妖魔の城
「さあ、いらっしゃい――」
蠢く膣内を見せ付け、淫らな素振りで挿入を誘うアルメール。
こいつのペースに乗せられたら終わり――それぐらいは、当然のごとく理解している。
「どうしたの? おちんちん、この中にいれたくないの――?」
俺は、そう囁くアルメールの眼前に一瞬で接近していた。
そのスピードを殺さず、そのまま細い首に肘打ちを見舞う。
「きゃ、あう……!」
――めきり。
アルメールの頚骨が砕ける感触を確認しながら、俺は肘にぐいっと力を込めた。
彼女の首筋に俺の肘先をめり込ませたまま、その淫靡な肉体を廊下の壁に叩き付ける。
肘で壁に押し付けられ、糸の切れたマリオネットのようにぶらりと棒立ちになるアルメールの肉体――
俺はナイフを抜き、メイド服に包まれた体に刃を突き立てた。
頭部に一撃、さらに首を抉り、心臓部にもナイフを突き刺し、胸部を穿つ。
鋭利な刃で肉体を切り開き、破壊し、引き裂き、潰す。
シャワーのように鮮血がびちゃびちゃと飛び散り、俺の右腕や左肘を赤く濡らしていた。
「か、かふ……」
まるで咳をするかのように、大量の血を吐き出すアルメール。
俺はさらに拳銃を抜き、壁に押し付けたままのアルメールの体に連続して弾丸を見舞った。
静かな廊下に、何度も響き渡る乾いた銃声。
何度も何度も何度も銃弾を撃ち込み――そして弾倉が空になった頃、アルメールは赤いボロ雑巾のようになって絶命していた。
「……」
俺はようやく、アルメールの首から肘を離す。
ずしゃりと湿った音を立て、血を滴らせながら廊下に崩れ落ちるサキュバスの亡骸。
敵は本当にこいつ一人だったようで、周囲に伏兵の気配は全くない。
「正真正銘、ただの雑魚だったようだな……」
敵のペースに乗りさえしなければ、サキュバスなど所詮は雑魚に過ぎない。
魅了されたり、妙な魔術を使われる前に殺すのが最良の方法なのだ。
ウェステンラが何度も言っていた通り――かなり上位のサキュバスになると、そうもいかないという話だが。
「さて、行くか……」
空になった弾倉を入れ替え終えた瞬間、頭の中に聞き慣れた声が響いてきた。
『おい、どうした? 何があった?』
「ウェステンラか。そっちこそ、どうしたんだ?」
『そちらの方に気の乱れを感じたから、敵に襲われたのかと思ってな……』
「なんでもない、もう殺した」
俺は軽くため息を吐いた。
「……それより、頻繁な念話は危険だと自分で言っていたじゃないか。
探知される可能性があるから、必要なやり取り以外は控えた方がいい」
『余計なやり取りだと……!? 我を心配させておいて、その言い草は――』
「心配……? お前、心配してたのか?」
『誰がするか! 断じて、貴様の心配などしておらんわ!!』
どっちなのかよく分からないが、結局怒られるのには変わりないようだ。
『ともかく、くれぐれも気をつけよ。お前に死なれてはなにかと面倒だからな』
「了解了解。そっちも、一刻も早く地下から脱出してくれ」
そんな会話の後、念話は切れた。
「やれやれ、どうもペースが崩れる……」
ため息混じりに呟く俺。
ウェステンラと話していると、どうにも戦闘思考への切り替えがやりにくい。
さっきのアルメールに相対した時も、僅かに闘争心がグラついたのも事実。
普段ならば、あんな雑魚など思考する前に肉塊に変えていたのに――
「まあいい、とにかく行くか……」
ここは敵地、物思いに浸っている余裕はない。
これから先も、敵を迎え撃たなければならないのだ。
アルメールの屍をその場に打ち捨て、俺は廊下を進み始めた。