掛かった僕だったが、左手であっけなく突き飛ばされていた。

    「あぐっ……!」

    「マ、マスター!!」

    倒れる僕に駆け寄ろうとしたミクだが、男は彼女の手首を掴んで放そうとしない。

    いつの間にか周囲に人だかりができているが、それはただの見物人。

    露骨にガラの悪そうな男を咎める者など、一人としていなかった――

    

    「おいおい、カタギ相手に乱暴だねぇ……」

    ――いや、人垣の中から颯爽と進み出た影。

    服装は上下のツナギ、がっしりした体格に劇画風の顔付き。

    イケメンとかセレブとか、そういう安っぽい言葉は似合わない――まさに、いい男。

    「ウホッ! あ、阿部さん……!?」

    なんと、ミクと同じホログラム娘――いや、ホログラム野郎である阿部さんだった。

    「おい、大丈夫か……?」

    突き倒されて地面に倒れている僕に駆け寄ってきたのは、元親友の田中。

    彼は前に見た時と同じく、阿部さんとペアルックのツナギを着ていた。

    なぜ遊園地にいたのかは、あまり考えたくはない。

    

    「ウホッ! なんだテメェ!!」

    目の前に現れた濃い男に驚き、チンピラは思わずミクの腕を放してしまったようだ。

    「大丈夫、マスター!?」

    すかさず、僕の方に走り寄ってくるミク。

    そんな少女の身体を抱き留めながら、僕は対峙する阿部さんとチンピラを見据えていた。

    おもむろにチンピラが、拳を振り上げて阿部さんに振るう――

    「おっと……」

    しかし阿部さんは驚くべき敏捷性でそれを避け、流れるような動きでチンピラの背後を取っていた。

    そして、その背へとぴったり密着する。

    「……動くな、ズブリといくぜ」

    「ひ、ひぃ……!」

    チンピラのケツには、阿部さんのたぎったブツが押し当てられているのだろう。

    彼は貞操の危機に瀕し、その顔色が青ざめていった。

    「す、すみません……! そこの女の子があんまり可愛かったから、つい出来心で……!」

    「さてどうする? このままくっちまうか?」

    阿部さんはこちらに濃い顔を向け、そう尋ねてくる。

    「ううん。最初にぶつかったのはこっちだし、許してあげて」

    ミクは表情を和らげ、阿部さんにそう言った。

    確かに、前を見ずに走り回っていたこっちも悪かったのだ。

    「やれやれ、お優しいことだな……ここは人目が多い、行っていいぞ」

    「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ〜ッ!!」

    一目散に逃げていき、あっという間に走り去っていくチンピラ。

    もし人目が多くなかったら、阿部さんは何をするつもりだったのだろうか――

    

    「ありがとう阿部さん、あとタナカとかいう人」

    ミクは、同じ電脳世界の住人である阿部さんにぺこっと頭を下げた。

    同じく僕も、危ないところを助けて貰った礼を言う。

    「いやいや、礼を言われるようなことなんてしちゃいない。

     あの男が美味そうなケツしてたもんだから、つまみ食いしたくなっただけさ……」

    平然とした顔で告げるいい男。

    さすがは阿部さん、男の中の男だ。

    「お二人さん、逢い引きの途中か。野暮な真似はしたくない……行こうか、田中」

    「ういっす、兄貴!」

    田中も、しばらく見ないうちにすっかり妙なキャラになってしまっている。

    それはともかく逢い引きって……大正時代の人か。

    そんなわけで僕達に遠慮したのか、田中と阿部さんは去っていった。

    僕達は再び、遊園地に二人っきり。

    周りにはいっぱい人がいるけど、それでも二人っきり。

    

    「マスター、もっと遊ぼうよ。次はどこへ行く?」

    ぴょこんと軽く飛び跳ね、ミクは嬉しそうに言った。

    彼女は実体化したばかりで、この世界には馴染みがない。

    見るもの全て、珍しくて仕方ないのだ。

    「美味しいものでも食べに行こうか? カラオケも行きたいな♪

     で、家に帰ったら、またいっぱいしようね♪」

    「ははは……」

    僕は、力なく笑うのみ。

    清楚なキャラだと思いきや、そこはサキュバス分が多く混じっているらしい。

    毎晩ミクにあんなに吸われたら、身体が持たないかもしれない。

    まあ、それでもいいか――そう思えるほどに、ミクは愛らしかった。

    

    「マスター、早く早く! あはは♪」

    いつの間にかミクは、わたがし屋さんの方に突っ走っている。

    楽しくて楽しくて仕方がないかのように、無邪気な笑い声を上げながら。

    「おいおい、またぶつかるなよ」

    ぴょんぴょんと跳ねる少女に追い付きながら、僕もつられて笑っていた。

    雲一つない空の下、けらけらと笑う僕達。

    その笑い声は青空に吸い込まれ――そして、また一週間が始まるのだった。

    



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