俺は罪人として、村の大通りにて十字架に四肢を括り付けられていた。

　全裸のまま人間の尊厳を踏みにじられた形で、衆目の前に晒されているのである。

　「畜生、なんでこんな事に……」

　そんな俺にできる事といったら、ただ己の不運を嘆くのみだった。

　俺は、去年に大学を卒業したばかりの民俗学研究家である。

　そして、極めて興味深い生活スタイルが存在するこの村を訪れたのは三日前のことだった。

　この村落の何が特異なのかというと、村には女児か若い女性しかいないこと。

　結婚した者は、この村から出なければならないという奇妙な掟が存在するのである。

　そしてその夫婦に女児が生まれた場合のみ、この村の保育施設に預けるという実に奇妙な風習。

　男性を「穢れ」として避けているのかといえば、それも違う。

　この村は男性の旅人を快く受け入れるし、その旅人が村の女性と結ばれることをむしろ奨励している。

　何やら神代における巫女と売春の関係性を彷彿とさせるシステムに、俺は深い興味を抱いたのだった。

　そしてもう一つ。この村では、独特の罰を課される罪状が存在する――それが、強姦だった。

　女性を強制的に蹂躙した者が捕らえられると、十字架の刑に課されるのである。

　罪人は全裸で十字架に括り付けられ、村の大通りに何日も晒される。

　そして村人である女性達は、その罪人に何をしても構わないのだという。

　強姦という罪を犯した者に対し、この村の娘達はその何倍もの恥辱を与え返す。

　結果的に罪人は陵辱され、男性としての尊厳は完全に奪い去られるのだ――

　「なんで、俺がこんな目に……」

　俺が括り付けられている十字架の横には、罪人を嫐るための様々な道具が並んでいた。

　オナホールと呼ばれる自慰用の器具から、掃除機などの品々、他にも使い道の見当も付かないおぞましい道具。

　これらの全てが、俺に恥辱を与えるために用意された品々なのである。

　誓って言うが、俺がこの村に来たのはいかがわしい欲からではない。

　純粋に学術上の興味で村落を訪れ、そして宿を取ったのである。

　そのまま就寝しようとした一昨日の夜――俺の寝床に、一人の美女が忍び込んできたのだ。

　彼女は俺を誘惑し、そして俺は彼女を抱こうとした。

　俺は妻どころか恋人もいない身、問題があるはずがない。

　しかし美女は唐突に自分の服を引き裂き、周囲に響き渡る悲鳴を上げたのである。

　たちまち巻き起こる騒ぎ、そして駆け付けてくる女性警官。

　俺は取り押さえられ、留置所に送られ、裁判を受け――その結果が、十字架の刑。

　結局、俺は身の潔白を晴らすことができなかったのである。

　「畜生……」

　余りの悔しさに、涙すら出てくる。

　ちゅんちゅんと鳥がさえずる青空、のどかな田舎の風景。

　どうやら女学生の帰宅する時間帯になったようだ――そう、それもこの村の特異な点である。

　通常、このような奇異な風習を残す村は、外界との接触を遮断しているものだ。

　いや、外の世界との接触を断っているからこそ、このような風習が残り続けるとも言える。

　しかしこの村は、むしろ外界との交流が非常に活発。

　この村の少女達は普通に村外の学校へと通い、若い女性はOLとして働きに出ているのである。

　非常に奇妙な村――とにかく、女学生が帰宅する時間帯になったようだ。

　そして談笑しながら大通りを歩く、二人の女子高生――

　清楚なセーラー服に身を包んだ彼女達は、十字架に磔の俺に目を留めていた。

　To be continued...