鉄の処女(アイアン・メイデン)


 

 「……うん?」

 青年は、目を覚ました。

 どうも、立ったまま寝てしまったらしい。

 ……なぜ?

 そして、ここはどこだ?

 頭がぼんやりして、状況が良く分からない。

 

 「ここは……?」

 青年は、ゆっくりと周囲を見回した。

 目に入ってくるのは、豪華な内装の部屋。

 彼の体は、立てた棺のようなものに押し込まれている。

 首は動くが、体は全く動かない。

 どうも、手錠や革ベルトで拘束されているようだ。

 

 「さ、寒い……」

 ぞくぞくと、寒さが身にしみる。

 それもそのはず、自分は全裸にされているのだ。

 そして、彼の様子を楽しげに見守る美しい女性が一人。

 美しいというよりは、可愛らしいと言った方が的確かもしれない。

 その傍らには、従者らしき可憐な女性も――

 

 「な……! ここは……!?」

 たちまち、青年の脳は覚醒した。

 先ほどまでの夢うつつな感覚は吹き飛び、現実をしっかりと認識する。

 ここは、一体どこなんだ?

 なんで、自分は拘束されている?

 どうして、こんな事になったんだ?

 確か、バイトの帰り道の途中――

 

 「そう。貴方は魔導トラップを踏んでしまい、このノイエンドルフ城へ転送されてきたのです」

 美しい女性は、にこりと笑って告げた。

 「我は誇り高きノイエンドルフ家の当主、マルガレーテ。貴方の運命を手折る者」

 「ノイエンドルフ……? ここは日本じゃないのか……?」

 ここが日本ではない事は、この部屋を見れば分かる。

 ため息が出るほどに豪華で洗練された内装。

 いかにも高価そうで、かつ成金にありがちな下品さの欠片もない調度品。

 ただ、部屋に窓が一切ないことが気に掛かる。もしかして、ここは地下なのだろうか――

 

 「おい、これは誘拐だぞ! 拉致監禁だ! 日本に帰せ!」

 青年は、体をよじりながら叫んだ。

 その様子を見て、女従者は眉をひそめる。

 「御主人様、我々が何者かを説明されては……?」

 「良いのですよ、エミリア。我等が人外の者だと知ろうが知らぬまいが、運命は同じ――」

 マルガレーテはクスクスと笑う。

 そして、立ったまま拘束されている青年に視線をやった。

 「さて…… これより、貴方を拷問に掛けます。甘美で残酷な快楽の拷問に…… ふふふ」

 「ご、拷問だって……!?」

 青年の顔はみるみる蒼褪めた。

 マルガレーテと名乗った女の言葉には、冗談に聞こえない凄味がある――

 その瞬間、青年は気付いた。

 自分はさっきから、無意識のうちに目の前のマルガレーテから僅かに視線を外していたのだ。

 そう、彼女と目を合わすのが怖い。

 とにかく、ここから逃げ出したい……

 青年の体が、異常な恐怖心にぞわぞわと震え出す。

 このマルガレーテという女、絶対に普通じゃない――

 

 マルガレーテは目を細めた。

 「あら。人間にしては、なかなかに感魔性が高いのですね。流石は、エミリアの選んだ上質な獲物――」

 「ありがたきお言葉……」

 女従者は、スッと頭を下げる。

 「では、この場はもう結構です。下がりなさい」

 マルガレーテは忠実なる女従者に告げた。

 「了解しました。失礼致します――」

 彼女はうやうやしく頭を下げ、地下室から退出していく。

 部屋には、マルガレーテと青年の二人のみが残された。

 

 「さて……」

 マルガレーテは、ゆっくりと男性に歩み寄った。

 「ひぃ……!」

 男性は思わず後ずさろうとして、棺のようなものに背中が当たる。

 そもそも、この棺はなんだ?

 なんで立ったまま、こんなところに入れられてるんだ?

 それに、拷問って――

 

 「貴方の入っているのは、鉄の処女(アイアン・メイデン)と呼ばれるモノ。

  人間界でも有名なので、その名くらいは聞いた事があるでしょう?」

 アイアン・メイデン……

 マルガレーテの言うとおり、青年はその名を耳にした事があった。

 確か少女の外見をした鋼鉄製の棺で、その中に罪人を入れる。

 棺の蓋には鋭いトゲが並んでいて、その蓋を閉じれば中の罪人がトゲに貫かれて――

 「……ま、まさかッ!!」

 青年は、驚愕で表情を歪ませた。

 「そう、その通り。貴方の入っている『それ』が、アイアン・メイデンなのです」

 マルガレーテは、可笑しそうに笑った。

 驚愕で歪んでいた青年の表情が、みるみる恐怖に染まっていく。

 蒼褪めた顔を引きつらせ、彼は首を左右に振った。

 「そ、そんな…… やめて……! 助けて……!」

 

 「ふふ、でも――」

 マルガレーテはアイアン・メイデンの蓋に手を掛け、ゆっくりと手前に引いた。

 ギギギ……という音を立て、その蓋があらわになる。

 青年の拘束されている位置からは今まで蓋の裏が見えなかったのだが、そこに鋭利なトゲなど無かった。

 そのかわり、蓋の裏には――

 

 「な、なんだ…… それ……!?」

 青年は、余りの奇怪さに思わず息を呑んだ。

 蓋の裏には、肌色の軟体がみっしりと貼り付いていたのだ。

 その軟体はひくひくと蠢き、表面はざわざわと波打っている。

 これは、肉――!?

 

 「ふふ…… これは搾精淫肉と呼ばれる、意思を持った肉床」

 マルガレーテは、青年の怯えた表情を楽しみながら淫靡に笑った。

 「この肉が貴方のおちんちんを包み込み、精液を吸い尽くすのです。気持ちよさそうでしょう?」

 青年は、マルガレーテの言葉の意味を理解するのに時間が掛かった。

 ――そして、このアイアン・メイデンに使っている搾精淫肉は下級淫魔から精製した『搾夢肉床』。

 上級淫魔から精製した『淫魔の肉』を搾精に使えば、人間など五分ほどで死んでしまう。

 アイアン・メイデンは即死させる為の器具ではないので、『搾夢肉床』の方が使われているのだ。

 

 マルガレーテは、その蓋を青年によく見えるように示した。

 顔の高さの部分には小窓が付いていて、蓋を閉めた後もそこから獲物の顔が見えるようになっている。

 青年の顔をしっかりと見据え、マルガレーテは艶っぽく笑った。

 「この蓋を閉めれば、貴方の全身にこの『搾夢肉床』がにゅるにゅると密着します。

  たちまち、貴方はおちんちんを膨らませてしまいますわ。

  すると『搾夢肉床』は、貴方の大きくなったおちんちんにねっとりと絡み付いてくるんです」

 「あ、うぁぁ……」

 彼女の言葉に、ガクガクと身を震わせる青年。

 マルガレーテは、必ず拷問の内容をじっくりと説明する事にしている。

 獲物が状況を理解していない上での拷問など、楽しくもなんともないのだから。

 

 「『搾夢肉床』は、おちんちんだけじゃなくあらゆる性感帯を包み込んで愛撫してきます。

  ぐにゅぐにゅ、うにうにと全身を揉み立て、天国を味あわせてもらえますよ。

  おちんちんは特に優しく可愛がられ、たちまち貴方は絶頂へと導かれるでしょうね……」

 人間界においてアイアン・メイデンを使用する前にも、刑吏はじっくりと器具の解説をしたという。

 蓋のトゲは人体の急所から僅かにズレるように配置されていて、蓋を閉めても即死する事はできないと。

 すぐには死ねず、無限の痛みを感じながら延々ともがき苦しむことになると――

 刑吏はそんな解説を長々と続け、罪人を恐怖のどん底に追い詰めていったという。

 器具の説明の時点で、もう拷問は始まっているのだ。

 マルガレーテは、そんな手順をもしっかり踏襲していた。

 

 「貴方がドクドク出した精液は、この『搾夢肉床』に全て吸い上げられます。

  そしてこの蓋を閉めている限り、貴方がどれだけ泣き叫んでも責め嫐られ続けられるのですよ。

  ゾクゾクするでしょう、このアイアン・メイデンに精を搾り取られ続けるなんて。その命、尽きるまで――」

 「や、やめ……!」

 青年は歯をガチガチと鳴らした。

 血の替わりに、精を啜る処女の棺――

 甘美で残酷な快楽の拷問、彼女はさっきそう表現した。

 これほど甘美で、これほど残酷な拷問が他にあるだろうか。

 

 そしてマルガレーテは、人差し指で自らの唇をつつ……となぞった。

 「この『搾夢肉床』は、『鉄の処女(アイアン・メイデン)』にちなんで処女――

  男の精を搾ったことのない下級淫魔から精製されたものなのですよ」

 意思を持つ肉床――

 青年は、そんなマルガレーテの言葉を思い出す。

 肌色の軟体は、それを証明するようにうねうねと蠢いていた。

 「ふふっ。貴方の精液が欲しい欲しい……と、この子は言っています。

  良かったですね。たっぷりと御奉仕してもらえますよ」

 そう言って、マルガレーテは淫靡な笑みを浮かべた。

 今から、この蓋が閉められて――

 『搾夢肉床』にペニスを浸されて――

 アイアン・メイデンに、たっぷりと精を搾られる――

 その命が尽きるまで――

 「あ、ああぁぁ……」

 青年の顔が恐怖で歪む――その中に、ほんの微かな期待の色が浮かぶのをマルガレーテは見逃さない。

 恐怖と期待が交錯する表情――

 彼女の、二番目に好きな顔だ。

 

 「では、参りますわ――」

 「あ……! や、やめろッ……!」

 マルガレーテは蓋に手を添え、ゆっくりとそれを閉じていく。

 ギギギ…… というきしんだ音を立て、青年に迫っていく『搾夢肉床』。

 「あああ! やめてくれぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 「ふふ…… ふふふふっ……」

 まるで焦らすように、マルガレーテはじわじわと蓋を閉じていった。

 青年の体に『搾夢肉床』が密着するまで、あと数センチ。

 「あ、ぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 「ふふ…… 処女に抱かれて悶えなさい」

 

 ――びちゃ。

 

 アイアン・メイデンの蓋は、完全に閉じられてしまった。

 どういう仕組みか、蓋が閉じられた瞬間に革ベルトなどの拘束が解かれる――

 ――が、青年はそれどころではなかった。

 

 「ああ……!! うぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 にゅぐっ、うにうに…… みちみち……

 快楽という鋭利なトゲは、容赦なく青年の全身を貫いた。

 『搾夢肉床』が、ねっとりと青年の体を包み込んで責め嫐り始めたのだ。

 

 「うぁ……! ああぁ……! ああッ!!」

 全身に浴びせられる甘美な刺激に、青年のペニスがみるみる頭をもたげていく。

 そして勃起したペニスは、たちまち『搾夢肉床』に沈み込んだ。

 ぬちゅ…… うにゅうにゅ、ぐちゃぐちゃぐちゃ……

 「ああッ!! がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 『搾夢肉床』は青年のペニスを嬉々として包み込み、蠕動しながら優しく締め上げる。

 青年は、アイアン・メイデンの中で身をよじらせた。

 しかしその鋼鉄の牢獄は、もはや青年を解放する事などない。

 

 「ふふ…… おちんちん、可愛がられているようですね」

 「あ……ッ! あぁぁぁぁぁッ!! うわぁぁぁぁぁぁッ!!」

 うにゅうにゅぐにゅぐにゅ……

 青年のペニスが、『搾夢肉床』に包み込まれて嫐り回される。

 妖しく揉み立てられ、カリや尿道口をやわやわとくすぐられる。

 「ああッ…… と、溶ける……!」

 青年は息を荒げ、唇を震わせた。

 「ふふ…… おちんちん、快楽で溶かしてもらってるんですの? 良かったですねぇ」

 そう言いながら、マルガレーテは微笑んだ。

 「では、そのままイってしまいなさい。『搾夢肉床』に、たっぷりと精を注ぎ込んで――」

 「そんな…… あぁぁ! ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 歯を食いしばって射精をこらえようとするも、何の抵抗にもならない。

 たちまち青年は、絶頂へと導かれていった。

 「ああッ!! ああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 どく、どくどくどくどく……!

 快楽で歪んでいた青年の表情が、たちまち涎も垂らさんばかりに弛緩する。

 ペニスの先から噴き出した精液は、『搾夢肉床』にじゅるじゅると吸い上げられていった。

 射精中のペニスにも肉壁が絡んで揉み込み、最後の一滴までを絞り出す。

 青年は、アイアン・メイデンに精を搾り取られたのだ。

 

 「ふふ…… 処女にイかされるなんて、男の面目丸潰れですわね」

 快感を味わう青年の表情を存分に堪能し、マルガレーテは言った。

 そして頭部の小窓から手を伸ばし、青年の頬を白く冷たい手で優しく撫でる。

 「もっと、この可愛い顔を快楽で歪ませなさい……」

 「あ、あぅぅぅぅぅッ!!」

 マルガレーテに撫でられた青年の頬が、ざわざわと総毛立つ。

 その甘美な感触は、美酒のごとく彼を酔わせた。

 これが、人外の魔性――

 

 うにゅうにゅうにゅ、ぬちゅ……

 「あ、あああぁぁぁッ!!」

 ペニスは『搾夢肉床』の奥深くまでずぶずぶと引き込まれ、妖しい蠢きで翻弄される。

 さらに『搾夢肉床』は玉袋にも絡み付いてきて、ねっとりと責め嫐ってきた。

 蓋の肉床部分が、徐々に侵食してきているのだ。

 「ああうぅッ!! 出してぇ……!」

 青年は、マルガレーテに懇願した。

 ぐにゅ、ぐにゅ、さわさわ…… ぐにょぐにょ……

 とうとう下半身全部が『搾夢肉床』に覆い込まれてしまう。

 「あうッ! ああぁぁぁぁぁぁッ!」

 青年は、その異様な感触に悶え狂った。

 下半身全体が、快楽に溶かされていく。

 「だ、出してぇ…… ここから、出してぇ…… うあぁぁぁッ!!」

 青年は亀頭を『搾夢肉床』にぐにゅぐにゅと揉み込まれ、尿道口を嫐り回された。

 敏感な部分を責め上げられ、青年は体をビクンビクンと痙攣させる。

 もう、二度目の絶頂が近い――

 

 「あら? もう駄目なのかしら……?」

 マルガレーテは、小窓から青年の顔を見下ろした。

 「では、私の顔を見ながら射精する事を許します。たっぷりと出しなさい」

 「ああぁぁぁ……! あああああああッ!!」

 マルガレーテは自分から目を逸らしそうになる青年の顔に手を伸ばし、ぐいっと正面に向けさせた。

 強引に視線を合わせ、マルガレーテの顔に嗜虐的な笑みが浮かぶ。

 「――イきなさい。見ていてあげますから」

 「そんな、見ないで…… ああぁぁぁ…… うわぁぁぁッ!!」

 ぬちゃ…… ぐちゅぐちゅ…… ぐちゃぐちゃぐちゃ……

 「も、もう……! ああッ!! ああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 どくん、どくどくどく……

 マルガレーテを凝視しながら、そして彼女に凝視されながら、青年は絶頂した。

 股間に生温かいものがドクドクと弾け、それはすぐに吸い上げられる。

 「ふふ…… 気持ち良かったですか?」

 マルガレーテは、愉悦に口元を歪めて尋ねる。

 「あ、あぁぁぁ……」

 青年は体を弛緩させ、アイアン・メイデンの中にもたれ込んだ。

 今ので、もう二回目の射精。

 しかしアイアン・メイデンの搾精は、青年が死に至るまで終わらない――

 

 「では――」

 マルガレーテは、顔の部分に開いていた小窓を閉めた。

 たちまち、アイアン・メイデンの中は闇に包まれる。

 「あ……! うぁぁぁぁッ! 出して! 出して――ッ!!」

 突然の闇。

 その不安感に、青年は狂乱した。

 しかしそれを慈しむかのように、『搾夢肉床』は青年の全身をねっとりと嫐り立ててくる。

 ペニスをにゅぐにゅぐと絞り上げ、いたぶるように締め付けて――

 

 「後は、アイアン・メイデンに可愛がってもらいなさい。

  処女に弄ばれるというのも、悪くないでしょう…… ふふっ」

 「あ、ああぁぁぁッ!! 出してッ! 出してッ! 出して――ッ!!」

 「さようなら、素敵な貴方。屍になった後、出してあげますわ」

 そう言って、マルガレーテはアイアン・メイデンから離れた。

 彼女の足音が徐々に遠ざかっていき、ギギギ……バタンと扉の閉まる音がする。

 マルガレーテは、青年を残して地下室から出て行ってしまったのだ。

 

 後に残ったのは、氷のような静寂。

 そして、青年の全身が責め嫐られる淫音。

 にゅちゅ…… ぐちゃぐちゃ…… ねちゃねちゃ……

 「ああッ!! うわぁぁぁぁぁぁッ!!」

 『搾夢肉床』の責めはみるみる執拗になり、たちまち青年を昇天させた。

 ドクドクと射精された白濁液をじゅるじゅると吸い上げ、最後の一滴まで搾り上げる。

 そして精を強制的に吐き出させた後は、再びペニス全体をねっとりと責め嫐り始めた。

 この搾精が延々と続くのだ。延々と、延々と――

 

 「う、うぁぁぁぁぁッ! だ、出してぇぇぇ…… ここから、出してぇぇぇぇ……」

 青年は強制的に搾精されつつ、誰にともなく叫ぶ。

 部屋には、もう誰もいないにもかかわらず。

 その声を聞く者は、自分とアイアン・メイデンしかいない。

 

 「ああぁぁ…… 出してぇ…… うあッ! ああああぁぁぁぁッ!!」

 青年は涙を流しながら叫び悶える。

 ぬちゃ…… ぐにぐにぐに…… にちゃ……

 どくん、どくどく、どく、どく……

 

 かちゃっ――

 唐突に、アイアン・メイデンの中に光が差し込んだ。

 誰かが、顔の部分の小窓を開けたのだ。

 一体、誰が――

 

 「まだ生きておられますか?」

 そう言って中を覗いたのは、あの女従者だった。

 メイドスタイルに身を包んだ彼女が、マルガレーテが去った後の部屋に姿を現したのだ。

 「ああ…… 助けてぇ…… ここから、出して……」

 「はい、もとよりそのつもりで」

 メイドは淡々と言うが、開けてくれる気配は無い。

 青年の悶える顔を、無表情のままじっと眺めている。

 

 「はやく…… はやく助けて…… 出ちゃうよぉ……」

 「ええ。一度くらいは、無様に射精されるさまを見ておこうかと」

 ほんの微かに目を細め、メイドは言った。

 その間にも、青年はどんどんアイアン・メイデンに追い込まれていく。

 ぐちゅぐちゅぐちゅ…… にゅるにゅる…… うにゅうにゅ……

 「うあぁぁッ!! で、出る…… うぁぁぁぁぁッ!!」

 「ふふ…… そんなに気持ちいいのですか?」

 「見ないで…… 見ないで…… ああぁぁぁぁぁッ!!」

 どくん、どくどくどく……

 メイドに冷ややかな目でじっと見詰められながら、青年は表情を歪ませて絶頂した。

 果てる瞬間から、精液を搾り上げられる間の顔、そして射精を終えた後の放心までをつぶさに観察される。

 「ああ、あぁぁぁ……」

 青年は、まるでメイドに視姦されながら絶頂したように錯覚した。

 いや、彼女は確実に目で犯していたのだ。

 

 「お楽しみのご様子ですが、お邪魔します……」

 そしてメイドは、がちゃりとアイアン・メイデンの扉を開けた。

 青年の体はそこから弾き出るように飛び出し、へなへなと床にへたばる。

 「な、なんで助けてくれるの……? こんな事をしたら……」

 目の前のメイドを見上げ、青年は尋ねた。

 彼女は、マルガレーテの忠実な従者のはず。

 勝手に獲物を解放すれば、叱責されるだろう――そんな事は青年にも分かる。

 

 「大丈夫なのですよ。マルガレーテ様のお許しは得ています」

 無表情なメイド――エミリアは、まるで平気そうに言った。

 「マルガレーテ様は、『地下に捕らえている男を一人譲る』と仰せになりました。

  解釈の問題なのですが、ここは地下であり貴方はアイアン・メイデンに捕らわれておりました。問題はありません」

 「そんな…… 大丈夫なの?」

 青年は、無性にエミリアが心配になってきた。

 自分を助けたせいで、彼女が処罰されでもしたら――

 「大丈夫だと言ったでしょう? マルガレーテ様はそう簡単に従者を処罰するほど狭量ではありません。

  それにノイエンドルフ家の当主たるお方が、自身の都合のみで前言を撤回なさりません」

 エミリアは、青年に手を貸して立ち上がらせながら言った。

 

 「あ、ありがとう……」

 青年は、エミリアに素直に礼を言う。

 ほんの微かに彼女は笑みを見せた。

 「どういたしまして。それでは、今から私の屋敷に参りましょうか――」

 

 

 



この娘さんに搾られてしまった方は、以下のボタンをどうぞ。




一覧に戻る