ナマコ娘


        

        ――満月の夜。

        月が真円を描く夜は、心がざわめく。

        甘美な破壊衝動に駆られ、何かを壊したくなる。

        素敵なものほど、壊す喜びも深い。

        大切なものほど、無残に壊したくなってしまう。

        さて、今夜は何を壊そうか――

        

        そんな彼女は、よく砂浜へ来ている男性を見つけた。

        以前から気になっていた、心の澄んだ人――

        決めた、あの男を壊そう。

        

        満月の夜が過ぎた時、私は自らの行為を心から後悔するだろう。

        その悔恨すら甘美。たまらなく愉しい。

        愉しくて愉しくて、自分までもが壊れてしまいそうだ。

        満月の夜は、それがたまらなく愉しい。

        

        

        

        

        

        俺は、美しい女性に話し掛けられていた。

        いつも散歩している砂浜で出会った、ワンピースに麦藁帽の女性。

        その端整さ、清楚さにもかかわらず、俺には彼女の姿が禍々しく感じられた。

        

        「もう、こんな時間ですね。では――」

        俺は早々に話を切り上げ、その場から離れようとしたとき……

        人の胴体ほどもある巨大ナマコに襲われ、腰から下がナマコに飲み込まれてしまった。

        そしてワンピースを着た女性の下半身が、巨大ナマコと化していた事に気付く。

        俺の予感は正しかった。この女は、化け物の類だったのだ――

        

        「ふふふ……心優しい貴方、今から壊してあげますね。狂いそうな快楽と、身を震わせる屈辱で……」

        月の光を浴びながら、ナマコ娘は妖艶に笑う。

        「何を言ってるんだ、あんた! 離してくれ!」

        人外の者が目の前にいるという恐怖も忘れ、俺は叫んだ。

        「俺なんて食べても美味くない! 離してくれよ!!」

        そして束縛から逃れようと、ナマコ部分を引き剥がそうとする。

        

        「捕食などしません。言ったでしょう? 壊してあげるって……」 

        ナマコ娘は淫らな笑みを浮かべた。

        「今から貴方は、私の一方的な生殖の道具になるんです」

        「生殖の道具って…… おい、何を!!」

        咥え込まれているナマコの内部で、ジーンズとパンツが引き剥がされた。

        つまり、咥え込まれている下半身はナマコ内部で完全に露出している。

        生殖の道具というのは、まさか……!!

        

        「貴方を捕まえているのは、捕食口ではなくて生殖孔。

         これで貴方のおちんちんをねちゃねちゃにして、精液をたっぷり吸い出して差し上げます。

         せいぜい、泣いて叫んで抗って下さいね。その方が私も愉しいですから……」

        ふふふ……と淫靡に笑う女性。

        「たっぷり吸い取った精液で、貴方の子供を孕んであげますから……どう? ゾクゾクするでしょう?」

        「嫌だッ! なんで化け物なんかと子作りなんて……!!」

         ナマコ娘は抗う俺に対し、愉悦に満ちた表情を投げ掛けていた。

        「そう……もっと抗って。その表情を、歓喜と苦悶に変えてあげますから……」

        「誰が化け物なんかに……おぞましい……!」

        「ふふっ、では快楽に浸らせてあげます。その強がりがいつまで続くか、愉しみですねぇ」

        

        その瞬間、俺の下半身を呑み込んでいる生殖孔全体がじゅぽじゅぽと蠕動を始めた!

        内壁全体が波うち、にゅるにゅると下半身全体を揉みたててくるのだ。

        まるで大きな口に咥え込まれ、しゃぶられているかのよう――

        「うあッ……! やめ……ろ……」

        余りにも甘美な感触に、俺は思わず上擦った声を上げた。

        生殖孔という事は、人間女性にすれば膣に相当するのだろう。

        すなわち俺は、ナマコ娘の膣に下半身を丸ごと挿入している――

        そんな快楽に、俺のペニスは徐々に頭をもたげ始めてしまった。

        

        「あはっ……化け物にイイ事されて、喜んじゃってぇ……」 

        ナマコ娘は、嘲るように笑った。

        「おぞましいんじゃなかったんですか? そんな化け物の穴におちんちん咥え込まれて、喜んじゃってる節操なし」

        「……ッ!」

        俺は悔しさに唇を噛んだ。

        こんな化け物に、いいように感じさせられるなんて……

        「やめろ、化け物……! ああッ! なに、これ……」 

        俺の悪態は、悦楽の声にすり替えられる。

        ナマコ娘の生殖孔内部で脈打つ俺のペニスに、何かぬるりとしたものが触れたのだ。

        生暖かくネバつきながらも、ザラザラした感触。そんな奇妙なものが、俺のペニスに絡んでくる。

        気を抜いたら、すぐにでも射精してしまいそうなほど甘美な感触――

        肉棒に妖しくまとわりつかれ、俺はみっともない呻き声を上げていた。

        

        「うふふっ。それ、私の卵巣です」

        「ら、卵巣……!?」

        「ええ。私の卵子がいっぱい詰まっているんですよ」

        ナマコ娘はくすくすと笑った。

        「貴方は単なる生殖の道具。おちんちんにたっぷり卵巣を塗りつけてあげますから、ドクドク精液吐き出して下さい。

         それで、卵子は受精しちゃうんですよ……でも貴方にとっては、出しちゃったら大変なことになりますよねぇ?」

        「な、そんな……!」

        受精――すなわち、このナマコ娘との子を為すという事。

        そんなの、絶対に駄目だ。

        「う、ぐ……!」

        俺は唇を噛み、快楽に抗って射精をこらえるしかなかった。

        その様子を、ナマコ娘は嗜虐的な表情で見下ろしている。

        

        「ふふ……じわじわいたぶって差し上げます。いつまで我慢できますかね?」

        ぐにょぐにょ、にゅるにゅるにゅる……

        卵巣はぐにょぐにょと蠢きながら絡みついてきて、無慈悲にも射精を強要してくる。

        ぬとぬとと粘つきながら、ペニスの隅々にまでまとわりつく――まるで、生きているかのように。

        「ほら、ほら、ほらぁ……気持ちいいでしょ? でも出しちゃったら、おぞましい化け物との子供が産まれちゃいますよ?」

        ぬとぬとと粘つきながら、ペニスの隅々にまで絡みついてくるナマコ娘の卵巣。

        駄目だ! 射精してしまうと、このナマコ娘との子供が――

        「やめてくれ……こんなの、だめだ……やめて……」

        俺は首を左右に振り、涙すら流しながら射精をこらえる。

        それでも、俺の肉体は快感に屈しつつあった。

        

        「ほらほら〜もっと我慢しなくちゃダメですよね。貴方の子供、孕んじゃいますよ?」

        満面に愉悦を浮かべ、そう告げるナマコ娘。

        彼女の卵巣はペニス全体にねっとりと粘りつき、妖しく蠢きながら俺の精液を搾り出そうとする。

        余りの快感に、俺はとうとう昇り詰めてしまった。

        

        「あああッ! もうだめだッ、出る……!」 

        どくっ、どくどくどく……

        俺はペニスを包むぬめった感触に我慢できず、とうとうナマコ娘の中で果ててしまう。

        ほとんど耐えることができず、彼女が求めるままに射精してしまったのだ。

        「――あ〜あ、出しちゃった」

        白濁液を吐き出している間も卵巣はぐにぐにと亀頭に絡んで射出を促し――

        そして射精後は、サオ全体を搾り上げて尿道に残る精液を全て吸い出してくる。

        「あ、あ、あぁ……」

        俺は呻きながら、最後の一滴までを搾り取られてしまった。

        ナマコ娘の卵巣に、たっぷりと精液を注いでしまったのだ。

        

        「ふふッ…… 思ったより早く屈服してしまいましたね」

        ナマコ娘は、にっこりと笑いながら告げる。

        「分かってますよ。おちんちんとっても気持ちよくて、我慢できなかったんですよねぇ?

         出しちゃったら子供ができちゃうの分かってたのに、こらえきれなかったんですよねぇ?

         いっぱいねちょねちょされて、良かったですねー。ふふ、なんて軟弱なおちんちん」

        「うッ、うぐッ、何で、こんな事……」

        俺は、無様にも嗚咽しながら涙を流してしまった。

        こんなおぞましい器官に下半身を咥え込まれ、強制的に与えられる快感に屈服し、そのまま射精してしまう……

        そんな屈辱と余りの惨めさに、涙が止まらない。

        

        「ふふ……貴方、いじめられるのが好きなんですか? じゃあたっぷり弄んで、いたぶって、嫐り尽くしてあげましょうか。

         犯されながらアンアン悶えて、化け物の生殖器にドクドク精液出してください」

        「もう、止めてくれ……」

        俺は顔を涙で汚しながら、みっともなく哀願する。

        ナマコ娘の一言一言が、俺のプライドを壊していった。

        

        「ふふっ、本当はもっとしてほしいんでしょう?

         おちんちんに卵巣ねちゃねちゃ絡められるの、病み付きになっちゃったんでしょ?」

        ナマコ娘はにっこりと笑う。

        「中に精液出して孕ませちゃうの分かってて、まだしてほしいんでしょう……?」

        「いやだ……やめろ……」

        口ではそう言いながらも、先ほどの快感を再度味わいたいと思っている自分もいた。

        それこそが屈辱であり、それこそが情けないのだ。

        そしてその思いに応えるように、ペニスには再び卵巣が粘りついてきた。

        ざらざらとした卵子の一つ一つが、亀頭やカリ、サオから根元に至るまでを丹念に嫐る。

        ぐにゅ、ぬるぬる……うにゅ、ぐにゅぐにゅ……

        

        「子供達も、貴方の精液が欲しいって言ってますよ。たっぷりあげて下さいね、ふふっ……」

        じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽじゅぽっ……

        卵巣による刺激に加えて生殖孔全体が蠢き、俺の下半身をリズミカルに締め付けては緩めてきた。

        まるで、下半身全部をしゃぶり尽くすように――

        その淫らな動きに、俺はたちまち絶頂へと追い詰められてしまう。

        

        「うわっ、もう…… うわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

        どく、どぷ、どぷどぷっ……

        快楽の声を上げながら、俺は再び卵巣の中に射精してしまった。

        「また出しちゃった。そんなに良かった? 化け物のおまんこ、そんなに気持ち良い?」

        ぐにゅ、ぬるぬるぬるぬるぬる……

        射精してもなお、卵巣はペニスにぬめりながら絡みついてくる。

        まるで、本能のままに精液を渇望するように――

        「あ、あ、ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

        その甘い感触に、俺はあられもなく絶叫した。

        二度目の射精が終わらないうちに、またもや射精の衝動がこみ上げてくる。

        なすすべもなく、ペニスから三度目の精液を迸らせてしまったのだ。

        凄まじい快感にさらされ、無理やりに体験させられる強制射精。

        俺は悶え狂いながら、連続する絶頂を経験していた。

        

        「ふふっ……気持ちよかったら、化け物のおまんこでも構わないんだ。恥知らずなおちんちん」

        「うう、ああぁぁぁぁ……」

        ぬにゅ、ぬにゅぬにゅぬるぬるぬる……

        ねっとりと、ぬめりを帯びて――

        ぎゅぷぎゅぷと、しゃぶり尽くすように――

        そして俺のペニスをいじめ尽くすかのように卵巣が這い回り、そのぬめりに精を放ち続ける。

        どぷ、どぷどぷ……

        うにゅる、にゅるぬるぬる……

        「最高でしょう? 化け物とのセックス。良かったですねぇ、イイ思いがたっぷりできて」

        「ああ、いい…… 気持ちいい……!」

        訳も分からず叫びながら、俺は強制的に絶頂を与えられ続ける。

        ペニスは粘りつく卵巣に嫐られ抜き、下半身全体が淫らに蠢く生殖孔に翻弄される。

        うにゅる、にゅるぬるぬる……

        「うああ……あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」

        どぷ、どぷどぷ……

        凄まじい搾精をこの身に受け、俺は何度も何度も精液を搾り上げられ――

        

        「はい、今の射精で全ての卵子が受精しました」

        ナマコ娘は、軽く腹を撫でながら言った。

        「じゃあもう貴方いらないんで、一気に吸い尽くしてあげますね」

        「えッ……!? うわっ! ああああ……ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

        ぐにゅ、にゅる、にゅるにゅるにゅるにゅるぬるぬるぬるぬるぬるぬる……

        どくん、どぷ、どぷ、どぷっ……

        ナマコ娘の全てが、俺を搾り尽してきた。

        生殖孔の内壁が、卵巣が、微塵の容赦もなく俺を天国へ誘う。

        鋭利な快感が体のあちこちを刺し貫き、俺は苦悶に身をよじる。

        「う、あああッ!! があぁぁぁぁぁぁッ!! うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

        どくどく、どぷ、どぷどぷっ……

        『死』を連想するほどの、出口がない漆黒の快感。

        俺は、このまま――

        

        

        生殖目的の搾精は終わった。

        これは、壊すのが目的の搾精。

        快楽でペニスが溶ける。脳が焼ける。感知できる快感がオーバーフローし、彼の体を蝕んでいく。

        そして青年は、肉体も心も全てを壊されてしまった。

        

        

        

        

        

        何時間が経っただろうか。

        青年の体は、浜辺に寝かされていた。

        彼の顔を、泣きはらした顔で覗き込む女性。

        

        満月は水平線の彼方に姿を隠し、空はうっすらと明るくなり始めている。

        どんな夜にも、必ず終わりは来るのだ。

        そして浜辺には、生命を吸い尽くされて壊れてしまった男性が横たわっていた。

        もう彼は、二度と砂浜に来る事もない。

        女性と談笑を交わす事もない。

        自分が、壊してしまったのだから――

        

        「あぁぁ……うぁぁぁぁぁ……」

        女性は青年の亡骸にすがり、声を上げて慟哭した。

        その体を何度も揺すり、しがみつく。

        何て事を――

        自分は、何て事を――

        

        ――でも、愉しかっただろう?

        

        「私は、私は……」

        女性の涙が、ぽたぽたと青年の顔を濡らす。

        その顔は、不思議なほど安らかだった。

        

        ――大切なモノを壊すほど愉しい。お前は分かっていたはずだ。

        

        「ごめんなさい、ごめんなさい……」

        青年の体をしっかりと抱き締め、その唇に自らの唇を重ねる。

        冷たい死の味。こうしてしまったのは自分。

        

        ――壊すことが愉悦。この結末は必然。

        

        彼女は、ゆっくりと立ち上がった。

        青年の肉体は、人間の手により人間として埋葬されるのが良い。

        少なくとも、自分に何かをする資格はない。

        女性は涙を拭き、青年を残して砂浜から立ち去った。

        自らの行為に悔恨し、身を引き裂くほどの悲しみに囚われながら。

        

        

        ――さて、次の夜は何を壊そう。

        

 

 



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