科学者アルベルティーネ


 

 「私の研究室で働く気はないか? いいバイトになるぞ――」

 僕を呼び止めてきた少女は、突然そう言ってきた。

 「研究所……?」

 夜の繁華街をふらふら歩く僕は、少女の奇異ないでたちに思わず足を止める。

 白衣を着た、中学生くらいの少女。

 綺麗な長髪に、やや釣り目だが可愛らしい顔。

 彼女は、間違いなく美少女だった。

 いわゆる、キツめの委員長タイプというやつだ。

 

 「我がローゼンクロイツ研究所は、健康で従順そうな若者を求めておるのだ」

 そう言いながら、少女はしげしげと僕を見回してくる。

 「君は合格だな。どうだ、我が研究所に来てみないか?」

 「研究所って……」

 この子の父親の研究所だろうか。

 娘にバイト募集をさせるところからしてショぼそう――でも、この少女に誘われたら結構ついていく奴も多そうだ。

 健康で従順という事は、力仕事の下働きかな――

 僕は少し考え込んだ。

 「無論、給金ははずむぞ。さあ、来るがいい」

 「う〜ん…… じゃあ、行くだけ行ってみようかな」

 結局、取り合えず研究所とやらに行ってみることにした。

 行ってみて条件が悪かったら、そのまま帰ればいいだけだ。

 

 「よしよし、君は見所があるな……」

 少女は偉そうに腕を組み、うんうんと頷く。

 「では行くぞ――」

 彼女はポケットからリモコンのようなものを取り出すと、カチカチと操作した。

 「ふふふ…… 驚くな、人間よ」

 「え……!?」

 少女がにやりと笑った瞬間、周囲にモクモクと煙が立ち込め始めたのだ。

 突然の事態に、僕は驚きの声を漏らす。

 「うわっ、何だ……!?」

 「なんだ、この煙は! どうなっている――!?」

 なぜか当の少女までも驚いていた。

 周囲にはモクモクと白い煙が立ち込め――と思ったら、みるみる煙は薄れ始めた。

 「え……!? な、なんだ!?」

 今度こそ、本当に仰天する僕。

 なんと、周囲の風景が一変していたのだ。

 僕等のいた繁華街はどこにもなく、そこは一面に広がる平原――

 そのど真ん中に、病院を連想する大型の建物が建っていた。

 4階建てほどの、コンクリートの建造物が……

 

 「本当は、もっとファンタジックな七色の光に包まれるはずだったんだが……」

 そう愚痴りながらも、少女は目を細めて腕を組んだ。

 「あれがローゼンクロイツ研究所。そして我こそが、所長のアルベルティーネ・ローゼンクロイツである!」

 「しょ、所長……!?」

 このちんちくりんの少女が、あんな大きい研究所の所長?

 だいたい、この平原はどこなんだ?

 さっきまで夜だったのに、昼になっているのもおかしい。

 そして、これだけの事態なのに妙に落ち着いている自分もおかしい。

 僕は自分でも認めているほどの小心者、パニックに陥らないのは奇妙だ。

 いったい、どうなっているんだ――?

 

 アルベルティーネは、そんな僕の疑問に答えてくれた。

 「ああ、これからの展開にいちいち驚かれても困るので、こっそり鎮静剤打っといたから」

 「なんだ、道理で……って、おい!!」

 僕は思わずツッコミを入れる。

 「あと、ここは魔界な。私、人間じゃないから」

 「ああ、そうですか……」

 僕はため息をついた。驚きたいのに驚けないというのは辛いものだ。

 普通なら、天地が引っくり返るほどの衝撃を受ける場面なのに――

 

 「それでも、研究所で働いてほしいっていうのは嘘じゃないぞ」

 少女はそう言いながら、研究所へ向かって歩き出した。

 仕方ないので、僕も後からついていく。

 「働くって、具体的に何をすればいいんですか?」

 魔界にいる以上、彼女も魔族だろう。

 自分より年上かもしれないから、いちおう敬語を使うことにした。

 「その……実験体としての仕事をちょっとな」

 「そうですか、おなかが痛いんで帰ります」

 僕はくるりと背を向ける。

 「ふふ、どうやって帰るつもりだ?」

 アルベルティーネは、腕を組んでにやりと笑った。

 「き、汚い……!」

 「まあ、悪いようにはせんから」

 少女は僕の腕をむんずと掴むと、そのまま研究所へ引きずっていく。

 正直、僕はこの少女を可愛らしく感じ始めていたのだが――

 

 

 こうして、僕とアルベルティーネは研究所の前に立った。

 彼女は植木鉢の下に置いてあったカギで玄関の扉を開け、郵便受けをチェックする。

 「なんだ、ダイレクトメールか……」

 そう言いながら、アルベルティーネは無造作に手紙を投げ捨てた。

 「あの…… もう少し、魔界らしい事をしてほしいんですが……」

 「魔界の者にも生活はある。人間達の夢の中だけで生きてはおれんよ」

 そう言いながら、彼女はつかつかと研究所に入っていった。

 「……おじゃましま〜す」

 僕も、彼女の後に続いて研究所に入る。

 中は、まるで病院のような施設だった。

 結構広いにもかかわらず、人気はまるでない。

 

 「あの…… 所員はいないんですか?」

 僕はおずおずと尋ねた。

 「……6年前のことだ」

 不意に立ち止まり、アルベルティーネは物憂げな表情を見せる。

 「私が所長になって2年が経っただろうか、あの悲劇が起きたのは……

  研究所内に有毒ガスが発生し、所員達はバタバタと倒れていった。

  非常用シャッターも開かず、所員達はみな研究所内に閉じ込められて――」

 「そんな…… 一体、この研究所に何があったんですか……?」

 「年号を考えてみろ。西暦でいいから」

 「年号って…… 6年前だから2000年…… まさか、2000年問題……!?」

 僕は、昔なつかしい言葉を思い出した。

 2000年になったら、機械が暴走するとかいう例のアレだ。

 「た、対策してなかったんですか……?」

 「魔界における魔術の研究は人間界より3000年ほど進んでいるが、科学技術は人間界より200年ほど遅れていてな……

  ゆえに人間界から仕入れたコンピューターを使っていたのが裏目に出たようだ」

 そう言いながら、アルベルティーネは再び廊下を進み出した。

 「まあ所員もみんな魔族だから死者は出なかったのだが、その一件でみんな辞めてしまってな……」

 だんだん、アルベルティーネの声が暗くなってきた。

 「すみません、聞いてはいけない事を聞いたみたいで……」

 ――大丈夫か、この研究所?

 

 「とりあえず、ここが応接室だ。君の業務について詳しく説明しよう」

 僕は、何の変哲もない応接室へ通された。

 とりあえず、なんとか断って人間界へ帰ろう。

 僕はふかふかのソファーに座り、アルベルティーネは2人分のコーヒーを注いで僕の対面に座った。

 「まあ飲め。実験体といっても、決して非人道的な扱いでは――」

 「ちょっと待って」

 僕はさっと右掌を見せた。

 「この状況で、平気でコーヒーを飲むバカがいたらお目に掛かりたいです」

 「疑っているのか……?」

 アルベルティーネは、僕に出されたコーヒーカップに少し口を付けた。

 いわゆる毒見だ。

 「これで満足か? 毒なんて入っておらん」

 「それじゃ納得できませんよ。毒はコーヒーカップに塗ってあって、貴方が口を付けた箇所にだけは毒がなかったり……

  毒の成分は水より重く、無害な上層と有毒な下層に分離していたり、あらかじめ貴方は解毒剤を飲んでいたり……」

 「なかなか頭が回るな。助手としても見所があるようだ……」

 アルベルティーネはくっくっくと笑う。

 「……ん?」

 コーヒーカップのコースター、よく見ると四つ折りにした何かの書類だ。

 僕はそれを、ガサガサと広げてみた。

 

 

※極秘資料No12/実験体履歴(人間男性のみ、No.21〜No.29)


・実験体No.21
強制搾精器のモニター中に機械が故障、搾精機能の停止が不可能に。
被験者は76回の射精の末に衰弱死。

・実験体No.22
精液採集中に搾精器が故障、搾精機能停止が不可能に。598回の射精の末に衰弱死。
人間界にもタフな男がいたものだ。ちょっとびっくり。

・実験体No.23
限界快感許容量の測定中に機械が暴走(ヒューマンエラー、ってか操作ミス)。
上級淫魔の女性器と同等の刺激を受けてショック死。射精回数は不明。
も〜 なんでこうなるの〜

・実験体No.24
スライム娘No.45との交配実験中、スライム娘No.45が暴走。
被験者は12回の射精を強制され、そのままスライム娘No.45によって溶解・捕食。

・実験体No.25
ホース型人造性器『おてごろサキュバスβ』の被験中に、サキュバスβが暴走。
被験者の精神が許容できる以上の快感を与えられ、発狂。もうしらな〜い!

・実験体No.26
食精植物(バイト)による搾精実験中、事故発生。
与える養分の量を誤り、食精植物が実験ゲージ中に大量発生。
被験者は50体以上の食精植物になぶられ、詳細な状況不明のまま衰弱死。

・実験体No.27
搾精アンドロイドによる射精テストの実験中、例によって暴走。
最終搾精兵器が誤作動し、被験者は衰弱死。
暴走の原因はどうやらプログラムミス、変数がnullであるため正当な処理ができなくなった……
……ぬるぽ?  ■■■■■
        ■■■■■■■■
・実験体■■■■■■■■■■■■■   ←(どうもコーヒーをこぼしてしまったらしい)
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 「おなかが痛いんで、帰ります」

 「……だから、どう帰るつもりだ?」

 アルベルティーネは、立ち上がる僕の腕をむんずと掴んだ。

 「こ、殺されるー!!」

 彼女の腕を振り払い、僕は逃げようとする。

 そのまま、応接室の出口の方へ――

 「ふふ…… 君も考えが浅いな……」

 アルベルティーネはゆらりと立ち上がると、例のリモコンを手にした。

 「ここは私の研究所。君は私のテリトリー内にいるのだぞ?」

 そう言いながら、彼女はポチッとスィッチ押す。

 「しまった、何か仕掛けが……!」

 

 パカッ、とアルベルティーネの立っている箇所の床が観音開きに開いた。

 「うわぁぁぁぁぁぁ――!!」

 そのまま、少女は足元に開いた奈落の穴に落ちていく。

 「……」

 何がしたいのかは良く分からないが、これはチャンスだ。

 僕は応接間から飛び出し、とにかく廊下を駆けた。

 しばらく進むと、向かいに非常口の表示が付いたドアが見える。

 あそこから、外へ脱出だ――

 

 そのドアを抜けると、牢屋を連想させるような空間に出た。

 通路の左右には、独房のような個室が延々と並んでいる。

 「交配実験用生物」というネームプレートも……

 この個室に捕らえられているのは、みんな交配実験用の……

 なんてひどい事を……! 

 

 全ての独房にはちょうど顔の高さに小窓があり、そこを開けないと中は見えない。

 非常口に向かいながら、僕は中に入っているネームプレートを見ていった。

 『スライム娘No.45』、『コケ娘No.389』、『ハマグリ娘No.44』、『ウミウシ娘No.192』、『キメラタイプNo.7』――

 多種多様な生物が、ここに監禁されているようだ。

 僕も逃げ出さなければ、ここにいる娘さん達と無理に交配させられて――

 それも悪くないな……とちょっぴり思ってしまった事は内緒だ。

 

 「……ん?」

 ふと、『蛇』と書かれたネームプレートが目に付いた。

 この独房には、ロールミーでお馴染みのラミアさんが…… 僕は、そっと小窓を開けて中を覗いてみる。

 

 その独房内には、いかにも屈強そうな男がいた。

 鋭い眼光、長いバンダナ、そして歴戦の勇士を思わせる気迫。

 『伝説の傭兵』ともアダ名された、『蛇』のコードネームを持つ男。

 

 「誰だ……?」(Voice:大塚明夫)

 男は、鋭い眼差しをこちらへ向けた。

 「いえ、蛇違いでした……」

 僕は恐縮する。

 それにしても、なんでこの人がここに……

 「あの、ここは魔界だそうですけど……」

 「魔界……? はっはっは、それは夢のある話だ」

 男は、まともに取り合おうとしない。

 「とにかく逃げましょうよ。貴方が手を貸してくれたら、魔界からでも脱出できそうですし」

 「断る。俺は自分の意思でここに入っている」

 男はきっぱりと言った。

 「まさか、妖女とエロい事をしたいなんていう願望が……」

 「違う! この研究所で、密かにメタルギアが造られているという情報があってな。今思えば、疑うべきだった――」

 「だったら、なおのこと脱出しないと!」

 「俺は俺のやり方でやる。放っておいてくれ」

 そう言いながら、男は煙草に火を付けた。

 「……いや、待て。俺も、ここに入れられてから長くてな――」

 じろりとこちらを睨む男。

 「――性欲をもてあます」

 「……ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃッ!!」

 僕は慌てて小窓を閉め、『蛇』の独房から離れた。

 こんなのと交配実験なんてされたら、命がいくつあっても足りない。

 

 僕は、ずらりと並ぶ独房に視線をやった。

 とにかく、みんなを解放してあげないと――

 そしてみんなで協力すれば、脱出も容易になるはずだ。

 

 僕は、隣の『カメ娘No.21』の小窓を開けた。

 「助けにきましたから、ここから出ましょう」

 「何言ってるんですか〜 ここから出ちゃったら〜 ノロマな私なんか〜 美味しい精液にありつけませんよ〜」

 「そ、そうですか……」

 いきなり拒絶された僕は、次に隣の独房の小窓を開けた。

 ネームプレートは、『イカ娘No.16』。

 海産物をこんなところに閉じ込めておくなんて、なんてひどい――

 「あら、可愛い人間。今日の相手は貴方? たっぷり気持ちよくしてあげるわ……」

 「え、そんな……」

 イカ娘の言葉に、思わず照れる僕――って、照れてる場合じゃない。

 「ここから出ましょう。脱出を――」

 「あの〜 私達、ここに閉じ込められてる訳じゃないわよ」

 イカ娘は、きっぱりと言った。

 「この不況の世の中に、人間男性あてがってもらえてバイト料まで貰えるんだから、美味しい話でしょ?

  ここにいる娘達は、みんなそういう娘達よ」

 「え…… ええええ〜〜!?」

 僕は呆気に取られた。

 なんてことだ。これじゃ、やっぱり一人で逃げるしかない。

 

 僕はそのまま交配実験生物の部屋を駆け抜け、非常口まで進んだ。

 あそこは、たぶんこの研究所の裏口。

 あのドアを抜ければ、外に――

 

 ドアノブに手を伸ばそうとした瞬間、僕の腕を妙なモノががしっと掴んだ。

 天井から伸びてきたマジックハンドだ。

 さらにウィーンと伸びてきたマジックハンドは、僕の四肢を掴んでしまった。

 

 「ふふふ、驚いたか」

 突然、研究所内にアルベルティーネの声が響く。

 「これこそが、開発に3年を掛けた珍発明『非常口から逃げようとした獲物を捕まえ、実験用寝台へ寝かせ機』だ!」

 「なに、その用途が異常に狭い機械! そんなのに3年も掛けたの!?」

 自由を奪われながらも、ツッコまずにはいられない。

 自分で珍発明と言っているあたり、十分に自覚はあるのだろうが。

 とにかく僕の体は担架に乗せられ、ガラガラと運ばれていく。

 おそらく、この機械の名が示すように実験室へ――

 

 「まあ、安心したまえ。実験体といっても人権を無視したような扱いはしない」

 アルベルティーネの声は、いけしゃあしゃあと抜かす。

 「このマシーンの名を、もう一度言ってみろ。何を捕まえる機械だって?」

 「……」

 しばしの沈黙の後、アルベルティーネは言った。

 「最低限、死なないようには努力するから……」

 「ふざけるな! 離せ〜!!」

 僕は体をじたばたさせるが、手足を固定しているマジックハンドの力は強く逃げる事はできない。

 そのまま、僕を乗せた担架は実験室に入っていった。

 

 「まったく、手間を掛けさせおって……」

 白衣のアルベルティーネが、ぷんぷんと頬を膨らませながら実験室に運ばれてくる僕を出迎える。

 僕の体は、そのまま部屋の中央の寝台に乗せられた。

 さらに、数本のマジックハンドによって僕の服が剥かれていく。

 「離せ、この変態ロリ科学者〜!!」

 たちまち全裸にされた僕は、彼女を罵倒しながら暴れた。

 全裸で寝台に寝かされ、手足と腰を拘束されたマナ板のコイ。

 このままじゃ、本当に殺されてしまう……!

 「あーもう…… 新開発品の使い心地などをモニターしてもらいたいんだから、非協力的だと困るんだがな……」

 アルベルティーネは顎に手をやった。

 「そうだ、アレならどうだ? 人間男性が自慰の際に使うオナホール。その使い心地や感触をモニターしてもらいたい」

 「オナホール……? それくらいなら、別にいいけど……」

 流石に、オナホールなら命の危険はないだろう……僕はそう判断した。

 「よし、話は決まったな」

 アルベルティーネは、棚から肌色の筒を取り出した。

 僕のペニスより一回り以上は太く、筒の長さは20cmほど。

 「ほら、気持ち良さそうだろう。今から君のおチンチンがこの中に入るんだぞ」

 少女は、僕の眼前にそのオナホールを見せた。

 普通のオナホールのように見えて、かなり違う。

 その入口では女性器のような唇のような部分が、まるで生きているかのようにやわやわと蠢いていた。

 柔らかそうで、凄く気持ち良さそう――

 

 「ふふ…… ペニスが大きくなってきたな。中の感触を想像したか?」

 「そ、そんなの……」

 否定したものの、図星だった。

 僕はあのオナホールに自分のペニスが咥え込まれているところを想像し、未知の感触を期待し始めている。

 「中はこうなっているんだ。今から散々に味わうんだから、良く見ておくがいい」

 うにぃ……と挿入口を伸ばし、アルベルティーネはオナホールの内部を僕に見せつけた。

 「う、うわぁ……」

 その内部は、凄まじい事になっていた。

 怪しげな粘液、奇妙な突起や触手、舌のようなものがたっぷりと詰まって、ぐにぐにぐちゅぐちゅと蠢いている。

 「淫魔の舌や搾精植物の搾精器官、軟体搾精種の触手やスライムをたっぷりと使ったオナホールだ。

  男性の自慰用なんかじゃなく、サキュバスが男をいたぶるためのオモチャだからな…… 極上の絶品だぞ」

 「あ、ああっ……」

 僕は、そのオナホールから目が離せなくなった。

 凄そうなんてレベルじゃない。

 あんなところにペニスを入れたら、発狂してしまうのではないか――

 

 「や、やめて……!」

 「ふふ…… どうした、怖くなったのか?」

 「やめろ……! そんなのに入れたら……!」

 僕は体をよじって叫ぶ。

 しかし体はしっかりと寝台に固定され、逃げる事も抗う事も出来ない。

 僕に出来るのは、声を上げることと首を振ることのみなのだ。

 「では、モニターしてもらおうか」

 「やめて…… お願いだから……」

 少女はサディスティックな表情を浮かべながら、屹立した僕のペニスにオナホールを近付けてくる。

 そして、亀頭とオナホールの挿入口が接した――

 

 くちゅ、くちゅくちゅくちゅ……

 

 まるで唇が吸い付いていくように、僕のペニスはたちまちオナホールの奥深くに引き込まれていった。

 「うぁぁぁぁッ!! ああぁぁ……!」

 オナホールの内部はぐちょぐちょで、触手がしゅるしゅると絡み付いてくる。

 「ああぁぁぁッ!! き、気持ちいい……!」

 「ほらほら。どう気持ちいいか伝えてもらわんと、実験はいつまで経っても終わらんぞ」

 アルベルティーネは、意地悪そうな表情で僕の顔を覗き込んできた。

 「し、触手が…… 絡み付いて……」

 「どこに? どこに絡み付いたのか分からんぞ?」

 「お、おチンチン…… にぃ……」

 

 べろ、べろべろれろれろ……

 不意に、オナホールの中で無数の舌が這い回った。

 ペニスは、たちまち粘液でべとべとにされる。

 「ああぁぁぁぁぁぁ……!」

 「ふふ…… どうした? 何をしてもらっているんだ?」

 「し、舌が、舐め回してきて…… うあぁぁッ!!」

 余りの快感に、満足に喋ることもできない。

 しかしモニターしないと、いつまでも実験が終わらないのだ。

 「どこを舐められている?」

 「先っぽ…… あと、カリも…… ああぁぁ……!」

 ぎゅ……! ぐにゅぐにゅ……!

 オナホールの内壁が脈動し、ペニスが搾り上げられる。

 「し、締められてる…… お、おチンチンが揉まれて……!」

 ペニスの先端に、細かい突起がびっしりと生えた何かがぬるりと密着してきた。

 「ああ……! 何か、先に当たってる……! ぬるぬるして、ざらざらして…… いいよぉ……!」

 「ふふ、それは擬似卵巣だ。卵生の搾精生物の生殖孔では、交配相手の射精を促すためにペニスに卵巣をまとわり付かせるのだ。

  ナマコ娘達やナメクジ娘達の種族がそうだな。彼女達を孕ませてみたくないか? 交配実験も控えているぞ?」

 その余りに気持ちいい感触。

 彼女達の生殖孔では、こんなに気持ちいい事が――

 

 「し、触手が巻き付いてきて…… 舌がぁ……! 舌がぁッ……! うぁぁ……!」

 僕は体を揺すりながら、とにかくオナホールの感触を伝え続ける。

 本当にモニターになっているかどうかは分からないが……

 「中がぐにぐに動いてぇぇ…… 先っぽ、先っぽこちょこちょされてる…… ああぁぁぁッ!!」

 「ふふ…… イきそうか?」

 にやにや笑いながら、アルベルティーネは僕の顔を見下ろす。

 今の僕は、相当に情けない顔をしているだろう。

 「イ、イくよぉ…… もうだめ、イく…… ああぁぁぁッ!」

 

 ――きゅっ。

 根元に絡んだ触手がきゅっと締まり、射精の邪魔をした。

 湧き上がっていた射精感が、不完全燃焼のまま一気に消えていく。

 「な、なんでぇ……」

 「君の味わっているのは生殺しモードでな。絶対にイけないし、イかしてもらえないんだ」

 ふふふ、とアルベルティーネは笑った。

 「そ、そんなぁ……」

 根元を締め上げていた触手が解け、再びペニス全体が嫐られ始める。

 内壁がきゅーっと締まり、ペニスにねっとりと密着してきた。

 「ああ…… 中が締まって、狭いよぉ…… でも、触手が絡み付いてきて……」

 さらに、亀頭にヌルヌルのつぶつぶが絡み付いてきた。

 「ま、また卵巣がぁ…… これ、ダメぇぇ…… もう、出るぅ……!」

 きゅっ。

 またしても、触手が根元を締め上げてくる。

 射精をまたもや妨げられ、僕は思わず腰を突き上げた。

 「あぁぁ…… こ、こんなの……」

 「ふふ、イきたいか?」

 アルベルティーネは、意地悪な表情を浮かべながら尋ねてくる。

 「イきたい…… イかせて……」

 「どんな風に? おチンチンどんな風にされてイきたいんだ?」

 「ら、卵巣でぇ…… 先っぽを……」

 「ふふっ、卵巣が気に入ったのか。卵生の娘との交配実験、これで決まりだな」

 アルベルティーネは、オナホールの根元にあるスィッチを操作した。

 「仕方ない、これで寸止めは終わりだ。思う存分イかせてやる」

 「ああ…… ああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 卵巣にまとわり付かれている僕の亀頭、そこに触手や舌が絡み付いてきた。

 ぐにょぐにょのうねうね、そんな感触に耐えられるはずがない。

 「うぁぁぁぁぁぁッ! で、出るぅぅぅッ!!」

 どくん、どく、どく、どく……!

 僕は腰をガクガクさせ、オナホールの中で果てた。

 中に精液がドクドクと溢れ出し――

 

 ――ちゅぽん。

 

 「うぁッ! なに、これ……!」

 精液を断続的に吐き出す僕の尿道口に、何か柔らかい突起が密着して吸い付いてきた。

 射精中のペニスを襲った甘い刺激に、僕は体を痙攣させる。

 「吸盤だな、それは。これから徹底的に吸い上げられるから、覚悟するがいい」

 「す、吸い付いてくるよぉ……! うぁぁぁぁぁぁ!!」

 尿道口に吸い付いた小さな吸盤は、ちゅぽん、ちゅぽんと先端を吸い上げてくる。

 「その吸盤が、徐々に広がっていくんだ…… さぁ、ここからが気持ちいいぞ〜」

 「え、ええ…… えぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 にゅるるるるる……!

 尿道に当てられていた吸盤が大きく広がり、僕の亀頭全体を包み込んだ。

 そして、ちゅぽちゅぽと吸着してくる。

 「あぁぁぁぁぁ!! 吸われてるよぉ……!」

 ねちゃ、どろどろどろ……

 吸盤に吸い付かれている亀頭に、あの卵巣が絡んできた。

 さらに、舌や触手もペニスに襲い掛かって――

 「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 もう、ペニスに何が起こっているのか良く分からない。

 何をされているのか分からないが、この中は天国だ。

 連続で精液を噴き上げ、余りの気持ちよさに涙すら出てきた。

 

 「ふふ、相当に乱れているな…… モニターの役割としては微妙だが、この製品の開発に成功した事は良く分かった」

 「あがぁぁぁぁぁぁッ!! うぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 僕は全身を激しく痙攣させた。

 このままでは、狂い死にしてしまう。

 「や、やめてぇぇぇぇ! もうやめてぇぇぇぇぇ!!」

 「仕方ないなぁ。もう少し試したかったんだが……」

 そう言いながら、アルベルティーネはオナホールの機能を停止させた。

 ちゅぷ……という音を立て、オナホールは僕のペニスを吐き出す。

 同時に、全身の拘束も解かれていった。

 体が自由になった――と言っても、余りの快楽の余韻ですぐには動けないが。

 

 「ふふふ、出た出た……」

 余韻に浸る僕を尻目に、アルベルティーネはオナホールの中をじっと見た。

 その中には、僕の発射した大量の精液が溜まっているのだろう。

 「ふふ、この精液も有効利用させてもらうぞ。生体実験に用いたり、腹が減ったらオヤツにしたり……」

 「知らないところで、父親になってるってのは勘弁ですよ……」

 僕はフラフラと体を起こした。

 「……でも、なぜ止めてくれたんですか?」

 「なんだ、本音ではもっとしてほしかたのか?」

 「いや、違う違う……」

 僕は首を左右に振った。

 「死ぬまで、あのオナホールの実験台にされると思ってたから……」

 実際、あと10分あれを続けられれば発狂していただろう。

 「初日に君を使い潰す訳にもいかんからな。これからも働いてもらわねば」

 アルベルティーネは、平然と恐ろしい事を言った。

 「な……! 僕は帰りますよ!?」

 「だから、どうやって? この研究所のある平原には、下級妖魔レベルですら太刀打ちできないほど凶悪な魔獣だっているんだぞ。

  君なんか、ここから出た途端にそいつらのエサだな」

 アルベルティーネは、明らかにこちらの足元を見て言った。

 「君が帰るには、私がやる予定の実験を全てこなす以外にないのだ」

 「き、汚い……!」

 「まあ、そう言うな。気持ちいいことが嫌いじゃないだろ?」

 「……」

 真っ向から否定できないのが悲しいところだ。

 正直、次の実験では何をされるのか期待してしまっている自分がいる。

 これで、命の危険さえなかったら――

 

 「あのオナホール、君が帰る時にはお土産に持たせてやろうか?」

 「えっ、本当ですか……!?」

 あれを持ち帰ったら、毎日あれでオナニーできるのか?

 恥ずかしいが、あのオナホールを貰えるというのは嬉しくてたまらない。

 「ふふ…… アレがあれば、もう人間の嫁などいらんな」

 そう言って、アルベルティーネは笑った。

 あんなものを人間界に持って帰ったら、廃人一直線かもしれないな。

 

 「ちなみに、あのオナホールは生体素材で造ったタイプ。機械制御の完全人造タイプもあるぞ。

  こっちもまた凄くて――まあ、君に試してもらうことになるがな……」

 僕は背筋がぞわぞわした。

 「この生体素材タイプも、まだまだ改良の余地はあるな。半透明のクリアタイプなんてどうだ?

  自分のおチンチンがどんな風に責め嫐られているか実際に見えることができたら、快感も倍増じゃないか?」

 それは、確かに凄そうだ。

 自分のペニスに触手や舌、卵巣が絡みついているのが見えるなんて……

 

 「とにかく、今日の実験はここまで。今日から君は住み込みの実験体だ。健康な生活を心掛けるように」

 「……は〜い」

 僕はいやいや返事をした。

 実際のところ、早く帰りたい気持ちが5割、期待感が5割といったところだろうか。

 こうして、ローゼンクロイツ研究所における実験体生活が始まったのだった。

 

 

 



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