ナマコ娘
俺は海が好きだった。
それに理由はない。
花が好きな人がいるのと同様に、登山が好きな人がいるのと同様に、納豆が好きな人がいるのと同様に……
特に確たる理由もなく、俺は海が好きだった。
だから、夕方には砂浜を散策するのが日課になっていた。
「……ったく、どこのバカだ」
砂浜に投げ捨てられた吸殻を見つける。
決して正義感ぶるわけではないが、こういう行為をするヤツは生理的に嫌いだ。
俺は吸殻を拾い上げると、持ち歩いている携帯灰皿に突っ込んだ。
「――お優しいんですね」
不意に、柔らかな女性の声がした。
顔を上げると、目の前に青のワンピースと麦藁帽子の若い女性が立っていたのだ。
「いや、そんなんじゃないですよ」
俺は、わざとぶっきらぼうに答える。
女性は10代の後半だろうか。若さの割には、かなり落ち着いた様子だ。
いかにも清楚そうな女性は柔和な笑みをたたえながら、にこやかに話しかけてきた。
「貴方の姿、よく砂浜で見かけます」
「ええ。海が好きで、ちょくちょく来てるんですよ」
「貴方は、不思議な方ですね。人の目が無い時を選んで、わざわざゴミを拾っている。普通の方は逆なのに」
俺は、いわゆる『自然愛好家』と同一視されるのが嫌いだった。
だから、ゴミを拾う時はなんとなく人目を避けていたのだ。
「私が見ている前ではせっせとゴミを拾い、私のいないところでは知らぬ振りだった方は数多かったのですが――」
「それは、貴女の前でいい格好をしたかったからでしょう」
気恥ずかしさからか、俺はそっけなく告げた。
確かにこの美女の前では、ささやかなヒーロー気取りが何人現れても不思議ではない。
「人の目の届かないところで善行をなす人こそが、真の善人と言える。私はそう思います」
「俺は、自分の行いを善行だとは思ってませんよ。単なる自己満足です」
俺は、突き放すように言った。
この女性は、文句なく美しい。
もし繁華街で出会って、そして喫茶店にでも誘われたら喜んでご一緒するだろう。
だが、今は何か不吉な予感がする。
砂浜という場でこの女性と出会う事で、なんとも言い知れない嫌悪感を俺は感じていた。
「なんて素敵な方――」
女は、唐突に俺の手を取った。
「私、貴方の子を産みたいです」
「えっ……!?」
余りにも飛躍した女の言葉。
これは、非常に赤裸々かつ積極的な愛の告白なのか……?
俺が困惑した瞬間、砂浜から巨大な何かがせり上がってきた。
これは、大蛇……!? いや、ナマコだ!
人の胴体ほどもある巨大ナマコが、砂の中から……!!
「なんだ、これ……! 逃げましょう!」
女の手を引こうとした刹那、俺は気付いた。
彼女は巨大ナマコを恐れるどころか、まるで平気そうな微笑を浮かべている――
いや、違う……!!
彼女のスラリと伸びた長い足はもはや見えない。
ワンピースを着た女の下半身が、巨大ナマコと化していたのだ。
「な、なんだ、これ……!? あんたは……!!」
一瞬、俺は逃げる事を忘れた。
その瞬間に、女の下半身である巨大ナマコが俺にばくりと食らい付いてきたのだ。
俺の下半身丸ごとを覆うように、腰から下がナマコに飲み込まれてしまう。
――食われる!!
俺はそう覚悟したが、ナマコは下半身を咥えただけで何もしてこない。
何か分からないが、逃げるチャンスだ!
「くっ、この……!」
俺はズボンを脱ぐように、腰の部分までを咥え込んだナマコを引き剥がそうとする。
「どうかお願いです、逃げないで下さい」
女は、懇願するように言った。
やはりこの女が、ナマコを操っている。
いや。操っているというか、どう考えてもナマコは女性の身体の一部分だ。
この女性は、人間ではない――
「何をするんだ、あんた! 離してくれ!」
人外の者が目の前にいるという恐怖も忘れ、俺は叫んだ。
「俺なんて食べても美味くない! 離してくれよ!!」
そして束縛から逃れようと、ナマコ部分を引き剥がそうとする。
「捕食などしません。私はただ、貴方との子供が欲しいのです」
ナマコ娘は、目に涙を浮かべながら言った。
「どうかお願いですから、逃げようとなさらないで下さい。そして私と、愛の営みを……」
「愛の営みって……おい、何を!!」
咥え込まれているナマコの内部で、ジーンズとパンツがずるりと引き剥がされた。
つまり、咥え込まれている下半身はナマコ内部で完全に露出している。
愛の営みというのは、まさか……!!
「貴方を捕まえているのは、捕食口ではなくて生殖孔。この中に、いっぱい精液を注いで頂きたいのです……」
「嫌だッ! なんで化け物なんかと子作りなんて……!!」
化物なんかと子をなす、おぞましいまでの嫌悪感。
そしてナマコ娘は、悲しそうな表情を浮かべいた。
「このままだと、無理やりになってしまいます。私は、そんなの……」
「うるさい! ここから出せ!! 出してくれ!!」
俺は聞く耳など持たず、手足をバタつかせて暴れる。
こんな化け物の中に精液を注ぐだなんて、考えただけでもおぞましい。
「申し訳ないですが、仕方ありませんね……」
ナマコ娘は、きゅっと唇を噛んだ。
「貴方にとっては不本意でしょうが、精液を無理やりにでも搾り出して差し上げます」
決意を込めたように、きっぱりとナマコ娘は告げる。
その瞬間、俺の下半身を呑み込んでいる生殖孔全体がじゅぽじゅぽと蠕動を始めた!
内壁全体が波うち、にゅるにゅると下半身全体を揉みたててくるのだ。
まるで大きな口に咥え込まれ、しゃぶられているかのよう――
「うあッ……! やめ……ろ……」
余りにも甘美な感触に、俺は思わず上擦った声を上げた。
生殖孔という事は、人間女性にすれば膣に相当するのだろう。
すなわち俺は、ナマコ娘の膣に下半身を丸ごと挿入している――
そんな快楽に、俺のペニスは徐々に頭をもたげ始めてしまった。
「分かっています。私を愛しているからではなく、単に肉体的な刺激によって勃起してしまったんですよね」
ナマコ娘は、悲しげに告げた。
その言葉は、俺を責めているようにも感じられる。
「これから、不本意ながら貴方を徹底的に犯し抜きます。せめてもの罪滅ぼしに、極上の快楽を味わって下さい」
「やめろ……! そんなの……ああッ! なに、これ……」
ナマコ娘の生殖孔内部で脈打つ俺のペニスに、何かぬるりとしたものが触れた。
生暖かくネバつきながらも、ザラザラした感触。そんな奇妙なものが、俺のペニスに絡んでくる。
気を抜いたら、すぐにでも射精してしまいそうなほど甘美な感触――
肉棒に妖しくまとわりつかれ、俺はみっともない呻き声を上げていた。
「それ、私の卵巣です」
「ら、卵巣……!?」
「ええ。私の卵子がいっぱい詰まっているんです。そこに貴方の精液をかけて、受精させて下さい」
「そんなの、ダメだ……」
受精――すなわち、このナマコ娘との子を為すという事。
そんなの、絶対に駄目だ。
「う、ぐ……!」
俺は唇を噛み、快楽に抗って射精をこらえるしかなかった。
「我慢しているのですか……?」
ナマコ娘は、快楽に屈しまいとする俺の顔を見据えながら表情を曇らせる。
「一気に追い詰めて差し上げますので、貴方のペニスを包み込んでいる卵巣にそのまま出してくださって構いません」
ぐにょぐにょ、にゅるにゅるにゅる……
「あ……! あ、あ……」
卵巣はぐにょぐにょと蠢きながら絡みついてきて、無慈悲にも射精を強要してくる。
ぬとぬとと粘つきながら、ペニスの隅々にまでまとわりつく――まるで、生きているかのように。
駄目だ! 射精してしまうと、このナマコ娘との子供が――
「やめてくれ……こんなの、だめだ……やめて……」
俺は首を左右に振り、涙すら流しながら射精をこらえる。
それでも、俺の肉体は快感に屈しつつあった。
「お願いです。出して……精液を下さい……!」
上気した表情で、そう懇願してくるナマコ娘。
……ぐちゅり。ぐにゅ、ぐにゅぐにゅ……
彼女の卵巣はペニス全体にねっとりと粘りつき、妖しく蠢きながら俺の精液を搾り出そうとする。
その余りの快感に、俺はとうとう昇り詰めてしまった。
「あああッ! もうだめだッ、出る……!」
どくっ、どくどくどく……
俺はペニスを包むぬめった感触に我慢できず、とうとうナマコ娘の中で果ててしまう。
ほとんど耐えることができず、彼女が求めるままに射精してしまったのだ。
白濁液を吐き出している間も卵巣はぐにぐにと亀頭に絡んで射出を促し――
そして射精後は、サオ全体を搾り上げて尿道に残る精液を全て吸い出してくる。
「あ、あ、あぁ……」
俺は呻きながら、最後の一滴までを搾り取られてしまった。
ナマコ娘の卵巣に、たっぷりと精液を注いでしまったのだ。
「んッ……出ましたね……」
ナマコ娘は、にっこりと笑いながら告げる。
「うッ、うぐッ、何で、こんな事……」
俺は、無様にも嗚咽しながら涙を流してしまった。
こんなおぞましい器官に下半身を咥え込まれ、強制的に与えられる快感に屈服し、そのまま射精してしまう……
そんな屈辱と余りの惨めさに、涙が止まらない。
「……ごめんなさい」
にっこりと笑っていたナマコ娘は、たちまち表情を曇らせていた。
「分かっています。己の意思とは無関係に射精してしまったことへの屈辱ですよね」
「分かってるなら……もう、止めてくれよ……」
俺は顔を涙で汚しながら、みっともなく哀願する。
ナマコ娘は神妙な表情ながら、首を左右に振った。
「いいえ。まだまだ精液を搾り取らなくてはなりません。全ての卵子が受精するまで……」
「いやだ……やめろ……」
口ではそう言いながらも、先ほどの快感を再度味わいたいと思っている自分もいた。
それこそが屈辱であり、それこそが情けないのだ。
そしてその思いに応えるように、ペニスには再び卵巣が粘りついてきた。
ざらざらとした卵子の一つ一つが、亀頭やカリ、サオから根元に至るまでを丹念に嫐る。
ぐにゅ、ぬるぬる…… うにゅ、ぐにゅぐにゅ……
「ごめんなさい、ごめんなさい……でも、貴方の精液が欲しいんです……」
じゅぽっ、じゅぽっ、じゅぽじゅぽっ……
卵巣による刺激に加えて生殖孔全体が蠢き、俺の下半身をリズミカルに締め付けては緩めてきた。
まるで、下半身全部をしゃぶり尽くすように――
その淫らな動きに、俺はたちまち絶頂へと追い詰められてしまう。
「うわっ、もう……うわああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
どく、どぷ、どぷどぷっ……
快楽の声を上げながら、俺は再び卵巣の中に射精してしまった。
「まだです、もっと…… もっと下さい!」
ぐにゅ、ぬるぬるぬるぬるぬる……
射精してもなお、卵巣はペニスにぬめりながら絡みついてくる。
まるで、本能のままに精液を渇望するように――
「あ、あ、ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その甘い感触に、俺はあられもなく絶叫した。
二度目の射精が終わらないうちに、またもや射精の衝動がこみ上げてくる。
なすすべもなく、ペニスから三度目の精液を迸らせてしまったのだ。
凄まじい快感にさらされ、無理やりに体験させられる強制射精。
俺は悶え狂いながら、連続する絶頂を経験していた。
「いいですか? 気持ちいいでしょう! もっとしてあげますから、いっぱい出して……!」
「うう、ああぁぁぁぁ……」
ぬにゅ、ぬにゅぬにゅぬるぬるぬる……
ねっとりと、ぬめりを帯びて――
ぎゅぷぎゅぷと、しゃぶり尽くすように――
そして俺のペニスをいじめ尽くすかのように卵巣が這い回り、そのぬめりに精を放ち続ける。
どぷ、どぷどぷ……
うにゅる、にゅるぬるぬる……
どれだけ射精しても、ナマコ娘の搾精は終わらない。
彼女の卵巣は出せども出せどもぺニスに絡んできて、射精を強要し続けるのだ。
「気持ちいいですよね! 気持ちいいって言って下さい……!」
「ああ、いいよ……気持ちいいよ……!」
訳も分からず叫びながら、俺は強制的に絶頂を与えられ続ける。
「嬉しい! もっと気持ちよくなって下さい。もっと、もっと、もっと、もっと……」
ぐにゅ、にゅる、にゅるにゅるにゅるにゅるぬるぬるぬるぬるぬるぬる……
「うああ…… あ、ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ――ッ!!」
ペニスは粘りつく卵巣に嫐られ抜き、下半身全体が淫らに蠢く生殖孔に翻弄される。
凄まじい搾精をこの身に受け、俺は何度も何度も精液を搾り上げられ――
そして俺の意識は、闇へと落ちてしまった。
何時間が経っただろうか。
俺の体は、浜辺に寝かされていた。
どうも、記憶がはっきりしない。
いったい、俺の身に何が起きたんだ――?
そんな俺の顔を、心配そうに覗き込む女性の存在に気付く。
「ここは……?」
よろめきながら体を起こそうとした途端、俺は強い眩暈を感じた。
「……ッ!?」
「大丈夫ですか? 貴方は、突然に倒れられて……!」
ワンピースに麦藁帽の美しい女性は、心配そうに告げる。
「貧血……かな? はは……」
軽く笑いつつも、起き上がる事はできないようだ。
一体なぜ、体がこんなに衰弱してるんだ……?
「とにかく、救急車を呼びますね」
そう言いながら、女性は携帯電話を取り出した。
彼女の声さえ、遠くから聞こえる。
病院が近いからか、すぐにサイレン音が聞こえ始めた。
「では、私はこれで――」
女性はゆっくりと俺のそばから離れていき……そして、ふと振り返った。
「また、会ってくれますよね?」
「え? ええ、喜んで……」
俺は、思わずそう答える。
「ふふ、嬉しい」
そう言い残して、彼女はこの場から消えていった。
担架を持った2人の救急隊員が、救急車から飛び出してきた。
俺の体は、そのまま担架に乗せられる。
救急車に運び込まれながら、俺はぼんやりと砂浜を見た。
彼女とは、また必ず会えるだろう。
きっと、この砂浜で――
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