ヒドラ娘


 

 青年は、とある沼の前をとぼとぼと歩いていた。

 同居している女性からは、この沼には絶対に来てはいけないと言われている。

 にもかかわらず、わざわざここへ来た理由は……彼女に対する反感?

 

 ……いや、反感というのはどこか違う。

 青年は彼女に服従し、それを苦とも思っていない。

 むしろ、構ってほしい子供の感情に近いのではないだろうか。

 結局のところ、彼女が自分の事をどう思っているか不安なのであろう。

 出会いが出会いだけに、彼女にとっては自分など虫けら同然なのではないだろうか――

 

 「どうしたの、貴方……」

 「え……?」

 沼の方から、唐突に声を掛けてくる一人の女。

 青年の同居人ではなく、まったく見知らぬ女性だ。

 妖艶な色気を漂わせたその女性は、グリーンのパーティードレスを身につけていた。

 そして、沼面に立っている。

 

 「こんなところに迷い込むなんて……久々の獲物ね」

 女性は冷酷な表情を浮かべつつ、にやりと笑った。

 「あ……!」

 青年は思い出す。

 この沼に来てはいけないと言われていた理由――ここには、人を食べる怪物が出没するという。

 

 「ひ、ひぃぃ……」

 青年は踵を返し、そのまま走り出そうとする。

 その両足に、するすると何かが巻き付いた。

 触手だ。

 パーティードレスから伸びた触手が、青年の両足にぐるぐると絡み付いている。

 

 「う、ああッ!」

 青年は足を取られ、そのまま転んでしまった。

 その瞬間、ちくり、と微かな痛みが足に走る。

 何か、トゲのようなもので刺されたような――

 「え……? な……!」

 青年は、すぐに身体の異常に気付いた。

 全身が麻痺し、動く事ができない。

 転んだ状態のまま起き上がれず、指一本動かせなくなったのだ。

 

 「ふふ……毒針よ」

 「ど、どく……?」

 青年の表情が、みるみる恐怖で歪む。

 どんな毒だ? まさか、このまま死――

 「数十分ほどマヒさせるだけの毒だから、安心しなさい」

 パーティードレスの裾から六本の触手を伸ばしながら、にやにやと笑う女性。

 その時、青年は気がついた。

 目の前の女性は、パーティードレスなど着ていない。

 あれこそ、彼女の胴体そのもの。

 その円筒形の胴は不自然に長く、そのまま沼面の中へ続いている。

 

 「私はヒドラ……イソギンチャクに近い肉食の種族よ」

 女性――ヒドラ娘は言った。

 「でも肉を食べる前に、まずは貴方の精を吸い尽くしてあげるわ」

 しゅるしゅると伸びたヒドラ娘の触手が、仰向けに倒れている青年のズボンを引き裂く。

 そして、力なくうなだれているペニスに襲い掛かった。

 「う、ああぁぁ……!」

 ヒドラ娘の触手は青年のペニスをぎゅるぎゅると巻き上げる。

 敏感な部分にうにうにと絡み付かれ、青年は甘い息を漏らした。

 彼の肉棒は、その刺激によって固さを増していく。

 

 「ふふ、大きくなったわね。気持ちよくしてあげるから、いっぱい出しなさい……」

 ペニスが完全に勃起したのを確認し、ヒドラ娘は触手での愛撫を開始した。

 亀頭部に渦を巻いた触手を密着させ、なおかつカリの部分に引っ掛かるように扱き上げる。

 時には根元からサオにいたる部分に絡み付いては離れ、絶えず変化する感触を与え続ける。

 「あ、うぁぁ…… あぁぁ……!」

 青年は、肉棒を軟体質の触手に嫐り立てられる刺激に酔った。

 逃げる事も忘れ、ただ快楽に喘ぎ続ける。

 「ふふ、気持ち良さそうね…… そのままイきなさい」

 ヒドラ娘の触手は脈打ちながら、青年のペニスの表面を淫らに這い回る。

 キツく締め上げては緩め、変幻自在の動きで彼の肉棒を弄びながら――

 そして、たちまち青年の限界は訪れた。

 

 「あ、ああぁぁぁぁ!!」

 どくん、どくどくどくん……

 青年は身体を震わせ、股間に絡み付く触手に精を迸らせた。

 ヒドラ娘は触手の表面で精液を吸い上げ、体内に吸収していく。

 彼女にとっては、触手で味わう前菜だ。

 

 触手に絞り上げられ、なすすべもなく射精してしまった青年。

 射精の快感や興奮が過ぎ去り、彼は我に帰り始めた。

 愛する女性の顔が脳裏に浮かび、いたたまれなくなる。

 しかし、ヒドラ娘の陵辱はまだまだ終わってはいない。

 彼女は触手を伸ばし、青年の四肢を拘束しながらその身体を持ち上げた。

 

 「は、離して……」

 毒によるマヒと射精の疲労感で、力なく呟く青年。

 それは拒絶ではなく、もはや懇願だった。

 「ふふ、駄目よ。貴方は捕食者に捕まった獲物なの。精液を吸い尽くされ、最後に肉体を消化されるのよ」

 「離して、助けて……」

 必死で抗う青年。

 だが残酷にも、彼の懇願こそが互いの立場を証明していた。

 青年は、そのままヒドラ娘の方に引き寄せられていく。

 彼女の円筒形の胴――その腰元に、淫らな割れ目が見えた。

 

 「この腔腸口で、貴方のおチンチンを溶かしてあげる…… 良かったわね、こんな気持ちイイ目に合って」

 ふふふと笑いながら、青年を引き寄せていくヒドラ娘。

 彼の怒張したペニスが、触手によって角度を整えられる。

 ヒドラ娘の腔腸口に、挿入しやすい角度で――

 「や、やめて…… お願いだから……」

 「いい事を教えてあげる。この腔腸口は、搾精器官と消化器官を兼ねているの。

  腔腸口内部のアルカリ性が高くなるにつれて、消化機能が活発になるのよ。

  そして、精液はアルカリ性…… ふふっ、この意味が分かる――?」

 「う、ああ……!」

 青年は恐怖で唇を震わせた。

 つまり射精すればするほど、消化が促進されていく――

 

 「ふふふふ…… おチンチン溶かされたくなかったら、おもらしを我慢することね」

 「やめ…… やめて……!」

 青年の眼前に、ヒドラ娘の細長い胴が近付いてくる。

 円筒形の胴は3mほどの長さに伸張し、ぷるぷると柔らかい弾力を備えているようだ。

 濃緑でありながら半透明で、その内部にはごぽごぽと泡立つ粘液が詰まっている。

 そして、うっすらと向かいの景色が透けて見えていた。

 「貴方のおチンチン、食べてあげるわ……」

 「あ、ああ……!」

 ヒドラ娘の腔腸口が、にゅるりと口を開ける。

 そこへ、青年のペニスが吸い込まれ――

 

 ――ぐにゅ、ぬぬぬぬ……

 そのまま彼の肉棒は、軟体質の肉洞に引き込まれた。

 たちまち、ぷるぷるの粘膜が何重にもなってペニスを覆い尽くしてくる。

 さらに粘膜はぐにぐにと蠢き、青年のペニスを揉みしだいてきた。

 「あ……! ああぁぁぁぁぁ――ッ!!」

 その余りの感触に、青年は声を上げる。

 「ふふっ、おチンチンとろけちゃいそうでしょう。でも射精したら、本当におチンチンが溶かされちゃうわよ……?」

 「あ、あああぁぁぁ! うあぁぁぁ!」

 青年は射精をこらえながら、身体をわなわなと震わせた。

 ヒドラ娘の搾精の穴は残酷なまでに彼のペニスをいたぶり、射精を促してくる。

 ねっとりと肉棒を包み込み、甘い刺激を与えてくる。

 その内部はもちもちとしていて、非常に温かい。

 「い、いやだぁ…… き、気持ちいいよぉ……」

 獲物の精液を搾り尽すための器官、その尋常ではない機能の前に青年は強制的に屈服させられた。

 射精してはいけないという心の抑止すら、その甘美な刺激の前では何の役にも立たない。

 

 「うぁ…… ああああぁぁぁぁぁぁッ!!」

 どくどく、どく、どく、どく……

 青年は身体を震わせ、ヒドラ娘の腔腸口で絶頂した。

 円筒形の胴部にドクドクと注がれる青年の精液。

 軟体の感触を存分に味わいながら、青年は一回分の精液を搾り尽くされた。

 

 「ふふ、出しちゃったわね…… おチンチン溶かされちゃうのに、気持ち良すぎて我慢できなかった?」

 「うあ…… あ……」

 青年は顔を蒼白にして、唇を恐怖で震わせた。

 彼の肉棒を押し包む腔腸口の内部、その温度が僅かに上がったようだ。

 「いやだぁ…… 抜いてぇ……!」

 毒によって指一本動かせない青年は、そう懇願する以外になすすべが無い。

 「ふふ……一回ぐらいの射精量じゃ、本格的な消化は始まらないわ。

  どろどろに溶かされたくなかったら、もっと我慢しなきゃね…… ほら、ほらほらほらぁ……」

 にゅむっ、にゅむっ、にゅむっ……

 温かい軟体質がにゅるにゅると蠕動し、青年のペニスを翻弄する。

 「ああ…… やめて、出ちゃうよぉ……」

 青年は目に涙を浮かべ、必死で快感から抗おうとした。

 これ以上出したら、本当に消化されてしまう。

 我慢しないと…… 我慢を――

 

 「うふふ。男の子が、必死で射精を堪えている顔って好きよ――」

 ヒドラ娘はくすくすと笑った。

 「――その顔が、快楽に歪んでいくのはもっと好きだけど」

 にゅ、にゅにゅにゅ……

 ヒドラ娘の腔腸口は、青年のペニスを容赦なく嫐り上げた。

 亀頭やカリをぷにぷにの弾力で包み込み、くちゅくちゅと蠢きながら締め上げる。

 「あ、あ、ああぁぁ……」

 目の前の妖女の言葉通り、青年の表情はみるみる快感に支配されていった。

 「ほ〜らほらほら。我慢しないと、溶かされちゃうわよ〜」

 「いやだ、いやだぁ…… あぅぅ…… ああああぁぁぁぁッ!!」

 本当に、股間を溶かされているかのような刺激。

 肉棒をぷにぷにと包み込む温もりの中で、青年はまたも精液を漏らしてしまった。

 ごぽごぽと粘液が詰まったヒドラ娘の胴内、そこに精液を注ぎ込んだのだ。

 

 「ふふ、二回目…… そろそろ、消化も活発化し始めるわね」

 「ひ、ひぃぃ…… 助けてぇ……」

 涙を流しながら懇願する青年。その指先がぴくりと動いた。

 「あら…… もう毒が切れ始めてるの? 貴方、見かけによらず頑強な体ね」

 「え……?」

 「いいわ。じゃあ、私の中で搾ってあげる」

 「う、うわぁぁぁぁぁぁッ……!!」

 うにゅぅぅぅぅぅぅ……!

 青年のペニスを咥え込んでいた狭い腔腸口が、まるで口を開けるかのように一気に広がる。

 そして青年の身体は、丸ごと腔腸口の内部に飲み込まれた。

 

 一転して、周囲の視界は深い緑。

 全身が暖かい粘液で満たされているが、なぜか呼吸は出来た。

 まるで狭い水槽の中に入れられてしまったかのよう。

 半透明な外壁を隔てて、うっすらと沼の風景が見える。

 何が起きたんだ? ここは一体――

 青年は大いに狼狽した。

 

 「ふふ、私のお腹の中よ……」

 唐突に、ヒドラ娘の声が響く。

 ここは、ヒドラ娘の円筒形の胴体の中……?

 あの狭い空間に、僕の体が押し込まれて――

 ごぽごぽと泡立つ粘液が、青年の身体を包み込んでいる。

 「な…… ああぁぁ……!?」

 確かに、ここは円筒形の胴の中だ。

 うっすらと外の景色も見え、半透明の外壁はやはり軟体質。

 つまり自分は、このままここで消化されて――

 「やめろぉ…… 出せぇ!」

 青年は力なく体を揺すり、大声を上げる。

 毒はようやく消えてきたようだが、こんな状況ではどうにもならない。

 今さら動けるようになったところで、脱出できるとは思えないのだ。

 

 「ふふ…… じゃあ、本格的に食べてあげるわ」

 ――ぬぷっ。

 「……ひ、ひぃッ!!」

 青年のペニスは、またもや腔腸口に咥え込まれた。

 この腔腸口は、ヒドラ娘の体内と体外を隔てる穴。

 今度は、彼女の体内から腔腸口にペニスを咥え込まれているのだ。

 そして、再びあの残酷な搾精が再開される。

 青年のペニスは軟体にみっちりと包まれ、くちゅくちゅと締め上げられた。

 その感触は容赦なく射精を強制し、青年はたちまちドクドクと精液を漏らしてしまう。

 

 「ふふ…… 射精すれば射精するほど、貴方は消化されてしまうのよ」

 「いやだぁ、いやだぁ……」

 青年は首を左右に振りつつも、快感に心を支配されていく。

 ペニスをぬちゅぬちゅに弄ばれ、その甘美な刺激に溺れる。

 「ああ、気持ちいいよぉ……」

 射精してはいけないのに、強制的な刺激で搾り取られる――

 ペニスをぷにぷにと包まれ、くちゅくちゅと扱き上げられる。

 「うぁ……! ああああぁぁぁぁッ!!」

 青年は、またしても快楽を味わいながら絶頂を迎えた。

 ごぽごぽと泡立つ粘液が濃度を増し、青年の体を蝕み始める。

 「ふふ、消化が始まったわね…… 搾精と消化、同時に味わいなさい。どっちも気持ちイイのよ……」

 「あ、ああぁぁぁぁ……」

 全身をねっとりと甘く包み溶かすヒドラ娘の消化液。

 全く苦痛はなく、味わうのは快感のみ。

 彼女に消化されるのが、こんなに気持ちいいなんて――

 青年は快楽で表情を歪ませ、全身をとろけさせられる快楽に身悶える。

 ペニスもどろどろに溶かされ始めた。

 余りの快感に、射精が止まらない。

 

 「いい、いいよぉ…… 溶けちゃうぅぅ……!」

 青年はもはや恐怖も完全に麻痺し、身体を蕩かされる快楽に喘ぐだけの存在となっていた。

 「ふふふ、とろけてしまいなさい……」

 「い、いぃぃぃ…… あああぁぁぁぁぁ……」

 青年は身も心もとろける快楽に狂いながら、ヒドラ娘の腔腸口に精液を注ぎ込み続ける。

 射精すれば射精するほど消化液は濃度を増し、青年の全身を甘く溶かしていく。

 「うぁぁぁぁ…… ああぁぁ……」

 

 どろ、どろどろどろどろ…… じゅるるるる……

 青年は悦楽の表情を浮かべながら、ヒドラ娘の半透明の胴内で溶解されてしまった。

 

 「ふふ…… ごちそうさま」

 ヒドラ娘は満足そうに腹を撫で、そのまま沼の中に消えていく。

 吸精種でありながら肉食種でもあるヒドラ娘の、今晩の食事は終わったのだ。

 

 

 ここは、妖女達の住まう村。

 その村はずれの沼にも、精と肉を啜る妖女が住み着いている。

 貴方も、この村に迷い込んだときにはご用心を――

 

 

 



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