小さな勇者の受難


 

 「起きなさい、ミル。朝ですよ――」

 

 少年は、母親の呼ぶ声で目を覚ましていた。

 16歳の誕生日には、まだ6年も早い。

 にもかかわらずミルは朝食を済ませ、町の外へと駆け出していた。

 今日も、彼のささやかな冒険が始まるのだ。

 

 「わーい! モンスター、でてこーい!」

 木の棒を剣に、鍋の蓋を盾に見立た小さな勇者。

 ミルは木の棒を振り回し、野山を駆け回る。

 少年は勇者に憧れていた――というよりも、自身を小さな勇者だと思っていた。

 この木の棒はあらゆる魔を切り裂き、この鍋の蓋はどんなドラゴンの炎も防いでしまうのだ。

 修羅のように戦う己の姿を夢想しながら、ミルは木の棒をぶんぶんと振りかざしていたのだった。

 

 「あ、モンスターはっけーん!」

 ミルが森の脇で発見したのは、まだ小さなスライムの子供。

 知性は低く、人間に害を及ぼすことすら出来ない――そんな弱々しい存在である。

 まだ幼い少年にとっては、まさに格好の敵と言えるだろう。

 「たいじしてやるー!」

 ミルは子スライムに躍り掛かり、勇敢に木の棒を振るっていた。

 ぱしぱしと棒で叩かれ、子スライムはピキーと悲鳴を上げながら森へと逃げ去っていく。

 しかし勝利に酔う暇もなく、小さな勇者の前には新たなモンスターが現れていた。

 「このー! でたな、大ナメクジー!」

 さらにミルは、その場に通りかかった大ナメクジの子供に棒を振りかざす。

 「ぎ、ぎゅー?」

 大ナメクジの子供は棒で叩かれ、突かれ、のそのそと逃げようとする。

 そんな力なき軟体生物に追いすがり、ミルは棒でぽこぽこと追撃を仕掛けていた。

 凶悪なドラゴンと対峙し、その鋼鉄のようなウロコに剣を突き立てる自分の姿を夢想しながら――

 

 「こら、人間! 何してるの!」

 「あら、子供……? それも、自分よりも弱いモンスターをいじめて……悪いコですね」

 不意に、森の中から女性の声が響く。

 「え……?」

 思わず森の方に視線をやったミルの目に飛び込んできたのは、二体のモンスター。

 おそらく、スライムと大ナメクジ――しかしこの二体は、少年の知っている外見とは異なっていた。

 「なんてことするの、も〜……取っ捕まえて、みんなでお仕置きね」

 そう呟くスライム――そいつは、なんと人間女性の形状をしていた。

 その肉体を形作っているのは、間違いなくスライムと同様の粘体。

 それでいて、そのスライムは16歳ほどの可愛い少女の姿を形成していたのだ。

 「ええ、たっぷり懲らしめてあげましょう。ふふ、可愛いコ……」

 一方の大ナメクジはというと、18歳ほどの女性の外見。

 その下半身はぬらりと地面を這うナメクジそのものだが、そこから女性の上半身が突き出しているのだ。

 彼女の全身は粘液でぬるぬるとぬめり、艶めかしいツヤを放っている。

 

 二体ともまだまだあどけない顔付きだが、ミルにとっては遙かに年上のお姉さん。

 「わ、わわわ……!」

 彼は棒や鍋蓋を放り出し、背中を向けて逃げようとした。

 「おっと、逃がさないよ――」

 ミルの足に、じゅるりとしたモノが絡み付く。

 「わっ……! うわッ!」

 そのジェルのようなものに足を取られ、ミルはその場で転んでしまった。

 スライム少女の体から、ミルの足下にまで粘体が伸びていたのだ。

 少年が転び、もがいたせいで彼の全身に粘体が付着してしまった。

 「や、やめてぇ……助けてぇ……、おねえちゃぁん……」

 先ほどまでの勇ましさはどこへやら、ミルの瞳はじんわりと潤み始める。

 食べられたくないという恐怖だけが、彼の心を支配していたのだ。

 「あ〜あ、泣いちゃった」

 「ダメですよ、坊や。お姉さん達がお仕置きです……」

 そしてそんなミルの表情は、逆に二人の少女の嗜虐心をそそっていた。

 モンスター達の住処に連れ帰る前に、ここで味見をしてしまおう――そう、二人は考えたのだ。

 

 「ラミ、私が先でいいですか……?」

 「ずるいよぉ、メージュ……まあ、いっか」

 ミルの全身にまとわり付いているスライムはにゅるにゅると蠢き、彼のズボンを溶かしてしまった。

 「や、やぁぁぁぁ……!」

 恐怖の余り、ミルは涙交じりの悲鳴を上げる。

 たちまち消滅する半ズボンとブリーフ――そして、萎縮しきった幼いペニスが姿を見せた。

 「食べないでぇ……食べないでぇ……」

 ひっくひっくと泣きじゃくるミルの前に、メージュと呼ばれたナメクジ少女が立つ。

 「ダメです。坊やは、お姉さん達に食べられちゃうんですよ……ここでね」

 へその下に開いた、じゅるじゅるの軟体が蠢く穴――そこを、メージュは示す。

 「坊やの可愛いおちんちん、このヌルヌルの柔らかいお口でもぐもぐされるんです……」

 「やだぁ、やだぁ……」

 涙を流しながら逃げようともがくミル。

 しかし彼の四肢にはスライムがまとわり付き、起き上がることすらできない。

 それどころか、いつの間にかスライム少女ラミの本体がミルの背後に回り込み、彼の体を押さえ込んでいる。

 にゅるにゅるの粘液状でありながらその力は強く、ミルの細腕では逃げることなど不可能だった。

 「このお口でたっぷり味わって、おいしく食べてあげますね……」

 怯えるミルに、ゆっくりとメージュは迫っていった――

 

 

 To be continued...