メデューサ


 

 「寄るな、化け物!」

 僕は驚きと恐怖から、御咲先輩に向けてそう叫んでいた。

 決して、本心からそう思っていたわけではない。

 御咲先輩を思う気持ちは、これっぽっちも変わっていなかった。

 ただ驚愕や戸惑い、そして恐怖が心の中で整理しきれず、罵倒のような言葉となってこぼれたのだ。

 口にした後で僕は自身の言葉の意味を理解し、後悔していた――

 

 「――――」

 一瞬だけ放心した表情を浮かべた後、御咲先輩の顔が嗜虐に歪んでいく。

 「そう、よく分かっているじゃないか。私は醜い化け物――」

 御咲先輩の目が、ぎらりと光った――ような気がした。

 その瞬間、足から感覚が消えた。

 まるで自分の体ではないような、妙な感じ。

 まるで、足が石になったように――

 「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 そして足に視線をやった瞬間、僕を驚愕が襲った。

 膝から下の部分が、靴やズボンごと石化していたのだ。

 「ひ、ひぃ……」

 僕はバランスを崩し、床の上に倒れてしまった。

 なんとか逃げようと仰向けになるも、膝から下が全く動かないので逃げることすらできない。

 「や、やめて……! 助けて……!」

 僕に出来るのは、目の前に立つ御咲先輩に命乞いすることだけだった。

 異形の姿に変貌した、憧れの先輩に――

 「そんな慈悲があるとでも? 私は化け物。獲物を弄び、責め殺す妖魔――」

 御咲先輩は、仰向けに尻餅をついている僕を凝視した。

 その瞬間、今度は僕の衣服に異変が起きる。

 制服が全て、ぴしぴしと石化してしまったのだ。

 それだけではなく、さらさらと砂状になって風化してしまう。

 ブレザーもシャツも下着も全て朽ち果て――たちまち僕は、先輩の前で全裸の状態にされていた。

 

 「大蛇は、獲物をどうやっていたぶるか知っているか……?」

 しゅるるる……

 地を這いながら、御咲先輩の下半身――大蛇の尾が伸びてくる。

 ギリシア神話のラミアのような、大蛇の尻尾――それは、ゆっくりと僕に迫ってきた。

 「あ、あ……! やめて、やめて……!」

 まるで懇願する僕をじわじわといたぶるように、足先から蛇体が絡み付いてくる。

 獲物の体に巻き付き、ゆっくりと締め上げる蛇――

 僕も、御咲先輩という大蛇に捕らわれた獲物に過ぎなかった。

 下半身から胴、そして首の下まで――先輩の太い尻尾は、僕の全身にみっちりと巻き付いてしまったのだ。

 頭だけを、とぐろから出したぐるぐる巻きの状態。

 グリーンの蛇体にウロコはなく、温かい。まるで太股のような感触だ。

 僕の体は、筋肉の詰まったしなやかな蛇体に巻き取られていた。

 

 「こうやって……獲物をたっぷりと締め上げるんだ」

 ぎしぎし、ぎゅうううう――!!

 不意に御咲先輩の蛇体は、僕の全身をきつく締め上げてきた。

 「あ、あぐぅぅぅぅぅ……!!」

 全身を圧迫される苦痛にさらされ、僕は悶えることしかできない。

 御咲先輩の尾で締め付けられ、苦悶の声を漏らすのみ。

 「君の苦痛に歪む顔、じっくりと楽しんであげる――」

 酷薄な表情で微笑む先輩――その顔は、全てを捧げたくなってしまうほど妖艶だった。

 そんな先輩のしなやかな蛇体が僕の全身に密着し、巻き付き、みしみしと締め上げてくる――

 「あ、がぁぁぁ……!」

 「ふふ、いい声だな。もっと聞かせて貰おうか――」

 「あ、あぐううう……!」

 ぎゅっ、みしみし……と、御咲先輩は尾で容赦なく僕を嫐り続けていた。

 そんな責めを受ける僕が感じていたのは、苦痛と――そして、僅かな被虐心。

 思いを寄せていた御咲先輩に包まれ、たっぷりといたぶられる。

 全身で御咲先輩の温もりを感じ、締め上げられる――

 僕は、まるで御咲先輩に抱擁されているような錯覚と興奮を抱いていたのだ。

 単に、獲物として弄ばれているだけにもかかわらず――

 

 「ん……?」

 御咲先輩は、ぴくりと眉を動かした。

 僕の興奮の証――隆起してしまったペニスが、とぐろの中で先輩の蛇体に押し当たったのだ。

 「勃起……しているのか?」

 御咲先輩は嗜虐的な表情を崩さないまま、くすりと笑った。

 「締め上げられて興奮するとは……君は大した変態のようだな。お仕置きだ――」

 「あ、あがぁぁぁぁぁ――!!」

 ぎゅうううう……と蛇体がきつく締まり、僕の全身を責め嫐ってくる。

 腰のあたりの巻き付きがきつくなると、ペニスもぎゅっと圧迫された。

 ペニスの裏側全体に押し当てられる、御咲先輩のしなやかな肉体――

 「うぁ……! あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ぎゅっ、ぎゅっとリズミカルに締め上げられ、その刺激が快感となってペニスに伝わってくる。

 先輩に巻き付かれ、先輩に締め上げられ、先輩にペニスを刺激され――

 そして、先輩の意のままに弄ばれている――そんな興奮が、僕の中で弾けた。

 「あ、ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――!!」

 どくん、どくどく……

 僕のペニスは、とぐろの中で弾けていた。

 御咲先輩の蛇体に、白濁した液を打ち付ける――

 そんな、倒錯的な射精を経験していたのだった。

 

 「こんな事をされて、漏らしたのか……? つくづく変態だな、君は」

 御咲先輩は、蔑むようなあざ笑うような表情を浮かべていた。

 僕の好きだった、無表情で隠した優しさはもはや欠片もなく、その口許に浮かんでいるのは嗜虐。

 それでも、僕は初めて見るそんな一面にすら心奪われていた。

 「ふふ、私は化け物。散々に目を掛けてやったにもかかわらず、私を拒絶した――その報いは受けてもらう」

 いや……御咲先輩の心に渦巻いているのは、単なる嗜虐だけなのだろうか?

 もしかして、僕のあの言葉が――

 

 「う、ううっ……?」

 そんな僕の思考は、全身を包む感触の変化によって中断させられた。

 しなやかな筋肉の蛇体が、ゆっくりと軟体の感触に変化していったのだ。

 大蛇に巻き付かれている感触から、ナメクジのようなものに包まれている感触へと――

 蛇体の色も、グリーンからピンクへと変貌していく。

 その色や質感は、まるで生物の内臓器官を想起させた。

 「体細胞を変化させ、胃粘膜に近い組成へと変質させた――どういうことか分かるか?」

 御咲先輩は、嗜虐の表情で僕の顔を覗き込んできた。

 そして、かつてないほど妖艶な口調で告げる。

 「ふふ……食べてあげる」

 「ひ、ひぃ……! そ、そんな……!!」

 僕は思わず身をよじろうとするが、拘束のきつさは蛇体の時と全く変わらない。

 それでいて、軟体質と化した御咲先輩の体はみっちりと僕を包み込んでくるのだ。

 まるで、得体の知れない軟体生物に包み込まれてしまったように――

 その表面からは、ねっとりとした粘液が粘り始めた。

 それは僕の全身へと甘く絡み、同時に薄甘い匂いが漂い始める。

 その匂いは僕の脳を溶かし、狂わせていく――

 みるみる恐怖も薄れ、まるで甘い甘いぬるま湯に浸かっているような気分を味わっていた。

 

 「……私に包まれて、ゆっくりと溶かされる気分はどうだ?」

 「き、気持ちいいです……」

 僕は、御咲先輩の問いにそう返していた。

 不思議なことに、完全に恐怖も戸惑いも消えている。

 今はただ、先輩の与えてくれる桃源郷のような快楽に浸っていたい――

 「ふふ、またか……」

 御咲先輩は、微かに口の端を歪ませた。

 先輩に包まれ、ペニスが再びむくむくと大きくなっていったのだ。

 むにゅ……と温かくぬめる軟体にめり込む肉棒。

 それは、さっきの蛇体よりも甘美な感触だった。

 「仕方ない奴だな。また大きくして――」

 「んぁぁ……!」

 にゅくく……と、ペニスを包む軟体が蠢き始めた。

 まるで別個の生物のように蠕動し、肉棒をこね回してきたのだ。

 そんな刺激に、僕はほんの僅かの間も耐えることはできなかった。

 「あ、先輩……いく……」

 どくん、どくどくどく……

 御咲先輩の軟体の中で、僕はあっさりと果てていた。

 まるで、消化の片手間――そんな刺激で射精に導かれても、僕は屈辱感どころか恍惚感を味わっていたのだ。

 軟体の動きが収まり、御咲先輩は呆れたようなため息を吐く。

 「これで満足したか? まったく、君は節操がないな」

 「も、もっと……先輩、今のをもっと……」

 僕は御咲先輩に対し、先に与えられた快感を懇願していた。

 あの快感を、もっと味わいたい――そんな想いが、僕の頭に渦巻いていたのだ。

 「状況が分かっているのか、君は? 消化されているにもかかわらず、男性器を弄ばれたいとは……浅ましい」

 そう嘲笑いながらも、軟体はねっとりとペニス部分にまとわりついていた。

 そのまま肉棒をこね回され、僕は悶えながら射精に導かれてしまう。

 「せ、先輩……! い、いい……!」

 「ふふ……君の体が消化されきるまで、いじってやろう。そのまま果て続けるがいい」

 「あ、あああぁぁぁぁ……!!」

 軟体は、にゅくにゅくとペニスを搾ってくる。

 そればかりではなく、全身を包む軟体もねっとりと蠢いて僕の全身を蹂躙してきた。

 愛撫にも似た刺激を受けながら、温かい粘液――消化液が僕の全身に塗り込まれていく。

 それは、まさに天上の快楽。これ以上の快感などありはしない。

 

 「先輩……気持ちいい……」

 精を噴き上げながら、僕は夢うつつに呟いていた。

 このまま溶かされ、御咲先輩の養分になる――それは、素晴らしいことにも思えてくる。

 先輩に包まれ、そして先輩と一つになれるんだ――

 

 「夢を見た。ひどく滑稽で、甘美な夢だ。

  私は想い人に正体を打ち明け、そしてその人は醜い姿の私を受け入れてくれる――そんな、都合のいい夢」

 ぼそりと呟く、そんな声が聞こえる。

 「叶うはずのない、なんて愚かしい夢想――そんな夢を見るのも、今日で終わりだ」

 「あ、ぁぁぁぁぁぁぁ……」

 股間を嫐られながら、じわじわと包み溶かされる僕の体。

 その温かい感触、快楽、魔性の夢心地――

 そして僕の肉も心も、御咲鈴香先輩の中に溶けていった。

 

 

 



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