メデューサ
「そんな――妖魔でも、関係ないです!」
僕は、そうきっぱりと言った。
「何を――」
ほんの一瞬だけ、呆けたような表情を浮かべる御咲先輩。
「大蛇の下半身に無数の蛇の髪を持つ妖魔――私は、そういう存在だ」
いつしか無表情に戻り、御咲先輩は抑揚なく告げる。
「無理はしなくていい。私は、姿がばかりか心まで醜い妖魔。
冷血にして高慢、ぶっきらぼうで可愛げの欠片もない。だから君も、似合いの人間女性を見付けて――」
「せ、先輩!」
僕は、御咲先輩の言葉を遮っていた。
「僕は、御咲先輩のことが大好きです。それに、その正体を見た今も――
確かに先輩が人間じゃなかったのは驚いたけど、それくらいで嫌いになんてなれません!」
感情の赴くままに、僕は言葉を紡ぎ出す。
それはその場しのぎの嘘でもお世辞でも媚びでもなく、全て僕の偽らざる本心だった。
「それに、その姿が醜いなんて思えません! とても綺麗で、蛇の部分だって妖艶で――」
「……ありがとう」
御咲先輩が目の前に立ち、微笑を浮かべて言った――次の瞬間だった。
その髪の蛇がしゅるしゅると伸び、僕のズボンへと次々と潜り込んできたのだ。
「え? え……?」
「あ――」
困惑する僕に対し、当の御咲先輩も驚いたような表情を浮かべている。
「先輩……? な、何を……?」
「いや、これは私の意志ではなく――まあ私の意志なんだが、今そういうことをする気はなかったのだけれど――」
頬を微かに赤く染め、訳の分からないことを口走る御咲先輩。
そうしている間にも、蛇は下着の中へと分け入ってきた。
ぬるりとした感触が、下腹部を這う。
「あ……御咲先輩、そんな……」
しゅるるるる……
そして蛇は、僕のペニスへと巻き付いてきた。
唐突にぬめった感触が肉棒を襲い、優しく弄ぶように絡み付く。
その思わぬ刺激に、ペニスは一挙に堅さを増していた。
さらに、ちろちろと尿道に舌のようなものが這い回ってくる。
「あ、うぅ――」
快感で力が抜け、その場にへたりこみそうになる――
そんな僕の体を、御咲先輩が素早く抱き留めていた。
「せ、先輩……これ、先輩が動かしてるんですか……?」
「ある程度は自動で、私の意志で止めることもできるんだが――」
御咲先輩は、微かに頬を染めながら僕のズボンに手を伸ばしてきた。
そして、下着とまとめて一気にずり下ろす。
たちまち、蛇にみっちりと巻き付かれているペニスがあらわになった。
ざわざわと無数の妖蛇が絡み、その口から突き出た舌先で亀頭をいたぶっているのだ。
「その……今は、君のオチンチンをもっと舐めていたい……」
「そんな……ああぁっ!」
御咲先輩に舐められてる――そんな快感が、全身を包み込んでいた。
妖蛇の責めはますますねちっこくなっていき、股間をじっくりと嫐り回してくる。
「せ、先輩……! 先輩ぃぃ……!」
僕は御咲先輩の細い肩に手を回し、その体にしがみついていた。
先輩に身を委ね、快楽に晒されて身悶えするのみ――
「目の前でそんな顔をされたら、私――」
不意に、眼前に御咲先輩の上気した顔が接近してきた。
そのまま快楽の喘ぎを漏らす僕の口は、御咲先輩の唇によって塞がれてしまう。
「せ、せんぱ……んんん……」
御咲先輩の舌が口内へと侵入し、貪るように舐め回してきた。
僕はその甘いキスに酔い、恍惚に浸る。
「ん、ん、ん――!!」
下半身では、ペニスを舐める妖蛇の舌も粘着性を増していった。
上と下をねっとりと同時に責められ、興奮と快感は頂点まで達する――
「ん、んん……! せんぱぃぃ……!」
そして、先輩に口を吸われながら絶頂していた。
信じられない、甘い夢のような射精。
先輩の肌を、唇を、舌を、匂いを、唾液を感じながら果てる、これまでの人生で最高の射精だった。
「ふふ、イったな――」
「あ――」
妖蛇の舌が、素早く尿道口や亀頭に這う。
僕が溢れさせた白濁液は、たちまち舐め取られてしまった。
「唇を重ねながら、想い人を射精させる――女として冥利に尽きるな」
ゆっくりと唇を離し、御咲先輩は僕に微笑を見せていた。
僕と先輩の唇の間に唾液の糸が引き、とてつもなくエロティックだ。
「嬉しい……私を感じながら果ててくれて」
「せ、先輩――」
僕はあらためて、全裸の御咲先輩が目の前に立っていることを意識してしまった。
その形のよい乳房と、そして股間の部分に嫌でも視線がいってしまう――
人間の腰と蛇の胴体のちょうど境目の部分、そこにはぴっちりと閉じた女性器があった。
その形状は、人間女性のものと変わりないようだが……
「気になるか? 私のここが……」
御咲先輩は、そんな僕の視線を一瞬で悟っていた。
自らの股間に片手をやり、その膣口を僅かに指で開く。
その内部は、綺麗で汚れないピンク色だった。
「男性器を押し包み、精液を吸い出す肉穴――試してみるか?」
「え……?」
僕は、思わず目を丸くしていた。
「それはつまり、御咲先輩と――」
「性的交渉を持つ、ということだな。当然ながら私としても、相手は誰でもいいというわけではない。
ずっと目を掛けてきてやった君だからこそ、許してやっても――」
そこで御咲先輩は言葉を止め、自嘲するように眉をひそめる。
「……どうしてこんな高慢な言い方しか出来ないのだろうな、私は。
もっと純粋な気持ちのはずなのに、言葉にするとこんな風にしか――」
「せ、先輩……!」
僕は、御咲先輩をきつく抱きしめていた。
その不器用さが、たまらなく愛しい。
「あ……」
御咲先輩は少しだけ戸惑いの表情を見せながらも、僕の背中に右腕を回してきた。
ペニスに絡み付いていた蛇はすっかり解け、その代わりに先輩の左腕が添えられる。
「じゃあ、えっと……頂きます」
御咲先輩は少し言葉に迷い、そして妙に場に合わない言葉を口走った。
そして僕のペニスに手が添えられ、湿った蜜壷へと導かれる――
ぬち……
粘液がしたたる肉の穴に、僕のペニスの先端が突き入れられた。
「あ、ああぁ……」
甘く温かい感触が、ねっとりと亀頭をくるみ込んでくる。
こんな中にペニスを全て納めてしまったら、我慢する暇もなく射精に導かれるだろう。
「いつでも漏らしていいから……好きなだけ味わってくれ」
御咲先輩は崩れそうになる僕の体をしっかりと抱き止めたまま、僕の腰をぐいっと引き寄せていた。
「あ、うぁぁ……!」
それに従い、僕のペニスは根本まで蜜壷に咥え込まれてしまう。
その瞬間、無数のヒダと断続する締め付けが肉棒を包み込んできた。
ヒダがペニスのあちこちをにゅちゃにゅちゃと擦り、カリの部分を執拗にいたぶる。
まるで肉のリングのようなものが、亀頭表面、カリ、サオの中心の三カ所をきゅっきゅっと締め上げてくる。
「せ、先輩……! き、気持ちよすぎる……!」
肉壁は粘液でぬめり、ペニスをぬるぬるにしている。
その上でヒダで愛撫を浴びせ掛け、淫らな締め付けで追い詰めていく――
膣内の肉のリングがうにうにとペニスをしごくように上下し始めた瞬間、僕は腰をびくんと震わせていた。
頭の中が真っ白になり、体の力が緩む――
「あ、あぁぁぁぁぁぁぁ――!!」
どく、どくどくどくん……!
僕は御咲先輩にしがみつき、体を震わせながら果てていた。
ずっと恋い焦がれていた御咲先輩と体を重ねたことによる興奮。
そして、魔性の快楽とも言える肉体的刺激。
それは、ほんの一瞬たりとも耐えることを許さなかったのだ。
「ふふ、瞬殺だったな……」
射精の脈動を膣内で感じながら、御咲先輩はくすりと笑う。
その笑みは侮蔑でも嘲笑でもなく、幸せがこぼれ出たかのような笑顔だった。
「君に、そんなに喜んでもらえるなんて……」
「せ、先輩……! ああッ!」
にゅく、にゅくくく……
御咲先輩の蜜壷は収縮するようにうねり、精液を最後の一滴まで搾り出している。
「……実を言うと、ここで男を搾るのは初めてだ。こんなことを今さら言うなんて、卑怯だろう?」
じっくりと精を吸い出しながら、御咲先輩は呟いてた。
「そ、そんなの――あああ、あぁぁぁぁぁぁ……!」
何かを言おうにも、股間を支配する快楽が凄まじすぎてそれどころではない。
僕は、まるで御咲先輩の中でペニスが溶かされているような錯覚を味わっていた。
たった一回だけ情を交わしただけなのに、凄まじい疲労感。
射精が終わると同時に、僕の意識は遠くなっていった――
「うん、あれ――?」
ふと気が付くと、僕は図書室の床で体を横たえていた。
「ん? ようやく目が覚めたか……」
そう言ったのは、図書部の部長である御咲先輩。
彼女は普通に制服を着こなしており、あの異形の面影は欠片もない。
「もしかして、あれは夢――」
「いや、現実だ」
そう告げる御咲先輩の髪の一本が、すすすっと蛇の形になる。
その蛇は軽く頭をもたげ、そして元の髪に戻ってしまった。
「なんだ……夢の方が良かったか?」
軽く微笑を浮かべ、そう尋ねてくる御咲先輩。
「もしそうならば、そのまま夢にしてしまうこともできるが――」
「そんなことしたら、怒ります」
僕はふらふらと立ち上がり、御咲先輩を見据えていた。
「ところでその……大丈夫なんですか? さっき、あんなに中に……」
避妊がどうこうとか、考えが至る状況ではなかった。
御咲先輩は精を糧にする妖魔ということだが、膣内に射精した分はどうなのだろう?
「ふふ、確かにたっぷりと頂いたな……」
御咲先輩は、自らの下腹部を愛おしげに撫でさする。
「しかし、まだ学生――君も私もな。残念だが、産むには早いだろう。
君にとっては不本意かもしれないが、養分として頂いた」
「いえ、不本意なんかじゃないです!」
自分の放った精液が、養分として吸収される――それも、愛する御咲先輩に。
それはとてもエロティックで、不快感の欠片もなかった。
「――夢を見た。ひどく滑稽で、甘美な夢だ」
不意に先輩は、そう呟いていた。
「え……?」
「しかし、もう見ることはない。なぜか分かるか……?」
「わ、分かりません……」
先輩の謎めいた問い掛けに、僕は首をかしげる。
「その夢は、叶ってしまったからだ。では、今日はもう帰るとするか」
「あ、はい……!」
こうして、僕と御咲先輩は図書室を出たのだった。
あれから三年――御咲先輩の秘密を知ったことによる変化は、結局のところ何もなかった。
強いて言うなら、僕達は恋人同士になったくらいだろう。
いや……御咲先輩の食餌を提供するパートナー兼恋人か。
そして先輩は、今日も僕の隣ですやすやと寝息を立てている。
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